
15、解剖(後編) 刑事課員になり始めての解剖は衝撃だらけ。なぜ終わった時には顔がびしょ濡れだったのか
⇩前回の記事⇩の続き
今回は私が実際に従事した解剖の現場で見てきたことや耐えたことなどを紹介していきます。
本題に入る前に、解剖を執刀する医師の視点がわかる書籍があります⇩
私は警察官辞めてから読んだのですが、辞める前にこれを読んでおきたかった。
死体からどれだけのことがわかるのかが、医師の専門的な視点から書かれてます
警察官になる人にもぜひ読んで欲しい一冊です。
では私の初めての解剖の時の経験です
初めての解剖が決定した前日
私が初めて解剖に行くことになったのは、刑事課勤務になって2か月が過ぎた頃
変死体が発見され検視の結果、事件性の疑いが出てしまった
実施は明日。刑事課の中で誰がいくか人選が行われ、強行班から二人と、鑑識からは私が入ってしまった。
「ついに来てしまったか」
刑事課勤務になった以上、いつかは来るだろうと覚悟はしていた。
しかし実際にその時がやってくると、やはり気が重い。怖い
なぜそこまで気が重くなるのかというと、警察学校の時に学んだ事前学習や、解剖経験者から聞いた話などの事前情報があったからだ。
警察学校の時には、実際の殺人事件の解剖をしている映像を見て学んだ
映像なのに数人がトイレに行って嘔吐していたくらいだ。
本当に体も頭も切り開かれて、臓器の中まで徹底的に解剖されていた
そして、かなりショッキングだったのが最後だ。
身体中から取り出した臓器などをどうするのかと思ったら、とにかく体の中に詰め込み、最後に縫い合わせていた
また、皮膚を剥がして頭蓋骨になった死体をどうするのかと思ったら、一度剥ぎ取った皮をまたかぶせて元に戻していた。
皮を戻すとまた元の死者の顔になっていた
まさか現実の世の中であんなことが行われているところがあるとは、警察官になるまで想像もしていなかった
警察学校の学習の中でもショッキングなものベスト3に入る衝撃だった
そしてついに実際に自分が参加しなくてはいけなくなってしまった
今度は映像ではない。匂いは一体どれほど凄まじいのだろうか
初めての解剖では倒れてしまう人もいるらしい。
自分は大丈夫だろうか
もしかしたら全然平気かもしれないし、ぶっ倒れるかもしれない
解剖に行くことが決まってから、そんなことばかりを考えていた
まぁ一言でいえば、ビビりまくっていたということだ。
いよいよ解剖当日、そこにはかわいい女性たちの光景が
解剖当日、署にはいつもより1時間早く出勤。本部の冷蔵庫に預けておいた遺体を引き取り、大学病院へ。
ご遺体と一緒に解剖室に到着した
警察官は全部で6人
警察署刑事課の警察官が3人
⇧ 解剖室の中で最下層に位置する。
私はこの3人の中でもさらに最下層、つまりこの解剖室の中で最下層だ
そして警察本部の捜査一課から二人と科捜研から一人
⇧同じ警察官でも、我々署の警察官と別格の存在。
医師たちと対等に会話する。
「先生この前はどうも。今回もよろしく頼みますね」みたいに。
我々署員に対してはとにかく偉そう。
本部の一部の警察官の中には、本部と署員を上下関係のように勘違いしているのがいるのだ。
この威張り散らす本部の捜査一課が解剖にいることがさらに気が重くなる原因のひとつだ。
解剖室の入り口ドアの前で顔をこわばらせながら準備をしていた
すると解剖室の中から聞こえてきたのは、若い女性たちの話し声だった
「ねぇこれ終わったら駅前に新しくできたあのカフェ行こうよ」
「うん、いくいく。」
「あーダイエットしなきゃー❤️」
え?女子会?
なんでかわいい女性たちの会話が飛び交ってるの?
私の中で想像していた解剖へのイメージは、もっと冷たくて重苦しいものだった。
しかし、聞こえてきたのはそのイメージとはまったく結びつかない声だった。
準備を終えて解剖室に入った
解剖室がどんな部屋かは前回の記事で書いた通り
飾り気の一切ない冷たい部屋だ
ここの解剖室は窓があって明るい。
窓の外は、一般外来客の駐車場だ
駐車場にいる一般人はまさか壁の向こうで死んだ人間が切り開かれているとは思わないだろう
解剖室にいたのは、5人の若い女性(20代前半から半ばくらい)と、年配の男性(50歳くらい)だった。
全員手術の時と同じような着衣だ
手術着の上に大きなエプロンもつけている
男性は医師。
女性たちは医学生だ。
年配の男性がこの大学病院で教授も勤めている医師で解剖医。
女性たちは医学部で学ぶ医者の卵の女子大生たちだ。
さっき聞こえてきたのは彼女たちの声だった
よく見ると美人ばかりだった。
医学部に入るくらいなんだから、家は裕福でお嬢様育ちなんだろう
服装は清楚なワンピースではなく、手術前の医師そのものだ

かわいい女子大生たちは死体の扱いに対して想像の斜め上をいっていた
こんなかわいい女の子たちが解剖なんて大丈夫なのだろうか
吐いたり倒れたりするのではないか
そう思っていた
しかし、いざ遺体の取り扱いが始まると、その考えはまったく間違っていたことに気付かされた
若くてかわいい大学生とはいっても解剖や遺体の扱いに関しては私とは比較にならないほど慣れていた
当然だ。ここにはうちの署だけでなく、県内全署からひっきりなしに解剖の依頼が舞い込むのだ
慣れている彼女たちは私のように怯えた表情などまったくしていない
死体を切り開く前とは思えないほどリラックスしている。
ここが解剖室でなければ、普通に美人な女子大生たちが女子トークをしているという光景だ
しかし、会話の内容はどこにでもいる女子大生たちとはまったくちがう
「うわー、今回臭いきつーい」
「ねー、仰向けに裏返すよー」
「ちょっと!勢いよくやりすぎ!」
こんな会話だ
しかし声は普通の女子トークなのだ
初めてで怯えている私にとって、恐怖でしかない解剖とかわいらしい女子大生たち。
その二つがどうしてもマッチしなかった。
解剖が始まるとまたしても女子大生たちに驚かされてばかり
解剖が始まった
進行は私が想像していたものとちがっていた
ここから先は

読んだら気分が悪くなる。刑事のリアルな死体現場note集
刑事課の時の死体現場のリアル話。 刑事の死体現場とはどんなものか、死体現場での刑事たちの本音とは ドラマや小説のようなファンタジーは一切な…
この記事が参加している募集
いただいたサポートは、今後の情報発信のために活用させていただきます。どうかよろしくお願いします