雰囲気大事だな
人生は、別れ道。あの列車に乗った事は、間違いではなかったのだろうか。
夏になると思い出す。
小田急線を見ると思い出す。
単位が足りないポンは、補習という形で学校のインターハイ予選に応援に行った感想を書けと、言われていた。
ポンの学校は、スポーツクラスがあるような学校。
その頃、俺は違う高校にいるポンと遊ぶ毎日だった。その感想文が書けないから、遊べないというので腹が立ち、俺が喋るからそれを書けということになった。
「何で書けないんだよ」
「それがわからないんだよ」
とりあえず、聞き取り方式で思い出を聞いていった。
「どんな試合だった?」
「いい試合だった」
「誰が活躍したの?」
「大きい人」
「何が印象に残った?」
「マネージャーが、可愛い子」
「それは大事だな」
「勝敗に関わる」
「どんな可愛さだった?」
「あれは、笑顔がイケてる」
「見えたの?」
「見えない。目が悪いから。」
「雰囲気大事だな」
「雰囲気でわかるくらい可愛いってもう才能だよな」
「女子だったの?」
「マネージャーだからな」
「そうだよな。男子高でもマネージャーは、女子ってあり得るよな」
「相手男子校だったの?」
「ここに書いてある」
「ほんとだ。見逃してた」
「お前、行ってないな」
「行こうとはしたんだけどな。だから困ってる」
「そりゃ困るな」
「なんとかしてくれよ」
「さすがに想像の勝敗までは、書けないな」
「そうだよな。バレるしな」
「物事には発想の転換ってものがある」
「なんにでもあるけどな」
「お前が言うなよ」
「それな」
「行くまでを書こう」
「天才か」
「俺、TAWA」
「それな」
「どうせなら、少し恋したらどうだ」
「行くまでの恋か」
「降りて終了。そんな片思い」
「天才か」
「やっぱり違う高校の子がいいな」
「そこは、人妻なOLにしてくれ」
「何でだよ」
「癖(ヘキ)だ」
「じゃ、しょうがないな」
「人妻のどこに惚れる?」
「慌てて走り込んで来て、足踏まれる」
「それで、謝られるのか?いいね。魅力的だね」
「違う。睨まれる」
「逆に?何でだよ」
「癖(ヘキ)だ」
「じゃ、しょうがないな」
「睨まれた後、どうする」
「恋するだろうな」
「その睨んだ目が、色っぽいのか。いいな」
「髪の毛がロング。なんなら目が見えない」
「お化けっぽくて逆に色っぽいな」
「それは、おかしいだろ」
「そこは、怒るのな」
「睨まれて、何するのよって逆ギレがいいな」
「そこに惚れるのか。ややこしやだな」
「そこは、こっちもキレる」
「当然だよな」
「目がキレイですね‼️ってな」
「褒めてるけどな」
「キレッぽくいえば、何とかなるだろ」
「ロングで見えてないはずだけどな」
「雰囲気大事だな」
「キレイな目だと推測されます‼️で、どうだ」
「天才か」
「そっから、どうやって失恋するの?」
「そもそも失恋か」
「出会って怒られてしかないからな」
「薬指の指輪に気付くな」
「ちょっと切ないな」
「でも、2連の指輪な」
「それな」
「2人目募集してますな」
「新解釈な」
「それは、勘違いしちゃうな」
「めっちゃ切ないな」
「髪結ぼうとして、嫌がられるは?」
「それ痴漢な」
「いい香りだけど」
「それ、リンスな。なんなら俺も同じ香りだからな。」
「雰囲気大事だな」
「いい香りを残して去って行く事にするか」
「それな」
「同じ香りを求めて、気付いたら薬局だったってな」
「なんならカオリって名前にするか」
「天才か」
「カオリの香りを求めて僕は大人になった」
「2連の指輪が、切なく煌めいてた夏ってな」
「物語としても最高だな」
「書いたか?」
「書いた」
「俺達、面白いな」
「たぶん日本で一番面白いな」
「じゃ、帰るわ」
「木ノ子、明日、電車乗ろうぜ」
「それな。今、言おうとしたとこ」
なんのはなしですか
夏になると思い出す。小田急線を見ると思い出す。
数年後第一回M-1大会予選第1回戦で盛大にスベる。
私は、これで芸人は無理だと一皮むけた。
自称日本一面白い2人のはなし。
「それな」
ほんとか、嘘かは、
「雰囲気大事だな」
人生は、別れ道。あの列車に乗った事は、間違いではなかったのだろうか。
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