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英語学習をもっと楽しく!洋楽で口語スキルを磨きませんか?(67)
今日は今週の「ベストヒットUSA」で取り上げられていた、日本で根強いファンが多いMr. Bigさんです。彼らのヒット曲と言えば、ビルボード1位にも輝いた実話を基に作られたラブソング、
To Be With You
サビの部分は歌いやすいので、一緒に声に出して歌ってみたくなります。
Build up your confidence
So you can be on top for once
wake up who cares about
Little boys that talk too much
I seen it all go down
今日はこの節のI seen it all go downのI seenという部分、主語の後に過去分詞が来ている学校英語では習わなかった形を取り上げます。
これは学校のテストでは✖がつけられるものですが、くだけた会話ではけっこう使われています。
● I seen it all go down.
(うまくいかなくなるのも全部見てきた)
出だしのI seenはI have seenがI’ve seenとなり、[ve]の部分がほとんど聞こえない状態です。 会話では[’ve]を完全に落とす人もいます。これは、発音時have(has)が弱形[v]([z])になり、人間の発する発音の構造上、音として実現できなくなってしまったためだと考えられています。
I been there.(そこに行ったことがある)
He done a good job.(彼はいい仕事をした)
I never felt so good.(こんなにいい気分になったことはない)
などは普通に使われています。
で、この形、現代アメリカ英語で特徴的なことがあります。完了形が「完了したこと」→つまり「終わってしまったこと」なので過去形と同一視しても違和感がないこともあってか、現在完了なのか、過去時制なのかあいまい性がでてしまいます(事実、動詞によっては変化を見てもmeetの過去形がmet、過去分詞形もmetのように、過去形と過去分詞が同じなものがけっこうあります)。
そこでアメリカ英語のくだけた口語では、I seen that guy at school.(学校であいつを見たよ)のように過去分詞で過去形(saw)の意味でも使うようになりました。そこからこの両方が混用して使われるようになったというわけです。
ただこの用法がおかしいかというとそうでもなく、歴史をたどると、see-seen-seenのようにseeの過去形をseenとする形は昔には存在していて、アイルランドの移民がアメリカにもたらしたとも言われています。それでアメリカの現代口語では、「経験」でも現在完了の代わりに過去形が使われているということなんですね。
・「今まで恋に落ちたことある」
Have you ever fallen in love? → Did you ever fall in love?
・「今までこんな風に感じたことある」
Have you ever felt this way? → Did you ever feel this way?
このように今のアメリカ英語では、現在完了と過去の区別が失われ始めていると言えるでしょう。
ただし、I seenのような形を英語ネィティヴではない学習者は真似しない方が賢明です。非標準英語ということで、まだどこでも誰にでも使えるとは言えないからです。
そして話す言葉というのは、英語圏では社会階層を如実に表しています。I done it yesterday.とI did it yeatserday.では、ほぼ100%の人が後者のほうが社会的身分が高いと受け取ります。言語の中に社会階層方言と呼ばれる変種がしっかり、かつ確実に存在しているからです。
これは、その社会で生まれ育った人なら誰もが無意識に身に着けるもので、言葉使いからどの社会階層に属する人か一発で判断してしまうからです。気を付けたいものです。
ということで、今日取り上げたMr. Bigさんに話を戻しましょう。彼らの音楽キャリアにおいて、日本のファンの支持が彼らの成功に大きく貢献したことはよく知られています。そのため、日本市場に向けて特別なリリースを行うことがあり、アルバムには日本独自のボーナストラックや限定版が収められていることもありました。
また、日本ツアーを頻繁に行い、Mr. Bigさんにとって日本は「第二の故郷」とも言える場所になっているようです。リードボーカルのエリック・マーティンさんは、「東京か横浜に家を買うことに興味がある」と番組のインタビューで言ってましたから。
2025年2月に東京・大阪でそれぞれコンサートがあります。どうやらこれが見納めになりそうです。