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英語学習をもっと楽しく!洋楽で口語スキルを磨きませんか?(22)

今日はAOR(Adult-oriented Rock大人向きロック)というジャンルで、日本でも根強い人気があるボズ・スキャッグスさんの名曲。                

         We’re all alone


We’re all alone.は、夢の中で海や風に身を任せて、君と僕の二人っきりで愛し合おう…と大人のムードたっぷりのラブソング。まずはライブから。

いつ聞いてもいい曲です。では、歌詞をちょっと見てみましょうか。

We’re all alone.  (僕らは2人きり)

よくlonely「孤独な、寂しい」とaloneを混同しがちですが、aloneは「当事者だけ(他にいない)」ということで、通常、寂しさは表しません。We’re alone.なら「私たちだけ」ということで、We were alone in the cafe.(カフェには私たちだけだった)、またある家族が滞在先の宿でWe want to stay alone.と言えば「家族だけの水入らずで過ごしたい」という意味になります。

この歌はそこに強調のall「全く、すっかり」がついてWe’re all alone.で「私たち二人っきり」「自分たちだけで他に誰もいない」ということです。

Outside the rain begins  (外では雨が降り始める)

語順を変えることで意味を強調する手法を「倒置」と呼んでいます。会話ではよく使われていて、実は日本語でもそうなんです。「テレビで話題になってるボジョレヌーボ昨日飲んだよ」よりは、「昨日飲んだよ。テレビで話題になってるボジョレヌーボ。」の方がインパクトがありますね。英語も一緒です。

The rain begins outside.だと客観的に淡々と「雨が外で降り始めた」と述べているだけですが、outside the rain begins.だと「ほら外見てごらん。雨が降り始めた。」と感情がこもりますね。こんなときに使われるのが「倒置」です。On the shore a dream~の箇所も同じ。

Will take us out to sea   (僕らを海に連れだす)

名詞のsea「海」に注目です。前にaもtheもついていませんね。ここがポイントになります。
         I went to the sea. と I went to sea.

意味が違うんです。どう違うと思いますか?
前者はtheがついているので、具体的で誰もが知っている「あれ、あそこ」という感覚が出てきます。つまり「海岸/ビーチに出かけた(泳ぎに行った、体を焼きに行った、など)」ということで、後者はもっと抽象的で広がりのある「船に乗って海に出た」という意味になります。

なので、この曲もOn the shore a dream will take us out to sea.「夢が私たちを船で出航して遠くの海へ連れて行ってくれる」つまり「現実世界からどこか遠くへいざなってくれる」という意味合いに解釈できます。

ちなみにWhat do you do?「お仕事は何ですか?」と聞かれ、I go to school. と答えれば、schoolにaやtheなど何もついていないので、具体的な「学校」という建物ではなく、学校に関係するもっと抽象的な概念(授業を受ける、友達とおしゃべりする、部活をする、図書館で勉強するなど)を指し、そこで行われる機能に意識が向いています。

つまり「キャンパスライフ」のことを指しています。そこからI go to school.は「私はキャンパスライフをしに通っています」→「学生です」という意味になります。

では、同じ質問にI go to sea.ならどんな意味になると思いますか?職業について答えているので、これは「海で生活のために行っている仕事」つまり「船乗り/漁師/海洋研究者です」といった意味になります。文脈でどれかが決定されます。「冠詞(a/the))がつかない→抽象的」と覚えておきましょう。


Let it out let it all begin  (素直に話して一から始めよう)

このlet it outは「it(過去いろいろあった出来事)を表に出す」→「胸に秘めていたことを話す」と解釈できます。そして、また一から始める(let it all begin)につながって行くと考えられます。この曲の歌詞は全体的にかなり難解で、取り方によって解釈もいろいろできますので、想像力を駆使する必要があります。

ちなみに動詞のletは「~させる」ということで、「拘束しないで、それ自体の意志に任せて自由にさせてあげる」という意味があります。例えばI’ll let you sleep for five more minutes.なら「もうあと5分寝かせてあげる」ということで、「あなたがsleep for five more minutesするのを自由にさせてあげる、許してあげる」ということです。

このletの持つニュアンスが理解できるとI’ll let you go home.「あなたを家に帰らせる」、Let me call you back.「折り返し電話させてください」など、日本語の「させる」から文字通り受ける印象とは違っていることがわかるはずです。

It can't help but grow old  (どうしても古ぼけていく)

辞書などにはcan't help but ~で「~せざるをえない」という熟語で出ています。この場合のhelpには「~を避ける」という意味があって「~を避けることができない」→「~せざるをえない」となりました。

さてさて、それにしても素敵な曲ですね。

今年の2月に東京ドームシティーで開かれたボズさんのコンサートに行ってきました。ステージから5列目のとてもいい席でかなり近くで見ることができ最高でした。

コンサートが始まってしばらくして、腰が曲がって杖をつきながらの老夫婦が遅れてやってきました。よろよろしながらも私の隣の席について、目をつぶってじっとボズさんの歌声に聞き入っていました。そしてこの曲がかかり、終わった瞬間、奥さんが旦那さんに向かって一言。

          「お父さん、やっぱりいい曲だね」と。

推測ですが、どこか遠い地方からやっとの思いで上京して来た感じがしました。こちらにも感動した次第です。

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