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芥川賞第170回受賞作品を読んでみた👀

初めて読んだ芥川賞作品は第161回受賞作品の『むらさきのスカートの女』。当時は文学作品にあまり興味が無かったものの、最後の一行を読んで、ウワっとなったのを覚えている。今思えばあれは芥川賞作品として完璧だったと個人的に思う。

あらすじ

芥川賞は年に2回、上半期/下半期に発表される。前回のはまだ読んでいないが、第170回受賞作品のタイトルに惹かれ、受賞後即購入。
『東京都同情塔』は何度でも声に出したくなるリズミカルなタイトルとポップ感溢れる装丁に一気に惹かれた。
あらすじとしては、新たな刑務所として建設予定の「シンパシータワートーキョー」。シンパシータワートーキョーは刑務所でありながら、非常に快適な空間となっている。その建築設計をする主人公の葛藤を描く。
主人公はシンパシータワートーキョーという横文字表現なのかどうにも気に入らず、「東京同情塔」と個人的に呼ぶ(後にある人の思い付きで「東京"都"同情塔」となる)。
東京都同情塔の背景には、犯罪者のバックグラウンドに焦点を当て、その人たちは憐れまれる/同情されるべき人間なのだ という幸福論者の元計画されていたものである。

受賞後の帯になってるやつ買えば良かった

読んだ印象

最初に読んだ時の印象としては、過剰な平等思考が生んだ価値観を皮肉に描いているのか?/現代の行きすぎた多様性について伝えたいのかな?と思ったが、どうやらそのキャッチーな部分よりも純粋な「言葉」に焦点が当てられていると思った。
新潮社HPの紹介文には「現代版バベルの塔」とある。
私はバベルの塔を知らなかったので検索した。

《Babelは聖書の地名シナルの古都》旧約聖書の創世記にある伝説上の塔。 ノアの大洪水ののち、人類がバビロンに天に達するほどの高塔を建てようとしたのを神が怒り、それまで一つであった人間の言葉を混乱させて互いに通じないようにした。 そのため人々は工事を中止し、各地に散ったという。

コトバンク

「言葉」について作者は意識しているのではないかと思ったのも、現代版バベルの塔と言われてみると、たしかにしっくりくる。もっと言葉を大切にしましょうね、といったありがちな答えでもない気がするが、じゃあ何を……と考えるとなかなか答えが出ない。
実際にAIに生成させた部分をそのまま使ったりアレンジを加えたりしながら掲載している本書は、人から発する言葉とAIの生成した言葉の違いについて意識させる。
私たちは今、AIが生成した言葉並みに、自分の発言に責任を取らずに発しているのではないか?と思わされた。

どんな本ですか?と問われたら回答に困るような本だけど、読んで数日経っても、この本はどういうことだったのだろう……と無意識に考えさせられてしまう、そんな本だった。

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