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【特別データ公開】国内スマホゲーム月別ダウンロードランキングTOP50を大解剖〜ダウンロード数が多いタイトルの共通点とは?

「アクティブユーザ数を増やしたい!」これはスマホゲームのプロデューサーやマーケターの全員の願いであり、課題ではないでしょうか。以前よりも新規ユーザ獲得が簡単ではなくなっている(背景は以前書いたスマホゲーム市場に関するnoteも参考)こともあり、ユーザのリテンションやファン施策に注力するスマホゲームが増えていますが、これらの施策も新規ユーザ獲得がなければ始まりません。ゆえに、新規ユーザ獲得はマーケターの最大の課題であることが多いと思います。

この最大の課題に対して、新規ユーザ獲得に成功したゲームが過去どんなゲームだったのか?を知ることは課題解決のヒントになりそうです。毎年始頃に各社が昨年のトレンドレポートを無償公開してくれるのですが、月別のランキング情報のレポートはありませんでした。

そこで、今回は特別にApp Annieにもご協力いただき、2019年の国内スマホゲーム月別ダウンロードランキングのデータから得られた示唆と考察をまとめました。現在はすでに2020年4月ですがまだまだフレッシュな情報だと思います。少しでもマーケターのみなさんの役に立てば幸いです。

なお、App Annieが提供していている2019年の国内スマホゲーム月別ダウンロードTOP10のデータをnoteで共有する許可を特別にいただきました。この記事の前提となるデータになりますので、ぜひご覧ください(さらに詳しいデータはApp Annieをご利用ください)。

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2019年月別DLランキングのゲームカテゴリのトレンド

まず、月間ダウンロードランキングTOP50のゲームカテゴリを独自に集計してみました。ランキングしたゲームカテゴリの割合は以下になります。

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各種レポートでも言及されていますが、広告収益モデルの「ハイパーカジュアル」が全体の30%超で、最も多くダウンロードTOP50にランクインしたゲームジャンルになっています。TOP50の3本に1本がハイパーカジュアルの計算になり、大ブレイクしたゲームカテゴリです。

一方、『アーチャー伝説』や『ペンギンの島』などが代表タイトルである、広告+課金モデルのハイブリッド収益モデルの「カジュアルゲーム」が19%、また『ホームスケイプ』を代表とするIP/版権を使わない「パズルゲーム」も7.7%と存在感が大きく、ハイパーカジュアルを加えた3カテゴリを「カジュアルゲーム群」として定義して合算すると、実にダウンロードTOP50の内の30本にあたる全体の60%超がカジュアルゲームでした。

つまり、今のスマホゲームは「大カジュアル時代」と言える状況です。もう少し詳細にランクインジャンルの月別推移は以下でした。

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月別TOP50のタイトルをざっと眺めて気がついた傾向

僕の視点で気がついたことは以下の5点です。

①上位ランクインタイトルの多くが「IP」か「カジュアル群」であること
②版権/オリジナルを問わず「パズルゲーム」の躍進がすごいこと
③新作ではなく認知度も高くないゲームがTOP50にランクインしていること
④新作でも複数月でTOP50にランクインできているゲームが少ないこと
⑤周年や大型プロモ時にTOP50にランクインできているゲームがあること

上位ランクインタイトルの多くが「IP」か「カジュアル群」であること
「カジュアルゲーム群」は上記で書いたとおりですが、「IP/版権タイトル」もとても強いです。特に2019年は下半期は「マリオカートツアー」「ドラゴンクエストウォーク」「ポケモンマスターズ」など、超大型IPタイトルが多数リリースされたこともあり「IP/版権タイトル」が目立ちました。

一方、上位にランクインできている「オリジナルのミッドコアゲーム」はかなりすごいと言えます(リリースタイミングも関係しますが)。

②版権/オリジナルを問わず「パズルゲーム」の躍進がすごいこと
LINE系のタイトルは2019年以前よりすごいのは変わらずですが、Playrixを代表とする海外デベロッパーのパズルゲームのダウンロード数がすごいことになっています。特に『ホームスケイプ』は通年でランキング上位をキープしており、年間ランキングでも2位でした。

③新作ではなく認知度も高くないゲームがTOP50にランクインしていること
代表的な例は『マフィア・シティ』や『キングスレイド』、戦国系タイトル、大奥系タイトルになるのですが、リリースではない月に、また知名度が高いとは言えないにも関わらず、TOP50にランクインしていました。

④新作でも複数月でTOP50にランクインできているゲームが少ないこと
新作の場合はリリースの初速でランクインしたゲームは多いですが、その後に再びTOP50にランクインしているゲームは多くありませんでした。これは集客のヤマを複数回作ることが難しいことを示しています。新作では大型IPを除くと『ブロスタ』『黒い砂漠モバイル』『ライフアフター』などが複数月でランクインできていました。

⑤周年や大型プロモ時にTOP50にランクインできているゲームがあること
新作でも複数月のランクインが難しい状況ですが、リリースしてから何年も経ているタイトルが、周年時や大型プロモーションで度々ランクインしているタイトルがあります。代表的な例は『モンスト』『にゃんこ大戦争』『荒野行動』『ドラゴンボールZドッカンバトル』などです。再インストールも影響している可能性もありますが、これらのタイトルがロングヒットになっているのは「新規ユーザを獲得し続けている」とも言えそうです。

上記の気づきに対して、それぞれ要素や要因を考えてみることは、スマホゲームの新規ユーザ獲得のヒントになりそうです。以下に一部ですが、個人的な考察を書いてみます。

IP、カジュアル、パズルゲームのDL数が多い「共通点」

①普段スマホゲームを積極的に遊んでいないユーザもターゲットになること
②実際にゲームを遊ぶ前から体験をイメージしやすいこと

「IP/版権ゲーム」、そして「カジュアルゲーム」や「パズルゲーム」のダウンロード数が多い理由はなんでしょうか? IP/版権ゲームは「元々ファンベースを持っていること」がもちろんとても大きいのですが、さらに抽象化すると、カジュアルゲームとIP/版権ゲームは2つの共通点があるように思います。

それは、「①普段スマホゲームを積極的に遊んでいないユーザもターゲットになること」、「②実際にゲームを遊ぶ前から体験をイメージしやすいこと」の2点です。

国内におけるスマホ人口はこの数年でほぼ完成したと言えるほど大きくなりました。特に近年でスマホを手に持つようになった方々は、必ずしもリテラシーが高くない「スマホ初心者」が多く含まれます。スマホ初心者にとって、最新鋭のタイトルや長期運営のタイトルは、操作も高度であり、シナリオもキャラクターのボリュームも多く、学習しなくてならないことが多いため、なかなか手を出しづらい状況にあります。

カジュアルゲームであれば操作も簡単ですし、元々好きなIPのゲームであればシナリオもキャラクターも元々知っている。ゆえに「学習コストが低い」ので、手に取りやすく、他人にも紹介もしやすい。IP/版権ゲームやカジュアルゲーム、パズルゲームはスマホゲームを普段積極的に遊んでいないユーザや「スマホ初心者」も対象にできることがターゲット母数の多さの点で大きな強みになっています。

また、ゲームに限らず動画やマンガなどスマホエンタメの選択肢がたくさんある中で、初心者層以外にとっても、実際に遊ぶまでそのゲームが面白いかどうかわからないこと=時間を無駄にしてしまうことはユーザにとって大きなリスクに感じるようになっています。自身の貴重な時間を楽しく有意義に過ごしたい。だからこそ「遊ぶゲーム選びは失敗したくない」。

つまり「実際にゲームを遊ぶ前から楽しい体験がイメージしやすいゲームを選びたい」と思うことは自然な感情です。この「ゲーム性を事前に想起できること」が、IP/版権ゲームやカジュアルゲーム、パズルゲームの強みと言えます。同時にゲーム選びにおいて、ユーザの評判やレビューが重要視される背景でもあります。

「WEB広告」で魅力が伝えられることの重要性

もはや有名な話ですが、2019年ダウンロードTOP10ランキングに入った『Crowd City』、『Roller Splat』などを代表とするハイパーカジュアルゲーム、『ホームスケイプ』や『トゥーンブラスト』を代表とするパズルゲームのダウンロードの多くは、WEB広告を集客のベースとしています。スマホ人口が増え、人々がスマホに使う余暇時間が増え、スマホの広告メディアの在庫も大きく成長し、ターゲティングの精度も高まり、クリエイティブフォーマットも進化した結果、アプリインストールへのWEB広告の影響力がスマホ史上最高に大きくなっています。WEB広告だけでアプリストアランキングの上位にランクインできるほどの多くの新規ユーザを獲得することができるようになっており、特に『ホームスケイプ』は、2019年は18回も月別ダウンロードTOP10にランクインし、年間ランキングでも2位になった驚きの成果です。

WEB広告でユーザを獲得するには、多くのユーザに"ひと目"で「これは面白そう」「自分でも楽しめそう」と惹きつけられるクリエイティブ表現が重要です。また、WEB広告での獲得から逆算して、「ユーザを惹きつけられるクリエイティブの作りやすさを意識したゲームの開発」が一層重要になってきています。その面でもPDCAサイクルが早いハイパーカジュアルは、この状況に最適化されたゲーム開発の進化と言えるでしょう。

<2019年にダウンロードが多かったカジュアルゲームの例>
・『ホームスケイプ』
・『トゥーンブラスト』
・『Crowd City』
・『ナゾトキの時間』
・『Rescue Cut』

カジュアルゲームやパズルゲームのWEB広告の活用ぶりは、他のゲームジャンルのマーケターも学ぶべきことが多くあると思います。また、上記の気づきにも書いた、『マフィア・シティ』や『キングスレイド』、戦国系タイトル、大奥系タイトルなどの必ずしも認知度が高くないオリジナルのミッドコアゲームがTOP50にランクインしている要因も同様にWEB広告を使いこなしているからと考えられます。

広告と実際のゲーム内容が著しく異なる「広告詐欺」などの問題も抱えていますが、ゲームプロモーションの本質は、いかに「ゲームの魅力」を「短時間」で「多くの人」に「伝えられるか」です。ここにはたくさんのヒントがあると感じます。

多くのダウンロード数を獲得しているオリジナルかつミッドコアゲームが持つ要素

①ユーザにとって「驚きのある新規性」がある
②ユーザにとって「
遊ぶ前からゲームをイメージできる想起性」がある

ターゲットにできるユーザ数が多いカジュアルゲーム、元々のファンベースを持つIP/版権タイトルが、ランキングTOP50の多く占める状況の中で、オリジナルかつミッドコアゲームでランクインできていたゲームもあります。この状況の中ですごいことなのですが、それはどんなゲームでしょうか?

個人的な意見ですが、それは「①ユーザにとって驚きのある新規性」と、「②ユーザにとってイメージできる想起性」の両方をユーザに訴求できていたゲームではないかと考えています。「新規性」とは、ユーザにとって「新鮮」であり「これまで遊んだことがない」と感じてもらえること。「想起性」とは、ユーザにとって遊ぶ前から「知っている」「イメージできる」と感じてもらえることです(想起性の強みは、カジュアルゲームとIP/版権タイトルでも言及しました)。また、想起性は「ブランド」で強化することもできます。

これは、一見すると相反するような要素ですが、市場の成熟化とユーザの硬直化が進むスマホゲーム、及び、今や多数の選択肢が存在するスマホエンタメ市場においては、これまで遊んだことがあるゲームと同じようなゲームをユーザは新しく遊ぼうと思いにくいですし、上記でも書いたように「どんなゲームか遊ぶ前にイメージがしにくいゲーム」も時間的リスクから敬遠される傾向にあります。ゆえに、相反する要素を両立するバランスが求められるのです。

以下に月別ダウンロードランキングTOP10にランクインしていたオリジナルかつミッドコアのタイトルにおける、「①新規性/驚き」「②想起性/ブランド」の要素を、個人的な視点で超シンプルにまとめてみました。

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これはシンプルすぎるまとめであり、実際はもっとたくさんの要素があります。また、もちろん大規模なプロモーションを行ったタイトルも多く含まれています。ただし、プロモーション予算が多いだけでたくさんのインストールが得られるほど甘くありません。これらのタイトルは、「①新規性/驚き」と「②想起性/ブランド」があり、それをユーザに伝わりやすい形で表現できたからこそ、プロモーション効果も高かったと考えられます。(前述したとおり)ゲームプロモーションの本質は、いかに「ゲームの魅力」を「短時間」で「多くの人」に「伝えられるか」だからです。

周年月や大型プロモーションでランクインしていたゲーム

最後に、IP/版権、カジュアル、ミッドコアを問わず、2019年以前のリリースで、周年月や大型プロモーションでTOP50にランクインできているの代表タイトルを紹介しておきます。ランクインできている要因は「タイトルのユーザ規模が大きい」だけではなく、「①新規性/驚き」、「②想起性/ブランド」が関連していると思います。その観点でこれらのタイトルの施策を研究するとたくさんのヒントが得られるのではないかと思います。

<周年月や大型プロモーションでTOP50に入っていたゲーム例>
・モンスト
・パズドラ
・にゃんこ大戦争
・ドラゴンボールZドッカンバトル
・バンドリ! ガールズバンドパーティ!
・メギド72
・キングスレイド
・コトダマン

以上、2019年の日本国内月別スマホゲームダウンロードランキングTOP50のデータから得られた示唆と考察でした。とても長い記事になってしまいましたが(汗)、いかがでしたでしょうか。もし少しでも参考になったなら、ぜひいいねやシェアをお願いします!

今回の記事はApp Annieにご協力をいただき、特別にデータを公開しています。改めてデータをじっくり見てみると、多くの学びと気づきがありました。マーケターとして、市場とユーザの変化を理解しながら、日々のマーケティングに反映させていくことはとても重要だと思います。

スマホゲーム業界ではApp Annieを導入している会社は多いと思いますが、App Annieにはダッシュボードやアラートなどの効率的に市場インサイトを得られる便利な機能もありますので、ぜひ使ってみてください。また、App Annieの2019年の年間レポートもご参考ください。加えて、以前書きました、国内スマホゲーム市場過去10年の市場推移の記事も合わせてご確認いただけると、市場のトレンド感がよりつかめるのではないかと思います。

また、現在スマホゲームのマーケテイングに特化した専門カンファレンス「スマホゲームマーケターズサミット」の準備も進めています(開催日程は未定)。この場でもより深いディスカッションができればと思っています。ぜひご注目ください!

最後に、Twitterでもいろいろと業界内外の情報をつぶやいていますので、ぜひフォローをよろしくお願いします。こんな時だからこそ、またがんばってnoteを書いて、少しでも業界の活性に貢献できればと思っています。

また、気がついたら、株式会社MOTTOもおかげさまで3年目になりました!引き続き、スマホゲームとアプリとYouTuberを活用したマーケティングの支援、B2Bソリューションの支援なと業界への貢献活動をしています。引き続きよろしくおねがいします。


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