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pathos パトス 感情について

 ロゴス:理性について書きましたので、今度はパトスについて書いてみます。


動物にも感情・共感はあります

 動物(哺乳類)にも感情、共感がありました。

感情は人類共通

 ダーウィンの研究、他の異なる文化の下で暮らす人たちの写真を見せ、感情を正しく判断できるかをポール・エクマンが検証しました。

1960年代に心理学者ポール・エクマンは、ダーウィンの著作を知って驚いた。ダーウィンは世界各地の人たちにさまざまな表情の写真を送り、写真がどんな感情を表しているかを尋ねた。その結果、喜び、悲しみなどの表情が文化の違いを超えて人類共通であるという結論を下していたのだ。

 ポール・エクマンは、この結論に最初は疑問を抱いた。なぜなら、彼が研究を始めた1960年代には、表情を含む人間の社会行動は文化に依存するという、女性人類学者マーガレット・ミードらの見解が広く支持されていた。 そこでエクマンはミードが調査したニューギニアを訪問し、狩猟採集生活を営む人たちに他の異なる文化の下で暮らす人たちの写真を見せて、写真から感情を正しく判断できるかどうかを調べた。

 その結果、ニューギニアの人たちは、喜び、悲しみなどの表情を写真から見分けることができたのだ。エクマンは同じ実験を、ボルネオ・アメリカ合衆国・ブラジル、そして日本でも行ったが、結果は同じだった。1969年にサイエンス誌に発表されたエクマンの論文は、表情が人類共通であることを世界の科学者に知らしめた

ダーウィンも真剣に考えた「感情」の正体幸せな人生を送るために
~人類学、心理学、脳科学の視点から
2016.2.12(金)矢原 徹一
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46011

感情は進化の結果

 生存競争により動物、人間は感情を獲得しました。

自然界は危険に満ちてますから、とっさの素早い判断が生死を分けます。猛獣が迫ってきたときに…理性的に考えていたら間に合いません。考える前に身体が反応して全速力で駆け出している必要があります。そのために、反射的な生理作用である恐怖心などの感情が生れた

https://gendai.media/articles/-/52426?page=2

「脳の中で、感情の形成に関わる部位のうち、一番重要なのは"扁桃体(へんとうたい)"です」

「ふと目の前に、ヘビのようなものが見えたとする。「ヘビだ」と意識が気づくより早く、映像が目に飛び込んでわずか40ミリ秒後には、扁桃体が興奮している。「これはやばいぞ!」と評価したのだ。その結果、体はとっさに逃避体勢をとる。同時に、心の中に嫌悪感という感情がこみ上げる」

https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXNASFK0203P_S3A201C1000000/

予想により情動が発生か?

関連

最近の感情の研究

 最近の感情研究の結果、情動などかなりくわしくわかっているようです。

それぞれの「基本的」な情動は、実は単一の情動ではなく、ある範囲、すなわちカテゴリーに含まれるさまざまな感情を十把一絡げに表現したものであり、そのカテゴリーどうしも必ずしも明瞭に区別できるものではない。

たとえば恐怖もそれぞれ微妙に違うし、場合によっては不安と区別するのが難しい。もっと言うと、長いあいだ「恐怖」の中枢と考えられてきた扁桃核は、実際にはいくつもの情動で鍵となる役割を担っているし、逆にすべてのタイプの恐怖に欠かせないわけでもない。

そこで今日では、5種類か6種類の「基本的」な情動から大きく視野を広げて、当惑や自尊心などのいわゆる社会的情動、さらには空腹感や性的欲求など、かつては衝動と考えられていた感情を含む、数十種類もの情動について論じられるようになっている。

日本人が知らない「感情」が果たす超重要な役割世界中の研究機関が注目する「感情神経科学」https://toyokeizai.net/articles/-/673748?page=4

「情動➝脳マップ➝感情」

実験で物理的に確認された
「情動➝脳マップ➝感情」の流れ


 ダマシオの叙述は多岐にわたります。「情動は身体という劇場で演じられ」、と書き、「情動状態のあとに感情が表れる証拠」をあげていきます。まず、以下の仮説を述べます。

 感情が生じると、身体各部からの信号を受けて現在の有機体の状態をマップ化している脳領域が、いちじるしく活性化することになっていた。そのような脳領域は中枢神経系(脳)のいくつかのレベルに置かれており、帯状皮質、二つの体性感覚皮質、視床下部、そして脳幹蓋(脳幹の背側部)にあるいくつかの核、などがそれにあたる。(135ページ)

 この仮説をPETなどで被験者を使い、検証していきます。そして期待どおりに活発・不活発の脳のパターンを得ることができました。

 情動を感じることは身体状態のニューラル・マッピングの変化と関係しているという発見はじつに満足に値するものだった。(略)感情の生理の謎のいくつかが、脳の身体感知領域の神経回路の中で、そしてそれらの回路の生理的・化学的作用の中で解決しうることを、われわれにはっきり教えてくれた。(141ページ)

 さらに、もう一つ重要な発見があったのです。

 問題の経験がはじまったことを示そうと被験者が手を動かして合図する<前に>、電気的なモニター装置が、情動の激しい作用を明白に記録していたのだ。(略)「まず情動状態ありき、感情はそのあとに」ということに対するさらなる証拠を手にした。(141ページ)

 情動→脳マップ→感情の順番が物理的に確認されたわけです。

最新の脳科学と偉大な先人の哲学が融合する
サイエンス・ノンフィクションの大作
『感じる脳――情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』
坪井賢一https://diamond.jp/articles/-/39137?page=3

人間の感情は文化も寄与

 感情の成長には文化が寄与しているようです。

Lisa Feldman Barrett氏によれば、喜怒哀楽といった私たちの感情は、人間が生来備えるものではなく、成長と共に発達する文化的なものです。また、感情は、顔の表情などの身体的特徴と必ずしも一致するものではありません

感情は生来のものではない
Written by 遠藤https://www.ipii.co.jp/archives/blog/%E6%84%9F%E6%83%85%E3%81%AF%E7%94%9F%E6%9D%A5%E3%81%AE%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84/

言葉により感情のとらえ方ことなる場合がありました

 2500の言語で24の感情を調査したところ怒り、恐れ、喜びは、言語でとらえ方が異なりました。

 世界で共通していたのは、「快」「不快」な経験、その感情に伴う興奮レベルの高さにより区別されることでした。

 ちなみに日本においては明治時代に"love"を訳すにあたって大変苦労し、最終的に仏教語の「愛」あてました。


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