一言の魔法:英語の一言が持つ影響力
英語の表現には1語違っただけで、意味が全く異なるというものがけっこうあります。今日は、そんな英語の語法のお話です。
たとえば、次の口語表現はどうでしょう。
違いがぱっとわかりますか?
I couldn't agree more. vs I couldn't agree less.
仮定法を使った言い回しです。
前者はI agree completely.「全くその通り」と全面的な賛成をあらわします。「これ以上同意することができないくらい(同意してます)」なので。
一方、後者はまったく逆になります。I totally disagree.「全く賛成できない」の意。「これより少なく同意することができないくらい」なので。
発想的になかなかついていけませんが、こういう表現がとっさに口をついて出てくるようになれば、英語らしい頭になってきた証拠と言えます。
では、次の問題です。
It could have been worse. vs It could have been better.
前者は「これ以上より悪くなることはなかっただろう」→「不幸中の幸い」ということです。ひどいことにならず、この辺で終わってよかったよかった、ということ。
一方、後者は「もっとうまくやることができただろうに」→「今一だった」ということ。期待したものよりよくなかった時の一言。
それでは次は?
Did he call you names? vs Did he call your names?
youとyourの違いです。
これ、前者が「彼君の悪口言ったの?」で後者が「彼君たちの名前呼んだの(出席をとったの)?」。call a person namesは熟語で「人をののしる、悪口を言う」の意。
代名詞の格の違いでこんなに変わります。
最後にこれはどうでしょう。
There's nothing for it. vs There's nothing to it.
前者は「~するほか仕方がない」でThere is no alternative.のこと。There is nothing for it but to do.の構文で使用されることもある。このforは、代理・交換を表し、「それの代わりをするものは何もない」ということ。
後者は「簡単だ、朝飯前だ」の意。It is easy.のこと。このtoは、toが持つ「到達」から「付加する・付け加える」に発展したもので、「それに付け加えるものは何もない」だから「簡単だよ」に。文脈によっては「中身がない、根拠がない」の意味にもなります。
前置詞forとtoの1語で意味がこんなに変わるんです。たかが1語、されど1語です。侮れません。
今年の夏は異常なほど暑かったです。と言っても9月にはいっても35℃前後が当たり前。そろそろ身体がけだるく、頭がぼっとしてくる「夏バテ」の症状が出てくる皆さんも多いでしょう。
「夏バテ」は英語で?
病気ではないのでこれを英語で表すには、the summer heat(夏の暑さ)を使った言い回しを使います。
The summer heat is getting to me.(夏の暑さが堪えてきている)
「到達」を表す前置詞toの持ち味がうまく生かされてる表現です。「夏の暑さが私に到達してきている」ですから。あるいは、「夏の暑さの影響を感じている」としてI’m feeling the effects of the summer heat.なんて説明調もありです。
この後に、具体的な症状を付け足せばOKでしょう。
私の場合は、「目が腫れて、体がけだるい」ので、
My eyes are sore and I feel powerless.です。
はい~。
※やっかいなのがI couldn't care less.これも日常会話でよく使われます。
意味は「今気にしている程度よりもより少なく気にすることはない」→「まったく気にしてない」「眼中にない」ということ.
となると、その反対のI could care less.は、「今よりも気にしないこともあり得る」→「少しは気にする」ですが、実際は、これもI couldn't care less.「まったく気にしてない」の意味で使う人が意外と多いんです。ネイティブたちの間でもよく議論にはなってるようですが。言葉は非論理的な面もあるので、一筋縄ではいかないですね。