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魂の言葉
サードマン現象
「サードマン現象」という言葉をご存知でしょうか?これは、登山家やダイバーなどが極限状態で経験する現象の一つです。命の危険に晒された時、実在しないはずの第三者が突然現れ、正しい道を示して救われる――科学では説明できない不思議な出来事です。
この現象は、人生においても起こり得ると私は感じます。思いも寄らないタイミングで、自分の迷いや苦しみを晴らす存在が現れる。しかし、その存在に気づけるかどうかは、私たちの視点と心構えにかかっています。
窮地に追い詰められた私
私の人生にも、心が折れそうになる時がありました。それは、信じていたものをすべて失った時期です。目の前の状況に対する焦り、未来への不安、孤立感。自分の視野が狭まり、感情の嵐に飲み込まれ、冷静さを欠いていました。
「どうして自分だけがこんなに苦しいのか?」
「なぜ誰も助けてくれないのか?」
そんな問いを抱えながら、どんどん深い迷路に入り込んでいったのです。周りにいた人たちも次第に離れていき、私は孤独の中でますます自分を責めるようになりました。
転機となった出会い
そんなある日、偶然にも古くからの知り合いの先輩と再会する機会がありました。彼は私の様子を見て、ただ一言、「最近、大変そうだね。どうなの?」と声をかけてくれました。その言葉は、私にとってまるで枯れた土に落ちる一滴の雨のようでした。
彼に現在の状況を正直に話すと、彼は穏やかに、しかし核心を突くように語りかけてきました。
「茂木君、それじゃダメだよ。同じ失敗を繰り返してしまう。自分と向き合わない限り、何も変わらないんだよ。」
私は心の中で、「どうして自分と向き合っていないと言えるのか?」と反発しかけました。しかし、同時に「本当に自分と向き合えているのか?」と問い直すきっかけにもなりました。
彼は続けました。
「君が一番大事にしているもの、そこに気づいていない。そこを外してしまったら、どれだけ頑張っても意味がない。」
その言葉は、私の胸に深く刺さり、目の前に一筋の光が差し込むような感覚を覚えました。
魂の言葉が私を救った
彼の言葉は、ただの助言や指摘ではありませんでした。それは、彼自身の心の奥底から絞り出された「魂の言葉」でした。
彼は私の目を真っ直ぐに見つめ、涙を浮かべながら話し始めました。静かな部屋の中で、彼の声はまるで私の心の奥深くに直接語りかけるように響いていました。
「茂木君、君は今、周りが見えなくなっている。本当は大事なものが目の前にあるのに、それを見失っているよ。」
彼は言葉を選びながら、一つ一つ丁寧に語り続けました。私がどのように自分自身を苦しめ、周囲に壁を作り、大切なものから遠ざかっているのか。それを彼は自分の目に映るままに、正直に伝えてくれました。
「君は焦って、必死に何かを掴もうとしている。でも、その手で大事なものを壊していることに気づいているか?」
彼の声は静かでしたが、どこか悲しみに満ちていました。その悲しみが、まるで自分自身の痛みを映し出しているように感じられました。
「僕が君に教えられるのはここまでだ。でも、これを直せるのは君自身だけだよ。」
その言葉を伝えながら、彼の目にはさらに大粒の涙が溢れていました。手で拭おうとせず、そのまま流れる涙は、彼の真剣さを物語っていました。
「自分自身の中心にあるもの、それをしっかりと見つめ直してほしい。それを外したら、君は何をしても空回りする。」
彼の声は時折震え、しかし決して弱さを感じさせるものではありませんでした。それは、深い思いやりと強い信念の込もった声でした。
私はその場で、何も言葉を返すことができませんでした。ただ、彼の目を見つめるだけで精一杯でした。その瞳には、私に対する失望ではなく、むしろ期待と信頼が込められているのを感じました。
「茂木君、君ならできるよ。僕はそう信じている。」
彼がそう言った瞬間、私の中で何かが崩れ、そして何かが立ち上がるのを感じました。自分がどれほど浅はかで、視野が狭くなっていたのか。彼の言葉が私の心に突き刺さり、自分を見つめ直すきっかけとなったのです。
光明の先に
現在も私は困難の真っただ中にいます。しかし、彼の言葉をきっかけに、「どんな結末になろうとも後悔しない」という覚悟が芽生えました。そして、自分自身に正直でいることの大切さを改めて感じています。
「サードマン」は、ただの偶然や奇跡ではありません。それは、私たちが真摯に向き合い、気づこうとした時にだけ現れるものです。今、私の人生には小さな光が差し込んでいます。その光を見失わないよう、進み続けるつもりです。