営業は本を読まない、は本当か?
Clubhouseで無敗営業の高橋さんが「営業は本を読まない」という課題感の提起があったので、営業が本を読まないのかどうかを自分の経験を基に考えてみたい。
(注釈:本稿で本とはビジネス書、実用書を意味する)
今回の記事の概要:
何故、本を読むのか?
インターネットの発達により、ありとあらゆる情報はネット上で手に入れることができるようになった。インターネット上で発見できない情報はほとんどないと言っても過言ではないだろう。私も数年前までは、何かまとまった知識を身につけようとする際には、書籍を購入することが多かったが、最近ではインターネットメディアでも、最新の情報に触れられるようになっている(特にNOTEのような有料サービスでは書籍よりも早い発信者の率直なオピニオンが入手できる)。
出版物の発行部数はスマホの普及と共に大幅に減っているのだろうと思い、実際の販売推移を調べてみると下図のような結果を発見した。
『出版指標 年報 2020年版』より
意外なことに、雑誌に比べると書籍の販売額はそれほど減っていない。若干減っているので、インターネット(スマホ)の影響はないとは言えないのだが、ある程度のまとまった情報であれば、書籍がまだまだ活用されていると言えるのではないだろうか。
そもそも営業とはどんな仕事なのか?
さて、本稿の主題である、「営業職における」書籍の位置づけを考えてみたい。
営業パーソンとは、自社の製品・サービスをユーザー(お客さん)に理解させる役割を担った人と私は定義している。そこで求められる素質としては、お客さんの言っていることを理解する聞く力、お客さんの課題と自社のサービスの価値を合致させ、訴求する力が最も重要であると考えられる。そのために、お客さんから信頼を得る誠実さ、実直さが素質として求められるだろう。簡単に言えば、人から好かれる、気に入られるというのが売れる営業としてKeyとなっているのではないだろうか。
大きな企業では、分業化が進んでおり、マーケティング対策もしっかりと取られていることから、あまり大きな戦略論的なビジネスセンスは求められておらず、マーケが獲得してきたリードを確実に口説き落とすことが求められる職種なのである。
商談で必要な資料などはマーケティングがテンプレートを作成しているので、営業は目の前の人に好かれ、しっかりと話を聞いてもらうことだけに集中して力を注げばよいと考えている営業が多いのではないだろうか。
で、本当に営業は本から学ばなくていいの?
日本社会は完全に成熟市場であることを忘れてはいけない。いわば競争過多である。商品・サービスも、顧客が得ることができる情報の量も飽和状態。立場的に購買側の力が強くなる一方であり、競争しなければ勝ち残れないサバイバル時代なのである。
客の言うことを聞くという営業はいつまでの客の小間使い、且つ価格勝負でしか受注できないというポジションから脱することができない。客にこいつと付き合っていれば有益であると思わせないと、価格競争から脱することができない。
勿論、差別化を図るサービスを提供するということも生き残りの戦略が最も有効である。そうなると社内で営業の立場は弱くなり、営業職の価値は低くなってしまう。
私は昭和生まれの古い考えだからかもしれないが、自分が抱えている課題に対してまとまった知識・知見を与えてくれるビジネス書から学ぶことを多いと思っているし、営業職であっても、しっかりと整理された情報、先人たちの知恵・意見をインプットすることは必須であると思っている。
営業が本を読まない理由は?
上記のように考えてみると、結局は何に価値を感じて、時間を使えるのか?という問いに集約される。
私も恥ずかしながら、20代にはほとんど本を読まなかったし、それが問題であることにも気が付いていなかった。本にお金・時間をかけることをケチっていた。
独身であったし、平日は22時より前に家に帰ることはほとんどなかったし、その反動で週末は予定を詰め込み、遊びまくっていた。仕事は山のようにあるし、自分が仕事ができるという錯覚もあったために、プライベート時間を費やして勉強なんかしなくても、絶対に困らないと考えていた。もっと正直に言えば、将来のことなんてちゃんと考えていなかったという方が正しいかもしれない。
昨今の変化の激しい現代社会では、若者も危機感をもって仕事に臨んでいるのではないかと思う。効率的に知見を吸収するためにも本への投資をケチらないでもらいたい。
本から得られるものって?
自分に影響を与えてくれた尊敬できる上司、先輩の方に共通するのは読書家で知的であるということである。本を読んでいて、知的な人ってかっこいいですよね(←これもかなり古いセンスなのかも?)
自分が本をちゃんと読むようになった理由はそんな人たちへの憧れがあったかもしれない。
セールスパーソンだからとかの問題ではなく、社会人として生きていく中で高みを目指していきたいと考えている自分にとっては、本から学ぶという事がなかったら今の自分はなかったと思う。
ありきたりな言葉ではあるが、本は人生を豊かにしてくれる。これに尽きると思う。しかし、本を読まない人にこのセンスを理解させるのは難しい。自分の周囲にこのセンスを理解してもらうためにも自分がしっかりと仕事で結果を出して、影響力のある人間になって、読書という文化が廃れないようにしていかなければならない。
読書家のビジネスパーソンの皆さん、頑張りましょう!
「無我夢中で本を読み、知識を蓄積していく。すると、ある時点で脳がデータバンクのようになり、やがてある思考モデルが立ち現れる。」エマニュエル・ドット