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堀江由衣【楽園】感想・レビュー

前作「sky」が透き通った夏をイメージさせるのに対して、今作はポップでフェミニンな楽曲が並び、ジャケットや歌詞から春を感じさせる一枚に。歌詞面では岡崎律子さん作詞曲のM1「クローバー」とM2「A Girl in Love」から一人の女の子の恋が始まる模様が描かれており、恋=春の訪れだと個人的に解釈しています。

サウンド面ではポップロックなM3「虹色☆サーチ」、今回初めて歌詞を提供する林原めぐみさん作詞とFuntaさんによる作曲の失恋模様を描くM6「恋ごころ」、angelaさん提供のそれぞれ違った激しさで攻めるM8「On My Way」やM9「Try Again」など大半が外部から提供で今まで以上にバラエティに富んだ1枚に。そんな中ほっちゃんのイメージが崩れることなく一貫性のあるアルバムになっているのは今までのアルバムに参加されたおなじみ作家陣による作詞編曲の影響がありますが、自然体で楽曲に左右されることのないほっちゃん自身の表現力の高さも大きいところです。あくまで声優シンガーということを忘れず1曲1曲の登場人物をお芝居のように表現できているのが流石です。

今作のタイトルが「楽園」ということで、主人公である一人の少女が様々な恋を経験するストーリーの中に空想のような曲がちりばめられています。この主人公は失恋をしたり後ろ向きな気持ちになったりしますので、そういった場面での逃避とも解釈できます。アルバム終盤に向け心も晴れ、笑顔になっていく主人公、M12「BE FREE」で心を解き放った後、不穏なノイズを交えたイントロから始まり街並みの音をサンプリングしたアウトロで終わるラストナンバーM13「Invitation」でという締めくくりは空想上の「楽園」から抜け出し現実へと、前へ向かって進んでいくという構成が素晴らしい。

アルバム4作続いた春夏秋冬シリーズも今回で終わり、ほっちゃん自身も新たなステージへと進んでいく受け取れて。アーティストとしての前進も感じ取れた今作。楽曲面だけではなくコンセプトも満足な1枚でした。



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