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ミステリー小説ロンドの旅Chap4.ユールマラの事件1.羨望

ある子供は幼い頃からゲームのプログラミングが得意だった。主人公を操作して、仲間を集め敵を倒し装備を充実させ、彼らを成長させながら物語を進めていくロールプレイングゲームというジャンルの作品は特に秀でていた。

やがて、大人になりSNSが流行し始めると自作のゲームを動画で実況配信するようになる。視聴者はこれまでプレイしたことのないゲームの世界観やストーリーに釘付けとなり、瞬く間に各国にファンができ、一躍世界的に有名なインフルエンサーとなった。その後、ゲーム自体の秀逸さだけではなく優れた実況力も高く評価され、さまざまな言語のテロップをつけたことでさらに世界中へ広まり、登録者数は異例のスピードで5,000万人を突破した。

そんな中、告知がない限りは基本的に毎日していた配信が突如止まった。トップスターとなったいまでも、撮影から編集、配信まで自分1人でやっていることは本当に驚きなのだが、それゆえ突然の停止は顕著にその異変を明らかにする。事務所社長はすぐさま電話をかけ、その後何度かけ直してもが応答はないため、直接自宅を訪れインターホンを鳴らすも一向に返事はない。

家族や友人を当たったが誰も行方を知るものはいなかったので、社長は家族と共に警察へ相談し、行方不明者の届出を提出することとなった。いまや国一番の有名人であるため、混乱を避けるべく非効率的ではあるが失踪の事実を公表せずに捜査が進められている。しかしながら、1週間が経過した今でも有力な情報はなく、このまま進展がなければ目撃情報に期待し公表することも余儀なくされている。

どんなに人気者でもアンチは必ずいるし、成功を妬む者もいるだろう。逆に好きすぎてストーカーとなったり誘拐したりと、職業柄、無限の可能性があるためこの線で犯人像を割り出すのは困難である。なお、ずっと家でプログラミングに熱中していて引きこもりがちであったため交友関係は多くなく、今のところ過去にトラブルらしいトラブルに巻き込まれたという事実は報告されていない。そのため、最後に接触したと思われる人物を突き止め、その時点以降の動向を追うという方法で手がかりを得ようとしているが、思うように進展はしていないようだ。

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