花の遺書

あの花が散るように

私という花も散るでしょう

でもこれは悲しいことじゃない

散って風にまう花びらが

人々から美しいと言われるように

私の死というものもまた

美しいものだと思うのです

悔いのない人生でしたからね

春風にまう花びらが

どこかの誰かに舞い降りていくように

私の魂の花の風に舞う花びらも

あなたの元に届かせましょう

だからどうか悲しい顔をせずに

笑って見送ってほしい

私という花はいつでもあなたの心の大地に

咲いています

私という花の願いはただ一つ

どうか私の後に続くものたちよ

大きく強く咲き誇ってほしい

どんなに吹かれてどんなに踏まれて

どんなに育ちにくくても

何にも負けず

私は咲くのだと

命の大輪を咲かせてほしい

私が美しく死んで散っていくのを

あえてあなた達に見せるのは

悲しい思いをさせたいだけではないのです

こうやって美しく散るために

美しい花を用意しないといけないのだよと

教えているわけでもあるのです

だからね

私が育てた花達よ

私と育った花達よ

私の死すらも超えていけ

もっと強くもっと太く茎を育て

もっと長くもっと深く根を育て

もっと大きく葉を伸ばし

あなたという花を美しく咲かせなさい

理不尽なことも多いでしょう

うまくいかないことも多いでしょう

けれども進むことをやめないで

なんでもやってみてほしいのです

たくさんの経験はあなたをより大きく育てる

肥料のようなものなのだから

辛いことも悲しいことも越えていけ

風に揺られ笑ってやれ

それではそろそろ私も散り終わる頃です

最後になるけれど

私の周りの環境よ

私を育ててくれた全てのものよ

今まで私という花を愛してくれて

育ててくれてありがとう

おかげでこうして美しく散れそうです

このまま天まで舞えそうです

本当にありがとう

全てに愛を伝えます

愛してます

さようなら


野原の一輪より

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