ミドリのハナシ
確か2~3年前くらいのこと。
もうすっかり冬で、ひんやりしていた時期だった思う。
理由はとんと忘れてしまったが、不意に部屋に緑を取り入れたくなった。
元々植物はとても好きなのだが、何でかきちんと置いていなかった…というのは嘘で、ベランダには4本のオリーブの(苗)木たちが居たのだけれど。
まぁただ、彼らとはまるで熟年夫婦みたいな、腐れ縁みたいな長い付き合いで、「メシ」「はいはい」みたいな手練れな感じで…書いてたらキリがないので、彼らとの話はまた今度にしよう。
そんなある日。
確か少し部屋を掃除した時だったと思う。
不意に「緑が足りない」、そう思った。
そこからは早かった。
時間があれば植物についてずーっと調べていた。そしてずーっとワクワクしていた。世の中に溢れる植物の多いこと、多いこと。その不思議な生態や形に魅力され「なんでこんなにステキなものたちに気付かなかったんだろう」とちょっと歯痒く思ったり。
でもなかなか手に入れることはしなかった。
もうその頃にはすっかり頭でっかちになっちゃって、「この植物は少し育てにくいかもしれないし」「季節的になぁ」とかはもちろん、目当ての植物を見つけても「いやぁーこの値段?どうなの?」と価格ドッ◯コムさながらの中途半端な相場感覚まで身につけちゃって、ニワカ植物批評家になってしまったというね。一番タチの悪いやつね。
そんな折、ある植物に出会った。
びびーん!
ときた。
いやいや、でもでも。
どう考えても、相場より相当高かった。
「多分これは陶器の鉢とセットの受け皿が高いに違いない。これだけで数千円だぞ」というお得意の(どんぶり)皮算用も発揮されたのだけれども。
数日悩んだ。
気が付いたら店の前で眺めては「やっぱりどうだかなぁ」と首を捻ること幾数日。
はい、買いましたとさ。めでたしめでたし。
…とはならないのだけれど、当時の自分はまだ知らないのでした。それは序章に過ぎないということを…。
結論から申し上げますと、我が家には現在、およそ80(より先は怖くなって数えるのをやめた)種の植物さんたちが生息することになり、今日も元気に共存しております。
それで良かったのかと思うとわからないのだけれど、あの日のびびーん!を感じてしまったが最後だったようにも思ったり。
実際、なかなか不自由で、
「水くれー」
「栄養足りないみたいですー」
「なんか枯れちゃいました」
「あの、虫が湧いちゃったんですけど、どうしましょ」
と中々に要求が多い。
動物ならまだしも、植物である彼らがこんなにおしゃべりだとは思いもしなかった。
だけれども気付きも多い。
「あれ?ちょっと大きくなった?」
「なんか色良くなったよね」
「ちょっと調子悪かったりする?」
「え、子ども吹いたの?」などなど。
決して華々しい変化ではないんだけれど、その微妙な変化が最高に愛おしかったり、時に悩ましかったり。
そして何より、そんな小さな変化を楽しめる自分に出会えたことが一番の収穫なように思ってみたりもする。結構ずぼらだと思っていた自分がなんだかんだでキチンと続けていることも、変化の発見なのかもしれない。
そんなミドリのハナシ。