「抱っこ食べ」ってどうするの?(後編)
前回は「抱っこ食べ」の前期、
大人が主導で子どもに食べさせていく時期について書きました。
今回は「抱っこ食べ」の後期、
だんだんと大人主導から子どもが主体的に食事に関わっていく
段階について書いてみたいと思います。
子どもの意思が出てくる
「抱っこ食べ」の前期では、
大人が介助スプーンで子どもの口にご飯を運んであげていました。
それが成長とともに少しずつ子どもの様子にも変化が見られてきます。
それまでは介助する大人が口に運ぶままにご飯を食べていたのが、
自分が食べたいと思ったり興味をもったりしたものに手が伸びたり、
指をさしたりするようになってくるのです。
こうして子どもの意思があらわれてくると、
それに応えるかたちでご飯を介助していくようにします。
手が伸びたり指差ししたりして
食べたそうにしているものを食べさせてあげたり、
介助スプーンですくう前にどれが食べたいか聞いてあげたり。
まだ自分で食器をもって食事することはできなくても、
主体的に食事に関われるようにしてあげます。
「手づかみ食べ」はおすすめしない
ここでひとつ気をつけておきたいことがあります。
この食べ物に手が伸びてくる時期に、
そのまま手で食べ物をつかませて食べさせてしまうと
いわゆる「手づかみ食べ」になってしまいます。
「手づかみ食べ」は食べる意欲を促進するだとか、
食べ物の感覚を手でも感じられるだとかいった具合に
肯定的に捉えられることもあります。
ですが、えてして「あそび食べ」につながっていきやすい上に、
食べこぼしなども多く、テーブルも床も服も体も
ぐちゃぐちゃに汚れやすいです。
また、手でつかんでいるうちに色々と混ざってしまい、
結局子どもが自分自身なにを食べているのか
わからなくなってしまいがちです。
「手づかみ食べ」をしなくても、ちゃんと食べる意欲は育ちます。
手の触覚は、他の時間に感覚遊びをすればいいだけのこと。
わざわざご飯の時間に、
ぐちゃぐちゃに汚れてまで食べ物ですることはないはずです。
ということで、ConoCoでは「手づかみ食べ」はおすすめしていません。
「手づかみ食べ」じゃなく「手つまみ食べ」
そのかわり「手つまみ食べ」をするようにしています。
咀嚼しやすいかたさに茹でたり蒸したりした野菜を
サイコロやスティック状にしたものをすこし用意し、
それをご飯とは別皿に盛っておいてあげます。
そして子どもが好奇心から食べ物に手を伸ばそうとしたときには、
それを手でつまませてあげるのです。
これだと形を保ってつまめるようなものなので、
手で握ってぐちゃぐちゃにすることなく口に運ぶことができます。
このとき、あくまでもメインのご飯は介助スプーンで食べるようにします。
こうすれば子どもは食べ物を自分の手で
口にもっていきたい欲求も満たされますし、
「手づかみ食べ」のクセがついてしまうこともありません。
この「手つまみ食べ」は、子どもが自分で食器を使って食べ始めたら
おしまいにします。
大人のスプーンの使い方を追体験する
さて、食べたいものに子どもの手が伸びてきたり
指差ししたりする時期が進むと、
今度は大人が持っている介助スプーンに
手を伸ばしてくるようになります。
はじめは介助スプーンに手を添える感じだったのが、
やがて介助スプーンを大人と一緒につかんで
口の方まで持っていくようになります。
この「一緒に介助スプーンを握って口まで運ぶ」という行為が、
子どもが食器の使い方を身につけていく上でとても重要なのです。
大人が操作する介助スプーンを一緒に握ることで、
子どもは大人の動きを追体験することができるのです。
ご飯のすくいとり方、スプーンをいれる角度、すくう量、口への運び方。
大人のスプーンの使い方を追体験していくことで、
子ども自身が自然とスプーンの使い方を身につけやすくなるのです。
自分のスプーンを持ってみる
こうして最初から最後まで
子どもが介助スプーンをつかんで離さなくなったら、
いよいよ自分専用のスプーンを用意するときです。
このスプーンは大人が持つ介助スプーンとはちがって、
まだ手の機能が完全に整っていない乳児のための乳児用スプーンです。
選ぶときには見た目や可愛さでなく、機能で選んであげてください。
おすすめは、柄の端の方に重心があって全体的に重みがあるため
赤ちゃんが握りこみやすい構造になっているステンレス製のもの。
軽いもののの方がいいのでは?と思われるかもしれませんが、
赤ちゃんはまだ手の力も十分に発達していないので、
重みのあるものの方がコントロールしやすいのです。
自分のスプーンと介助スプーンの両方で食べる
この乳児用スプーンを、上から握りこむように持たせてあげます。
このときの子どもは、大人のスプーンの使い方を追体験し、
ある程度は自分でスプーンを使って食べだせるものの、
まだひとりで最後まできれいに食事を終わらせることは
むずかしい状態です。
完全に子ども任せにするのではなく、大人も同時に介助スプーンを持って、
子どもの集中力が切れる前にテンポよく食事を進めていくようにします。
子どもが自分ですくって食べる合間に
タイミングよく介助スプーンでも食べさせてあげたり、
子どもがすくいやすいように介助スプーンを使って
具をお皿のふちに集めてあげたりと、
10分~20分くらいで気分よく食事が終わるようにフォローします。
「抱っこ」からイスへの移行
自分のスプーンを持って、
しっかり集中して15分ほどで食事を終えられるようになって…。
となると、次はいつ「抱っこ」の状態から
卒業するのかが気になりますよね。
「抱っこ食べ」からひとりでイスに座って食べる状態に移る目安は、
「歩く」ことにあります。
つかまり立ちからつかまり歩きを経て、
なんとかひとりで歩けるようになってきた頃が移行の考え時です。
イスで座って食事をするには、
自分の体を自分で支えてコントロールできることが重要なのです。
「歩く」ことができるようになり、
おもちゃなどであそぶときにイスに10分ほど座ってあそべているか、
確認してみてください。
どちらもできていたら、
まずはオヤツの時間からイスに座って食べることを試していきます。
オヤツが上手に食べられたら、次は食事へ。
そんな風に、焦らずすこしずつイス食べに移行していきます。
個人差が大きいときなので焦らない、急がない
介助スプーンに手が伸びるのも、
自分で乳児用のスプーンを持てるのも、
イスに座るのも、
この時期はほんとうに子どもによって個人差が大きいときです。
焦って先に先に進めようとするよりも、
子どものペースにじっくりと付き合ってあげてください。
ここで丁寧に向きあうことが、
子どもに適切な姿勢、正しい道具の使い方で
上手に食事ができる力を育むことにつながるのです。