#2 親近感の法則 - 画期的ネーミングのNTT docomo

皆さんはスマホでどちらのキャリアを使われていますでしょうか?ドコモ?au?ソフトバンク?むしろ今は、楽天やUQ、Y!モバイルをはじめとした格安キャリアの方も多いかもしれません。

2019年、体験価値を主眼とした
ブランドスローガンを策定したau
ブランド発足以降、海援隊旗をモチーフとしたロゴを
一貫して使い続けるSoftBank

2010年代、iPhoneの普及と共に「携帯電話」はその姿形も、呼称をも、名実ともに「スマホ」へと進化を果たしました。しかしながら、その手前の2000年代。今でこそ「ガラケー」と揶揄され、日本企業が斜陽に向かっていくことになった象徴のように扱われる「携帯電話」は、国内においてかなり熾烈な市場競争を行なっていたように感じます。

そんな中で、この血みどろの仁義なき戦いをくぐり抜け、前世紀から生き残る唯一のブランドがあります。それは…「au」でも「ソフトバンク」でもなく、「NTTドコモ」。NTTと言えば、1980年代後半にJRやJTと同様に民営化を果たした「公共企業体」でした。その企業体質はおそらく、とてもお堅いものだったと考えられます。

そんなお堅いNTTがなぜ「ドコモ」などという、親近感、そして夢にあふれた名前をつけることができたのか?当時の私には、それがとても不思議でした。「NTTの携帯電話」と言われても一切手に取る気にならなかったけれど、「ドコモ」と言われると、なんだか昔から友だちだったかのように、思わず手に取りたくなる。「ドコモ」という名前には、そんな不思議な魔力があったように感じます。

ただし「DoCoMo」の語源を探ってみると…その語源は「Do Communications Over The Mobile Network - 移動通信網で実現する、積極的で豊かなコミュニケーション」という壮大なメッセージの略称であることがわかります。おそらくネーミングを決めた方は、「社内 (特に旧電電公社の偉い方々)を説得しうる筋の通った論理」と、「お客様が実際に使いたくなる、近寄りたくなる顧客体験」を複眼で捉えながら、この名称に行きついたのだと考えられます。そう考えると、このネーミング、画期的かつ天才的じゃないですか?

この「NTT DoCoMo」ですが、2008年に「NTT docomo」とロゴをすべて小文字かつ赤一色にリニューアルします。おそらく当初の「社内説得」という役割を終え、さらに親近感を求められる時代に応えるためリニューアルを行ったのだと思います。

ドコモの新旧ロゴ

ネットサーチをすると、デザイン観点で旧ロゴの3色のラインを評価する声が多く、ロゴリニューアルによってドコモという言葉が生み出す音感や不規則性が失われたことを惜しむ声も多々ありました。スマホの普及に伴い、ロゴは「印刷媒体で映えるデザイン性」よりも「スマホでも目に入る視認性」が優先されるようになっています。そんなデザイントレンドを超越して、この名称が今もなお人々の心の中に刻まれていること自体を私は嬉しく感じます。

散々「ドコモ」を称賛してきました私ですが、残念ながらドコモユーザーでありません… その理由については、近いうちにお話します。

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