英語学習をもっと楽しく!洋楽で口語スキルを磨きませんか?(58)
昨日がフリートウッド・マックさんだったので、そのつながりで今日はボーカルのスティーヴィー・二クスさんです。彼女と言えば、あの名曲中の名曲、そう、
Talk To Me
この曲が出た時代はまさにMTVの全盛期。このPVをテレビで見た方も多いのでは。邦題は「トーク・トゥ・ミー」で、Billboard誌で1986年に最高全米4位、カナダ6位を記録した曲です。
ちなみにHeartさんの「These Dreams」という曲は、元々はスティーヴィーさんのアルバム用に書かれた曲だったんだそうです。だけど彼女がお断りしたとか。ヒット曲の裏側にはいろいろな逸話があり興味深いです。
では、早速、聞いてみましょうか。やるせない肩の力の抜けただみ声が魅力的です。
この歌詞の二つの文を取り上げます。
● I can see we're thinkin' bout the same things
(同じこと考えてるってわかるわ)
think aboutもthink ofもどちらも「~について思う」です。確かに実際は区別なく使われていますが、やはり異なる前置詞を使っているということは、使用上微妙な違いがあります。
think about the same thingsは、aboutが「ぐるりと周辺を」という意味を持っているので、周辺的なこと、つまり「あれこれ時間をかけて思いを巡らせる」といった感じになります。一方、ofの場合は「長く考えるというよりは、瞬間的に浮かぶアイディアや印象について考える」というニュアンスです。
またI heard about him. vs I heard of him.も両方とも「彼について聞いた」という意味ですが、前置詞の違いにより微妙なニュアンス差があります。
前者は彼に関する情報や話題を聞いたというニュアンスが強く、彼の最近の出来事や行動、詳細な話を耳にしたという感じです。
例: I heard about him getting fired.(彼が解雇されたことを聞いた)
一方、後者は、その人物についての詳細は知らないが、その人の存在を知っている(= I know of him.)という意味になります。通常、広く知られている人物や事象について使われます。
例: I heard of him, but I've never met him in person. (彼の名前は聞いたことがあるが、本人に会ったことはない)
● You can talk to me (私に話していいわよ)
助動詞canの「~できる」という意味には、人やものに備わっている「能力」と、状況から可能である「状況的可能性」の2つがあると言われています。学校では主に前者が強調されることが多く、そう覚えている人も多いでしょう。この歌詞のcanは後者から派生した「許可」=「~してもいい」を表しています。You can use my PC.(私のパソコン使っていいよ)っていう場合と一緒です。では、ここで問題。
ここ数日咳がひどいので、医者に行って肺のレントゲンを撮ってもらた後、次のように言われたらどちらがよりショックでしょうか?ちょっと考えてみてください。
It can be lung cancer. vs It may be lung cancer.
どちらも「肺がんの疑いあり」ということです。
で、正解は、後者です。なぜでしょう?It can be lung cancer. はcanの持つ「潜在能力」から、未来にそういう具合に発展する可能性があり得る、といったニュアンスで、あくまで可能性について述べているのに対し、mayは、「~かもしれない」と現在あるいは未来の推量を表し、一般に話し手(この場合は医者)は確率として半々、つまり「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」と50%くらいはあると思っている場合に使うからです。
助動詞一つでこれだけの差があります。たかが助動詞、されど助動詞です。
今日はスティーヴィー・二クスさんの歌詞から前置詞、助動詞へとちょっと広げてみました。