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読書の記録(55)『本を守ろうとする猫の話』夏川草介

手にしたきっかけ

図書館によく来る6年生がいる。その子は、学校の図書館にない本を市の図書館から取り寄せてほしいとリクエストをする。そのリクエストの中の1冊がこの『本を守ろうとする猫の話』だった。数日して、本が届いたので「本、来たよ~」と声を掛けると「こないだ、本屋さんにつれていってもらったもらったとき、文庫本で買ってん。でも、本当はこの大きい方が好きやねん」とのことだった。「わかる~。単行本だとカバーを取ったときの装丁とかも、いいのよね~」と盛り上がった。

この本は借りてはみたものの宙ぶらりんな状態になってしまった。このまま返すのもなんだし、せっかくの機会なので『神様のカルテ』以来、夏川草介さんを読んでみようと思った。

心に残ったところ

最近はノンフィクションや仕事で紹介するための本を読むことが多かったので、こんな感じのファンタジーっぽいものは久しぶりで新鮮だった。

本が好きな人には刺さる本だと思った。
あまり本を読まない人にはどう感じるんだろう?

私の勤めている小学校では朝の読書をやっている。10分間、それぞれが本を読むというやつだ。それなのに、アンケートでは、「全く本を読まない」と答える子が一定数いる。出席確認とか、連絡帳とか、宿題確認とか、朝の時間にやっておきたいことがあるのは、よくわかる。だけど1日の中で10分だけ、朝読書の時間だけは読書に使ってほしいなあと思っている。大人が本気で10分を確保してみんなで取り組んだら、子どもも変わるんじゃないかなあと思う。なんとなくやって「朝読やってます」と言うのはものすごくもったいないと思う。

第四章で林太郎は「僕らが本の力を信じているのに、あなたが信じなくてどうするんですか?」と言う。この場面でのこのセリフにしびれた。シチュエーションは違うけれど、普段私が思っていることをずばり言語化してくれていたからだ。

読書が大事と言いながら、大人も読んでる?
自分が毎日やらないことを、子どもに求めてない?

ついつい目先のことにとらわれてしまうけれど、土を耕したり、種を蒔いたりしておけば、いつか思わぬ形で花が咲いたり、実をつけたりするかもしれない。大人になったときに、子どもの頃に読んだ本に救われるかもしれない。そんな1冊に出会えるチャンスをたくさん作りたいと思う。

出版業界の課題というか、消費者側の課題も考えさせられた。エロ、グロ、バイオレンス…、刺激が強いモノはそれだけ売れるだろうけれど、「もう一度じっくり読み返したいか」と言われると微妙。だけど、売れるモノも作らないと出版社も立ちゆかなくなるし…。本を好きになるきっかけは、売れ筋の本かもしれないし…。などとつらつら考えると、今の仕事は尊い仕事!と思えた。未来への種蒔きと思って、読み聞かせや本の紹介を頑張ろうと思った。

まとめ

本との出会いはどこにあるかわからない。今回、この本を手にしたきっかけも3まわりも年下の子の読みたいというリクエストだった。年齢問わず、立場も問わず、本好きという一点でつながれる。前にも書いたかもしれないけれど、本って、コミュニケーションにおいても最高のツールだと思う。

週明けに図書館にあの子が来たときに、「読んだよ!」「私はこの部分が好きなんだけど、○○さんは?」と話をしたいと思う。


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