木工のアートと土壌の科学: 神山町のDIYキエーロワークショップ
こんにちは、神山メイカースペースの本橋です。キエーロ神山クラブの本橋でもあります。
キエーロ神山クラブは『キエーロ』という、土壌微生物を最大限に活用した生ごみ処理機の普及推進を図る神山メイカースペースのプロジェクトです。
僕が住む神山町では生ゴミの回収がありません。生ゴミは全て各家庭で処理するか、金曜日に役場に持っていく前提です。他には選択肢がないのです。
そんな状況で生ゴミをご家庭で処理するにためにベターな手段としてキエーロを提案しているのがキエーロ神山クラブです。
ぶっちゃけ生ゴミを自宅前まで収集に来てくれる地域にお住まいの方にはキエーロは不要かもしれません。持っていってもらったほうが手軽ですよね?
それでも、臭いも出ず、虫もたからず、電気も使わずに、生ゴミを水と炭酸ガスに分解できる仕組みにご興味をお持ちいただいた方はぜひこの先もお読みください。
キエーロの消化能力
我が家はキエーロを導入して5年ほどになります。その間、夫婦と子供二人の4人家族が生ゴミを回収に出さずに水と炭酸ガスに分解し続けることができています。ひとまずこの5年間はトラブルもなくたまに動物に荒らされるハプニングこそあれ機能してくれています。
こちらの動画は、1年間、キエーロに投入した生ゴミの写真をまとめたものです。
2023年10月現在も元気に生ゴミを分解し続けてくれています。これだけの処理能力を持った無電源生ゴミ処理機がキエーロなのです。
神山町の生ゴミ処理事情
先程お話した通り、神山町では生ゴミ回収というサービスはありません。金曜日に役場に持っていくと回収ボックスが置いてありますが、その回収ボックスすら数年前までありませんでした。多くの里山がそうであるように、神山町でも生ゴミは自分たちの庭や畑に設置したコンポストで処理できることがあたりまえだったのです。
ところがこの10年ほど、町外からの移住者が増えてくるとそうも言っていられなくなりました。コンポストを設置する畑を持っていない移住者は生ゴミの処理手段も持っていないことになります。そういった事情もあり、数年前から役場での生ゴミ回収が始まりました。
生活していれば生ゴミは必ず出ます。金曜日に車で回収場所までもっていく、というのは毎週のこととなるとなかなかの負荷です。
ところで僕が住む大埜地集合住宅には各戸にひとつ大きな花壇(1m x 5m)があります。その花壇の一角に生ゴミ処理用のキエーロ(1m x 60cm)を設置したくなるのは当然のことです。
キエーロの特徴
さてそんな生ゴミ処理を一身で受け止めてくれるキエーロ=サン。どんな仕組みなのでしょうか。
極端な話、キエーロは畑にトタン屋根を斜めにかぶせただけでも機能します。ほぼほぼ完成形といっても過言ではありません。それだけで虫も集らず、臭いも出ず、もちろん電気も使わない生ゴミ処理が可能です。
畑のトタンにひと工夫加えて、周囲の水分が流れ込まないように囲いを付けて、太陽光を少しでも多く浴びるように一段高くするとバクテリアdeキエーロになります。
キエーロを自作している理由
そんなシンプルな構造のキエーロも、大工さんに頼むととても精度の高い箱を作っていただくことになります。彼らはいい加減な仕事はできないので、正直オーバースペックなほど立派になります。しかしきっちり作ると通気性が悪くなり、生ゴミ処理にはマイナスに働いてしまうのです。キエーロはいい加減な作り通気性の良さが大事です。
とはいえ、ゼロから一人で作る気にならない程度には大掛かりな工作でもあります。そういった大工仕事と通気性の良さの合間を狙うものは、個人で作るには手に余り、プロに頼むにはいい加減が過ぎる、そういうニッチにあたります。
そこで登場したのがわれわれ神山メイカースペース、地域住民のためのものづくりサポーターというわけです。
神山メイカースペースのDIYキエーロワークショップ
あたらしく大埜地集合住宅に入居されたお宅用のキエーロワークショップを開催しました。
電動工具を学ぶ前半と、生ゴミを消化するコツを学ぶ後半に分かれています。
前半:電動工具を使った木工ワークショップ
組み立て場面ではインパクトドライバーの扱い方を中心として角材・板材の固定方法を練習しつつ自宅用のキエーロを組み立てていきます。
インパクトはドリルビットを使った穴あけと、ドライバービットを使ったビス打ちでそれぞれちょっとしたコツがあります。1台組み立て終わるころにはそういったコツを一通り手に入れることができます。
詳しい組み立て手順についてはキエーロ神山クラブのWebサイトに書きました。こちらもよろしければご覧ください。
そんなレクチャーをかたわらからお話ししつつインパクトドライバーとハンマーを振るっていただき、キエーロ本体は2時間ほどで完成しました。
ここまでが電動工具を使った木工仕事を一通り体験できるワークショップです。
後半:生ゴミを高効率に消化するコツを学ぶキエーロワークショップ
さきほども書きました通り、キエーロのプリミティブな形を探っていくと畑にトタン屋根で完成します。
とはいっても畑にトタンでは扱いが非常に面倒です。キエーロが能力を最大限に発揮するためには温度と乾燥が重要です。
この2つの要素をフォローする構造を足していくと、それは囲いと屋根となり、バクテリアdeキエーロの形に近づいていきます。
使えば使うほど松本さんの考案されたキエーロが計算され尽くした形状をしていることに気付かされます。
そのキエーロの能力を十分発揮させるためにはテクニックもいくつかあります。これまでの経験から気づいたTipsを動画にまとめました。
15cm以上の深さに穴を掘ること
深く掘るほど臭いを防げます
生ゴミは事前に小さく切っておくこと
小さければ小さいほど早く消化されます
土とよく混ぜること
生ゴミは土に触れているところから消化が進みます
5cm以上の厚さに土をかぶせること
空気を含んだ土が臭いを閉じ込めます
酸素が多い環境なら臭わず発酵する、みたいな理屈をつけた説明もあるにはありますが、上の4つのコツを抑えておけば快適なキエーロライフが送れることかと思います。
後半の生ゴミ分解ワークショップでは、このあたりのコツを参加者に理解しやすい形で噛み砕いて説明しながら、実際に土を触ったり、生ゴミを投入したり、よーくかき混ぜて乾燥した土をたっぷり被せたりしながら進めていきます。
もしキエーロの扱い方にお困りの方は是非コメントでお知らせください。大概の問題は解決できると思います!
余談:タイトル画像について
キエーロをイメージしたプロンプトを与えてDALL-E3に描いてもらいました。とても柔らかい雰囲気の動物が何匹かいますが彼らはキエーロを荒らすので目下の悩みの種です。
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