
人を育てる真髄 「 信じて、待つ 」
今回は前回の記事でご紹介した ConoCoの保育手法、aibase保育の詳細を説明します。
aibase保育は保育をする上で大切にしたい6つのコンセプト「 accept 」「 individualize 」「 believe & wait 」
「 attachment 」「 socialize 」「 environment 」の頭文字を繋げた造語です。
今回は3番目の「 believe & wait 」をご紹介します。
「 自分でやった方がはやい 」という罠
仕事をしていると、人に任せるよりも自分でやった方がはやいし確実だと思って、なんでも自分でやってしまうことはないでしょうか。
その結果、長い目でみると人が育っておらず、結局は自分で自分の首を絞めることになる。
多くの人が似たような経験をおもちではないでしょうか。
学生さんでもバイトやサークルで経験することもあるでしょう。
先回りがうばう成長の機会
じつはこれと同じことが、育児でもいえるのです。
たとえば、出勤時間がせまり、ただでさえ時間がない朝。
8時には出ないといけないのに、子どもたちがマイペースに準備するのなんてまっていられない!子どもをせかしてイライラするのもいやで、ついつい代わりにぜんぶの準備をやってしまっている。
そんなことありませんか?
ひとりでは靴下になかなか足がとおせなかったり、右足と左足、間違えて靴をはいたり…。忘れものはない?あれ入れた?これ入れた?確認しても忘れものをしていたり。大人からしたら絶対うまくいかないだろうとわかることをしようとしたり、痛い目をみて泣くだろうなということをしようとしたり。
大人からみたら子どもなんてまだまだできないことだらけ、なにをするにもまだるっこしかったり、あぶなっかしかったりしますよね。
そんなとき、ついつい先回りして動いてしまう、その気持ち、よくわかります。
でもこれ、さきほどの仕事の例と同じ。
子どもの成長の機会をうばってしまっているんですよね。
人を育てる「 believe & wait 」の姿勢
子どもたちはいつの日か親元を離れてひとりで生きていかなければならなくなります。いつもいつまでも、親やまわりの大人が先回りをしてあげることはできません。
なにが待ち受けているのか、先の見えない未知の世界を手探りで生きていかなければいけないのです。
そしてその時に必要になってくるのが、自分で気付き、自分で考え、自ら行動する力です。
人間は、経験することでしか学べません。
経験することでしか、さまざまなものも向上していきません。
自分で実際に行動する機会を与えられ、未知のことに挑戦するという姿勢を肯定されないと、なにかをやろうという意欲も育ちません。
だからこそ、子どもたちを育てるにあたって大切なのが、「 believe & wait 」という姿勢、「 その子の力を信じて、待つ 」ことなのです。
すなわちそれは、一人ひとりの子どもの成長の機会をうばわず、そのときどきの必要最小限の支援でもって、子ども自身がもつ力を引き出すことです。
それが保育のなかで、ひいては人を育てるなかで必要不可欠なことではないでしょうか。
「 信じる 」こと、そして「 待つ 」こと
こうして言葉でいうのは簡単ですが、でもこの「 待つ 」こと、その子・その人を「 信じる 」こと、実際はめちゃくちゃにむずかしいことです。
最初の仕事での例の続きになりますが、人が育たないことがわかっていてもなお、かぎられた時間や失敗のリスク、成果とのせめぎあいで、だれかに任せることを悩むことも多々あると思うのです。
間に合わなかったらどうしよう。
失敗したらどうしよう。
思ったような結果にならなかったらどうしよう。
信じて待つことは、つねにその葛藤とのたたかいです。
「 待つ 」ということは、相手にまかせてただ放っておくということではありません。
一人ひとりによってちがう手助けのタイミングを見逃さないように、じっと見守ることです。
失敗することもふくめて、相手に経験する時間を与えることです。
こちらに余裕がないとなかなかできることではありません。
( ですから保育園のスケジュールに行事や習いごとがつめこまれていればいるほど、これはむずかしくなります。)
そして「 信じる 」ということは、相手の可能性を認めるという決心にほかなりません。
できるできないの結果で判断して見捨ててしまうことなく、未来を信じて相手を受けいれる覚悟のようなものです。
( これは「 ありのままを受けいれる 」ということにもつながります。)
人を育てる真髄
信じること、待つこと、どちらもこちらの度量と忍耐がためされることです。
一筋縄ではいきません。
ですが、だからこそこうして「 信じて、待つ 」という相手への覚悟が伝わったとき、相手との信頼関係がかたく結ばれ、それが安心していろんなことに挑戦しようとする心もちの土台になっていくと思うのです。
そしてそれこそが、未来を生きぬいていくためのその子自身の力を引きだすという、人を育てる真髄ではないでしょうか。