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アトツギの挑戦#2 「軍手に想いを乗せて、推しの職人を応援!」
新規事業や組織改革に取り組む筑後地区のアトツギ経営者たちにフォーカスする「ネクストリーダーズ」
第2回は、ものづくりに欠かせない「軍手」の新たな可能性を追及する3代目をご紹介します。斬新です。
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中小企業の次代を担う後継者たちが、新たなビジネスプランを発表する「アトツギ甲子園」
その九州大会に久留米市北野町から出場した稲葉雄大さん(38)
右手に付けたロゴ入りの軍手には、彼のアイデアとものづくりへの想いが詰まっている。
「軍手工房」の屋号を掲げ、ホームセンターへの卸売りとネットでの直販を並行する。
稲葉さん
「伸縮性と編み目の細かさが特徴です。まるで靴下のような質感です」
廉価品にありがちなゴワゴワとした感覚がない、優しさを感じるような肌触りだ。
昭和35年に創業したイナバ。3代目の稲葉さんは大学でデザインを専攻し、卒業後間もなく家業に就いた。現在は商品開発とECサイトの運営を手がけている。
その稲葉さんが「アトツギ甲子園」で披露した新規事業のアイデアとは・・・
軍手で職人の手をスポンサード 意識と効率を上げる手元革命
稲葉さん(アトツギ甲子園にて)
「ものづくり職人はかっこいい!その職人が付けている軍手こそ、かっこいいのではないかと考えるようになりました」
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熟練された巧みな技術で価値を生み出す職人たち。
軍手ユーザーである彼らの姿を、稲葉さんは一流のアスリートと重ね合わせた。
稲葉さん
「職人もスポーツ選手のように応援される存在になるべきだ。スポーツ選手のようにユニフォームや道具にかっこいいロゴマークが入り、いろんな企業にスポンサードされることがあってもいいのではないかと私は考えました」
稲葉さんの「軍手スポンサード構想」は次の通りだ。
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⚫︎ものづくり企業や職人の魅力を、軍手工房がサイトで発信する
⚫︎その企業・職人を応援したいスポンサー(企業・個人)をサイト上で募る
⚫︎軍手工房に、スポンサーから製作費が支払われる
⚫︎ものづくり企業・職人に、スポンサーのロゴやメッセージが入った軍手が贈られる
稲葉さん
「推し企業や推し職人に軍手を贈る、まさに“軍手版クラウドファンディング”です」
海外の安い軍手が販路を拡大する一方、国内の労働人口(=軍手ユーザー数)は年々減っていく。
いくら質の良い製品を作っていても、いずれは価格競争に巻き込まれる・・・
軍手に新たな価値を乗せて届けたいという想いから生まれたアイデアだった。
消耗品というイメージを払拭することで、長く使ってもらうことにもつながると考えた。
営利活動だけでない軍手の使い道
稲葉さんは軍手が持つ「公共性」にも注目している。
災害復旧の現場や植樹、ゴミ拾いなど、企業の社会貢献活動で軍手が活躍する点にも、贈り物としての意義があると感じている。
情熱を持って挑んだアトツギ甲子園では、審査員から次のような意見も出された。
「企業がスポンサーとしてロゴマークを入れるかというと、そこは少し疑問」
「スポンサードの仕組みもやりつつ、シンプルに見た目と機能で勝負しても良いのでは」
アトツギ甲子園での全国大会進出は叶わなかったが、出場を経て実行に移す気持ちが強くなったと稲葉さんは語る。
稲葉さん
「スポンサーがどこにいるのか、確かにそこは課題。ただ、もう計画の段階ではないのかなと。作って売ってみる。お客さんの評価をもらって、違ったら変える。実行してトライアンドエラーを重ねる。使う方がどう思うかが一番重要。ビジネスプランを練るのではなくやってみるのが早い」
自らデザイン制作ができる点や、軍手という商材の単価の安さも、様々なアイデアを試すうえでの追い風になりそうだ。
スポンサード軍手の事業は、地元の企業にまずアプローチして形にしていきたいと考えている。
アトツギのアイデアは尽きない
稲葉さんは最近、軍手から派生した製品をリリースした。
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軍手製造のノウハウを生かした5本指の鍋つかみ。表面に凹凸のある編み目と滑らかな編み目の手袋を二重にすることで、しっかりと掴むことができるそうだ。素材には熊本の小国杉の「木糸」を使っている。※
軍手の可能性は無限大。
これからも稲葉さんの挑戦から目が離せない。
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※鍋つかみは3月1日〜10日の期間にて「Makuake」サイトで購入可能
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