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小さなシール1枚から始まるブランドづくり

石川県金沢市にある『茶菓工房たろう』さん。創業がnakaguroと同じ2005年で、創業以来のお付き合いをさせていただいています。
金沢には老舗の和菓子店が数多くありますが、『茶菓工房たろう』さんは、そんな中で新しいチャレンジを続ける和菓子店です。
初めてお仕事をいただいたのは、小さな羊羹の箱に貼るシールのデザインでした。当時、『茶菓工房たろう』さんは新たな試みとして、これまでにない味や小さいサイズの羊羹を開発されていました。しかし、印刷された箱を使うとロットが大きくなり、予算的に厳しい。そこで、まずはコストを抑えるためにシールを使うことになりました。
この小さなパッケージに、どんなシールを貼れば商品の魅力を引き出し、同時に『茶菓工房たろう』のブランドを認知してもらえるかが大きな課題でした。そこで、4種類の味をそれぞれ色の異なる丸で表現し、「たろうのようかん」というシンプルで覚えやすい名前をデザインに取り入れました。
デザインにあたっては、ギフトパッケージとして並べたときの可愛らしさや、贈り物としての魅力も考慮しました。

初代デザイン
2代目デザイン


このデザインは若い層にも受け入れられ、特にカカオ味の羊羹が人気商品となりました。その後、何度かリニューアルを行い、現在では箱に特殊印刷を施したデザインに進化しています。
商品が増えてきたタイミングで、ギフトセットとしての商品展開もスタートしました。他の商品もnakaguroがデザインを担当させていただき、ギフト用に統一感を持たせたデザインルールを構築しました。すべてのデザインの基準は、小さな羊羹の箱を5つ並べたときの見た目。そこから他の商品もデザインを展開しています。

2024年現在の箱に印刷したデザイン
2024年現在の箱に印刷したデザイン
たろうの菓子箱

今では商品も増え、「たろうの菓子箱」というギフト商品が完成しました。

ブランドの世界観をつくり上げるには時間がかかります。『茶菓工房たろう』の世界観がここまで成長するまでにも、長い道のりがありました。私たちは、小さな羊羹のシール一枚から、一歩ずつ丁寧に進めてきました。そして何より大切だったのは、デザイナーと経営者が同じ目標を共有し、常に同じ方向を見てきたことです。
デザインの本質は、経営者の思いや熱意を形にすることです。デザイナーはその伴走者に過ぎません。ブランディングという言葉は耳にするものの、中小企業では全てを一度に整えるのは難しいことが多いです。しかし、しっかりとしたビジョンと熱意、そして信頼できるパートナーがいれば、時間をかけて理想の未来に向かうことは可能です。
重要なのは、伝えたい思いを整理し、最初は小さなシールや袋からでもスタートすること。そこから、きっと変化が生まれるはずです。

これからも『茶菓工房たろう』さんと共に、新しい和菓子の世界を切り開いていけることを楽しみにしています。

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