看護師のくせに不摂生で死にかけた話

 12月です。
 師匠が走る、という言葉通り、皆さんそれぞれ忙しいと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。
 マラソンやトレランの諸先輩方、師匠たち。めっちゃ物理的に距離的に速度的に走っているんです、これが。そう、これがほんとの師走だ!
 というのを実感しています。

 そうです、私が不肖の弟子です。どうも、こんにちは。
 お前も師匠並みに走らんかい!という突っ込みが聞こえてきそうです。
 来年、2025年は東京マラソンや富士五湖100キロ走るのでちゃんと走ります、ええ。走るつもりです。いや、走っているんですよこれでも。
 STEPN界隈や仲間たちが走りすぎなんです。うん、走りすぎ。
 はい、そんなこと言ってないで鈍足ですが私もがんばります。はい。

 そんな話は置いといて、年末年始って、お酒の量が増えたり御馳走を食べたりと、そんな機会がいつもより増えますよね。
 今年、私はダイエットをして体重を4キロほど落としたんですが、秋までに自分が出たい大会が軒並み終わってしまい、ちょっと気が抜けています。なんとかぎりぎり落とした体重を維持しているんですが、気を抜くと戻りそうです。歳を重ねると体重は落ちにくくなりますよね。
 めっちゃ実感してます。
 まあ、そんな感じで資産ならぬ、体重がATH(All-Time High)!最高にハイってやつだ!って予感を感じている方に向けて。
 
 今日はそう、ランニングを始める直前、まるまるとした、それはもう不摂生の塊を身にまとっていた私の過去の話です。
 医者の不養生ならぬ、看護師の不養生の話をしたいと思います。

 健康こそ全て!みんな元気になろう!一日8000歩以上歩こうよ!
 さあ、今こそSTEPNで歩いてみんな健康になろうぜ!
 健康ロングこそ日本人の生きる道!

 とかいつも言っている私ですが、自分自身、そんなに人様に言えるような健康な生活を送っているのかといえばそうじゃなかったりします。
 人にえらそうなことを言う前に自分をどうにかせんかい、と思わせる戦法で相手の懐に入ります。私の持ち味です。良いように言えば、人間味を武器に、相手と腹を割って話す看護師です!
 そうです、私が意識低い系のダメ人間です!

 まあそんなわけで、大酒飲み、ジャンクフード、甘い物、炭水化物大好き、運動はする!けど、しんどいことはしたくない!
 という人間であることをこの度、懺悔をもって告白し、年末年始に向けて暴飲暴食気味になるであろう皆さんにとっておきのネタを。
 また恥を忍んで私の過去を、笑えない笑い話をネタにしようと思います!
 お付き合いくださいませ。

 さて、過去に一体、何があったのか。
 今からおよそ10年ほど昔の出来事です。
 まだ30歳くらいの小娘だった私ですが、急性膵炎になりました。

 時は1月、お正月の暴飲暴食三昧を経たあとの話です。
 その直前の12月に引っ越しのため仕事を退職し、子どもは保育園が決まり、次の職場に出勤するその時まで、家で人生の夏休みを謳歌してやろうとのんびり酒浸りの日々を過ごしていました。
 そうです、酒に浸ってました。私とお酒を飲んだことがある方はご存知とは思いますが、私は割とビールなら何時間だろうかずっと飲み続けます。

 そんなやつが一日中暇になったら何をするか。
 昼から500mlの缶ビールを開け、パソコンの前に陣取り、当時流行りだしたYouTubeを見て一日中笑ってました。暇人の行きつく先です!
 好きなものは甘いもの!
 朝晩はちゃんとするにしても、一人の時は炭水化物祭りだ!
 体重?気にしたら負けだ!
 ビールにはやっぱり揚げ物だ!ひゃっはー!
 
 改めて文章にすると、ひどい生活ですね。ウケる。

 1月、ある日の夜22時過ぎ。当時まだ幼児だった上の子をお腹の上に乗せて一緒に寝ていたらですね。
 突然の胸部~背部の激痛でいきなりベッドから落ちました。
 言葉にできない、そう本当に言葉にできーなーい、っていう感じです。
 まず最初に考えたのは、当時13キロくらいだった上の子が重りになって、肋骨が何本か一気に折れたんだと思いました。
 今考えたらほんとうに意味わからんです。人間の骨がそんなことで折れるわけがない。

 痛すぎて、本当にのたうち回るってやつを経験しました。
 何がなんだかわからない、今、自分は恐ろしいものの片鱗を味わっているぞ、と頭の中で現在進行形ポルナレフがリフレインします。
 痛すぎで思考はまとまりません。が、一応そこは看護師なので自分で脈を取って心臓由来じゃないってのは確認します。
 大動脈解離、心タンポナーデ、心筋梗塞。
 意識はある。頓死してない、ってことは一撃のスタンフォードA型乖離じゃない、そういったやつじゃない。
 大丈夫、まだ慌てる時間じゃない。
 いや私の中の仙道よ、ちょっと待って。
 心筋梗塞のカテーテル治療のゴールデンタイムは6時間だっけ!?時間制限あるやん。循環器内科の先生は梗塞疑いは救急車が病院に現着してから20分以内にカテ室に運び込め!って怒ってたなあ。
 いやいやちょっと待て、私は心疾患ではない、何故なら脈を正常かどうかはもはやわからんが、ちゃんと確認できるからだ!
 って思ったら心臓由来のやつってもっと痛いのか、もっと患者さんには優しくしてあげよう、うん。

 とか原因を考えるんだけど、痛すぎて全く正解に辿り着けない精度の悪すぎるアキネイターみたいな思考になってました。のたうち回り、どうにもならないと思いながらもなんとかせねばとは思うんですよ。
 で、痛みで呻く母を見て隅っこで震える我が子を安心させようと、貞子のように手を伸ばす。いや、普通に上の子怖がってましたね。

 この時、まだ配偶者だった人は一応いたんですけど仕事で帰宅してなかったです。なので、母一人子一人でなんとかせねばと思うんですけど、本当に痛くて立てない、話せない、動けない。
 なんとか携帯に手を伸ばして当時配偶者だった人に電話して助けを求めたんですけど、通話開始してすぐ、これだめなやつだって素人でもわかる状態だったらしく、私のこと見てないのに救急車呼んだらしいです。
 息も絶え絶え、同じ単語しかしゃべらない。
 こんなん、私も意識障害起こしていると判断します。配偶者は医療に関しては素人だったのに、よくわかったね!えらい!大正解!って感じですね。

 まあ、そんな感じで救急車きたんですけども、玄関扉が開けられない。配偶者はまだ帰ってきてない。扉を自分で開けねばならない。
「おくさーん!生きてますかー!自分で開けられますかー?」って言ってるのは聞こえている。ただ返事はできない、屍なりかけ。
 玄関までの数メートル、まさに貞子!って感じですね。
 痛くて意識飛ばしたいんだけど意識はある。これ本当に地獄です。
 緩和ケアについて、私が何より重視するのは痛み、苦痛の除去です!ってなるのはこの経験からです。痛みって生物として危険余地の観点から必要な感覚なんですけどね、ぶっちゃけ要らんです!ってなりましたね。

 まあそんなこんなで若年女性の急性腹症で病院に担ぎこまれました。
 妊娠の可能性は?ありません、なんか既往歴は?ないです。
 とかまあよくある問診に答えていくことでやばい疾患とか排除し、明日の朝までこの人が命を繋いでいるかどうか、というのを拾っていくのが救急のお仕事なんですよね。
 心電図撮ってみて、うん綺麗だね。じゃあ一応採血はするけど。まあ何もでないと思うけどね。うん。レントゲンも特に、うーん。なにも。
 って感じで診察は進んだんですけど、そしたらですね。

 便秘じゃない?

 って最初、診断されたんですよね。うっはーマジかよってなりました。
 まあ消化器外科にいた看護師なんで、腸閉塞めっちゃ怖いの知っているし、便秘を甘く見ているわけでもなんでもないんですけども。
 診察用のストレッチャーの上でも、のたうち回るか、静かに丸まってるかしかできないくらい痛いし、この時点で冷や汗だらだらで気持ち悪いってなってたんですけども。
 こんなん便秘でなるんかーってか腸閉塞気味ってことかー。
 とか思ってる間にストレッチャーの上で浣腸されました。
 ぎゃーとか言ってる場合じゃなかったです。痛すぎて動けないのでされるがままです。
 まな板の上の鯉!ストレッチャーの上の急性腹症の便秘患者!

 みなさん、浣腸ってされたことあります?
 浣腸液ってグリセリンなんですけどね、入れてからすぐトイレいきたくなるようにできてるんですよ。もう激痛で死ぬかと思ったのに、便秘だと思われているから痛み止めもしてくれないし、なんならそこからトイレまで歩かされるっていう。
 出るもんもでねーわ、もう意識飛びそうやがなーってトイレで丸まってたらですね。
 そこから看護師さんが慌てて車いす持ってきてくれまして
「あの、ちょっと本当に申し訳ないんですけど、採血の結果ね、あのね、入院ですわ」
って。
 便秘で入院とかしたくねえなあ、けどいいネタできたのかもしれんなあって思いましたね。
 まあ救急車できてるし、こんだけ痛いってのは腸閉塞なんかなー、気持ち悪いし、なんなら今吐きそうなんですよねえ。って診断は知ってるけど伝えられなくて苦笑いしている看護師さんに伝えたりしてるうちに診察室に戻されました。
 あの看護師さんの微笑みは多分、浣腸してごめんねの苦笑いだったに違いない。

「旦那さんから聞いたんだけど、あなた看護師さんなんだってね。僕耳鼻科が専門だからちょっとわかりにくかったんだけど、浣腸してごめんね。今消化器の先生呼んでるからね。なんでかって、あなた膵臓溶けてるよ。アミラーゼ4000あるし、ほら、このCT見て?膵臓ってここにあるのはあるけど、なんかまあ、溶けてるね」

 というわけで、危うく便秘の診断で帰されそうだったんですけども、急性膵炎の診断がつきまして、無事?入院となったわけです。

 で、入院した直後に嘔吐してます。まあ今更ですが、汚い話その日の夕飯の残渣だったんですけど、思い返せばかつ丼食べてたんですよ。
 お酒は珍しく飲んでなかったんですけども。
 脂モノ、まあかつ丼がトドメで急性膵炎を発症したわけです。

 後輩に、串あげ食べまくって膵炎になった人もいます。
 急性膵炎の原因でよく言われるのが、酒とあぶらもの。不摂生の代表!って感じですよね。
 若い女性の時は遺伝性だったりすることもあるので遺伝子検査とかもしたんですけど、まあ私の場合は完全なる不摂生です。

 そうです、みなさん、あぶらと酒!この二つは急性膵炎を起こすめちゃくちゃ危険因子です!!

 最初、ショックバイタルになりかけてるから末梢血管全然でなかったんです。全然運動してないし、白豚?って感じのぶにぶに体型だったんですよね。急性膵炎は点滴しまくらないといけないんですが、血管がまったくでなくて両腕に点滴されてたんですけども、入れるところなくなって最終的に両手の指に点滴入れられてました。
 私が看護師だって知ってるもんだからみんな超遠慮しまくりでしたね。申し訳ない。正直、私は刺しまくってもらっても全然かまへんのですけどね。新人さんが担当している時に点滴漏れた時には、手を震わせながら入れ替えしようとしてくれましたね。
 私が白豚系だったがために申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 それから三日後――。
 ってなるまで私の意識はほとんどありませんです。
 なぜなら痛すぎて結構きつめの鎮痛剤打ちまくりだったようです。
 その間、お見舞いにきた人々は涎たらしながら呻いて寝てる姿しか見てないそうです。

 配偶者は結構厳しめの説明されてました。
 危ないよ、急変リスクあるよ。本当はおっきな病院、ICUのあるところに転院して全身管理してもらった方がいいから転院しようって。
 けど、それ私が嫌だって言ったらしいです。

 移動するのしんどい、どうせ今のところ、点滴しかしないだろう。今はちゃんと尿量保たれてるし血圧下がってない、腎不全、心不全の兆候でてきたらまた考える。アミラーゼの下がりが今一つ悪いのはもう少し様子みてくれ。呼吸苦しくなったり、血圧下がったり、動脈まで溶かして大出血して急変したらその時はその時でいい。医療費削減大事!
 ICUまでいったら余計な金がかかる。
 って自分でちゃんと話したそうです。本人、覚えてないんですけどね!
 まあ、厄介で迷惑な患者だったかもしれませんが、ちゃんとそのあと回復しました!
 一か月入院しましたけど、無事現世に帰ってきました。

 と、まあこうやって今なら笑い話にできるんですけど、入院中に先生に言われたんですよね。
「痩せた方がいいね。太ってると脂肪を燃料にして炎症ひどくなるよ。火事って油まいてあるところってなかなか消化できないでしょ」

 と、まあ長くなりましたが、これが私のランニングを始めるきっかけです。
 退院してから、体力落ちまくっていた自分に鞭を打って少しずつ走り始めました。最初は2キロ程度でぐったりしてましたけど、2年ほどかけてフルマラソンに出られるまでに元気になりました。
 体重は5キロほど落として、軽く筋トレもするようにもなりました。
 酒は入院後は一年断ちました。まあ、今また飲んでるんですけどね。
 昔ほどずっと毎日はのまないようにしてます。

 膵炎になったお前の膵臓は皮のない明太子みたいなもんだ!
 言っとくけどな、CTで評価したらお前の膵臓はおよそ5分の1が溶けて無くなっているんだからな!とのことです。

 まあ、爆弾抱えているようなもんな気はしています。が、10年以上、再発せずにやってこれました、よかったです。
 これからも酒を完全に断つことはしないで、ほどほどに付き合いつつ、人生を楽しみたいと思います。
 そのために、STEPNもつづけて、健康ロングだ―!
 って言い続けられるように、みなさんもあの世界三大疼痛と言われている膵炎の痛みを味わわないで済むように、との祈りを込めて。

 運動もしながら!
 ほどほどに年末のごちそうやお酒を楽しみましょうね!
 


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