夏の救急の出来事、意識不明の若者の話
ある夏の日のこと。
工事現場で、意識不明・心肺停止状態で搬送された若者がいた。
発見時、コードが身体に絡まっており、感電や熱中症?の関与も言われていた。
当時、患者家族の職場への非難、クレームがすごかった。
家族の心中はごもっともだと思った。
程なくして、治療の甲斐なく、その若者は亡くなった。
当時の主治医も連日の家族対応や患者管理で疲弊していた。若者のこういった厳しい状態を管理するのは、家族対応や、若い命が故にかかるプレッシャーも大きく、救急管理にはそれなりのストレスがかかる。
主治医もこれからもしかしたら、患者側が病院を訴えてくるかもしれないと危惧していた。
というのも、こういうケースでは遺族は職場を責めるだけではなく、外野からの横槍で病院側まで標的にしてくる…ということは少なくないからだ。
ただ、
他にも気持ちをぶつける対象がなく、こうでもしていないとメンタル保てるないんだろう
、とも思う。
ところが事態は予想外の方向に向かう。
その後の検証で、患者の舌骨が折れていたことがわかった。
それから家族からの非難、クレームはぴたりと来なくなった。
若者は自ら命を断とうとしたのだった。
遺族の気持ちを考えると、なんともやりきれないことだろう。
事実を聞いた時、いつもより蝉の鳴き声が大きく聞こえた気がした。