財金協調型の名目GDP水準目標政策のすすめ
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いわゆるインフレ目標政策については、安倍政権のアベノミクスにおいて注目を浴びたため、経済政策に関心のある層ではよく知られていることと思います。
当noteにおいても、なぜ異次元緩和が失敗に終わったのか、及びアベノミクス(ないしリフレ派)の理論、及びその欠陥(マニアック)の方で、マクロ経済政策におけるインフレ目標政策の理論的構造について解説しました。
これに対して、名目GDP目標、特に名目GDP"水準"目標というのは、インフレ目標ほどの注目や議論を集めていないように見えます。
しかし、これから解説する様々な点において、実はインフレ目標よりも名目GDP水準目標(Nominal GDP Level Target、略してNGDPLT)の方が優れているのです。
一部にわかりやすくするための図解を交えつつ、以下の章立てで論じていきます。
①率目標(インフレ率or名目GDP成長率)と水準目標はどちらが優れているか
②物価水準目標と名目GDP水準目標はどちらが優れているか
③なぜ財金協調型である必要があるのか
関心のある方はぜひご購読おねがいします。
①率目標(インフレ率or名目GDP成長率)と水準目標はどちらが優れているか
インフレ目標は、その名の通り物価水準上昇率の目標を置き、それに応じたマクロ経済政策を宣言する政策です。
これを名目GDPに当てはめるなら、普通は名目GDP"成長率"目標になりそうなものですが、なぜ成長率目標ではなく、水準目標の方が望ましいのでしょうか。
……実は、名目GDPだけでなく、物価についても、本来は上昇率目標(インフレ目標)より水準目標の方が好ましいのです。
その理由は至ってシンプルです。
高すぎもせず、低すぎもせず、かつ安定的なインフレ率ないし名目GDP成長率が望ましい場合、必然的に「理想的な上昇・成長経路」が存在する、ということになります。
そこで、仮に率目標を掲げる中で短期ショック(リーマンショックのような大きな金融危機や、拙劣なマクロ経済政策による一時的な目標未達)があった場合、下図のような状態になります。
図の通り、短期ショックのあとに、上昇率ないし成長率が戻っても、元々の理想的な経路を下回ったままになってしまうことになります。
人々が生産や消費などの水準を決定する際は、将来のある時点での物価水準ないし名目GDPの予想が重要になります。(もっと厳密にいうと、各人にとっての身近な商品や売り物の価格、及び名目所得の予想が重要で、それを国内で総計すると物価水準と名目GDPの予想になる、というところが本当ですけれども)
しかし、短期ショックの影響がリカバリーできないなら、将来の物価水準ないし名目所得水準の予想はまだまだ不安定なままになってしまうことになります。これでは率目標は、総需要とその成長を安定化する政策として大きな欠陥を抱えていると言わざるを得ません。
これに対し、水準目標を設定した場合は、下図のようになります。
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