痔瘻根治術(じろうこんちじゅつ)を受けた話【発症~手術編】
はじめに
これは私が実際に受けた手術とその治療の過程の記録および忘備録です。
痔瘻の外科手術の話はよく見かけるものの、痔瘻根治術(シートン法)のことはあまり見かけないので書いてみることにしました。
排泄部位の手術の話ですので、汚物等の記述が多めです。ご了承ください。
痔瘻の治療法は複数ありますが、こういう治し方もあるんだ、と選択肢が広がる読み物になっていれば幸いです。
そもそも痔瘻とは
私も自分自身が患うまで「痔瘻?それってなんですか?」程度の認識でした。
私が医師から聞いた説明では、
“直腸から肛門の間に漏斗のように窄まっている部分があり、その窄まっているところあたりに何らかの原因で穴が開き、その穴がおしりの外側などに向かって管状となり、その管の底に膿が溜まる現象が痔瘻。”
ということでした。
…自分の文章能力のなさにガッカリする説明となりましたが、このあたりはインターネット等で分かりやすい説明や図解を見ていただくことをおすすめします。
かくいう私も、医師から聞いてもよく分からなかったのでいろいろと検索しました。
今も理解したつもりでいるものの、その理解とこの記述が100%正しいかどうかは不明です。
症状を認識した経緯
違和感を覚えたのは2020年の7月下旬、排便時に肛門付近の一部分が膨らんでいることに気付きました。
大きさの範囲としては500円玉くらいだったでしょうか。
痛みはないもののその膨らみを押しながら肛門を拭くと、トイレットペーパーに白っぽい液体が付着していて、明らかに異常な体液が出ていると自覚しました。
また、肛門すぐそばに小さく腫れている箇所があり、そこは触れるとやや痛みがありました。
(腫れている箇所は痔瘻とは関連性のない別の疣痔であることが受診時に判明しました。)
受診を決めた経緯
異常な体液が出ていることと腫れている箇所が気になり、インターネットで検索すると痔かもしれないと行き当たり、市販薬で治りそうにないので、これ以上症状が悪くなる前に病院へ受診しようと決めました。
この段階では痔瘻とは分かっておらず、異質な症状=何らかの病気、という認識でしかありませんでした。
医院の選択について
そもそも何科に行けばいいのかすら分からず、以前大腸スコープを受けた泌尿器科を思いついたものの、少し調べてみると肛門科が適切のようなので居住市内の肛門科を調べてみることに。
しかしながらインターネット検索に挙がる医院が少なく、院内の雰囲気と治療方針が分かりやすく記載されていた今の主治医の医院へ行くことにしました。
初診時の診断
診察を受けてすぐに医師から「これは痔瘻なので完治には手術が必要です。」と診断されました。
またその際に一時的な処置として、肛門付近の膨らみ=痔瘻による膿溜りの箇所に、体表から小さな穴を開けられました。
穴からは少しずつ膿が出るようになり、入浴時などに穴から膿を絞り出すよう指示がありました。
痔瘻根治術の説明(メリット・デメリット)
一般的な痔瘻の手術法は、痔瘻により出来た管状の穴を切開する外科手術(開放術と言われているそうです)で、回復まで短期間で済むものの肛門の変形が少なからず現われ、肛門の締まりが悪くなったり排便が上手く出来なくなるなどの後遺症が残るとのことでした。
一方、痔瘻根治術はその後遺症はほぼなく、再発率もごく僅かとのことでした。
そもそも痔瘻根治術は、膿が溜まっている箇所の体表に穴を開けて膿を出し、その穴から痔瘻で発生した管状の穴へゴム紐を通し、その紐の先を肛門から体外へ出し、開けた穴から出ている箇所と縛り留めます。
体はゴム紐を異物と判断し体の外に押し出そうとする能力があるので、その紐を日数をかけて少しずつ絞っていくと、だんだんと管状の穴自体が体の外側へ移動していき、最終的にゴム紐は縛った状態のまま体から自然に抜け、管状の穴そのものもなくなっている、という手術法です。
(ここでまた私の記述が拙すぎるので内容が想像しにくいですね…。致命的に分かりにくいのは百も承知です…。痔瘻根治術、またはシートン法で検索して図解等を確認いただければ幸いです。)
しかしながら痔瘻根治術は完治までに短くても月単位の日数がかかり、術後は日々の自己処置やこまめな通院が必要となります。
痔瘻根治術を選択した理由
一般的な外科手術と痔瘻根治術の説明を聞いて最も危惧したのは、術後の後遺症のことでした。
傷跡のことも含め、元通りに近い形状に戻すことを考えると痔瘻根治術が適切だろうと判断しました。
ただ、当初は術後の自己処置についてあまり理解しておらず、その点を考慮していなかった(語弊を恐れずに言うと、良い意味で医師に自己処置について考えないように仕向けられていた)ことが痔瘻根治術を選択する要因になりました。
執刀医の手術前の診察について
痔瘻と診断され手術を勧められたものの、主治医の医院では痔瘻根治術の手術は出来ないとのことで、別の医師を紹介されました。
余談ですが、比較的通院しやすい主治医の医院を選んだものの、市外の執刀医の医院までは電車通いを余儀なくされました。
些か「話が違う…」と思いながらも執刀医のもとで改めて診察を受けることになりました。
執刀医の診断も痔瘻とのことで、痔瘻根治術とともに小さく腫れていた疣痔の結紮法による処置を勧められました。
また、痔瘻がどのような形状になっているかを調べることになりました。
管状の穴が枝分かれし複雑化する場合もあるとのことで、先日開けてもらった穴から細い針金のようなものを入れて検査をされました。
幸い管はひとつしか見受けられないとのことで、手術の場合はゴム紐を1本入れることになるとの診断でした。
早々に手術を決めた理由
執刀医の話では痔瘻の位置が肛門と膣の間にあり、管状の穴の症状が進み複雑化すると穴が膣に到達することもあり、そうなると治療がより複雑化するので、なるべく早めに手術をしてほしいということでした。
半ば脅されていたようにも思いますが、痔瘻は放置すると最悪癌化するとの話も聞き、早々に手術の予約を入れました。
手術について
2020年8月7日の午後から手術を受けました。
痔瘻根治術は局部麻酔による日帰り手術で、時間は医院に入ってから出るまでに3時間もかかりませんでした。
最初に、痔瘻根治術と疣痔の手術を同時に行うこと、明日以降の数日も経過観察や消毒のために執刀医のもとへ来院すること、本日の入浴は不可で経過が良ければ翌日から1週間はシャワーのみ、更に経過が良ければそれ以降は入浴許可が出る、といったような説明を受けました。
次に緊張を和らげる薬(多分安定剤みたいなものだったと思います)を服用して手術の順番を待ちました。
その後手術室に入り、最初に局部麻酔の注射を肛門あたりに3〜4箇所されました。
手術箇所の感覚が無くなったのを確認されると、膿が溜まっている箇所に開けた穴を拡張して中の膿を掻き出し、例のゴム紐をその穴から管状部分に通して肛門から出して縛り留めたのち、穴自体に消毒液を含ませたガーゼを詰め、最後に結紮法による疣痔の手術をして終了しました。
手術中は局部麻酔がよく効いていて、医師から「今とても痛いと思うけど大丈夫?」と何度も確認されましたが、そこまで痛いと感じなかったことが幸いでした。
余談になりますが、以前背中の粉瘤切除の手術を受けたことがあり、その際は麻酔が途中で切れ、針の感覚がひしひしと分かるくらいの激みを伴う縫合となりましたが、それと比べると今回は「とても強い力が加えられているかな?」程度の痛みで済みました。
手術自体は1時間もかからずに終了しました。
その後点滴をして少し休み、今晩の過ごし方などの注意事項(入浴は不可のこと、アルコールや辛いものなどの刺激物を摂取しないこと、服用薬のこと、着座時は止血をすることも兼ねて穴を圧迫するように座ること、重たい荷物は持たないようにすること、激しい運動はしないこと、排泄時はペーパーを押さえる程度に拭くことなど)を聞いたのち帰宅しました。
少し記憶が曖昧になっているところもあり、順番が前後しているところもありますが、大体の過程はこのようなものだったと思います。
手術直後について
局部麻酔が効いたままになっているので痛みはないものの、“体に穴が空いている箇所がある”という事実に少し動揺していました。
止血剤が効いているため出血はほとんどなく、使用指示があった生理用ナプキンにも血液が少し付着する程度でした。
動揺からくる不安感よりも疲労感のほうが大きく、その日は早めに就寝しました。
手術翌日について
翌日は術後の診察と消毒を受けるため、朝から執刀医の医院へ行きました。
経過は良好でほっとしたのも束の間、開けた穴の消毒および自己処置の説明を受けました。
自己処置の方法は、3センチ×15センチ程度の長さの滅菌ガーゼを消毒液に浸し、滴り落ちない程度にティッシュペーパーで消毒液を吸い取ったのち、ガーゼを端から少しずつ穴に詰め込んでいく、という方法でした。
回数は、平日仕事に行く日なら朝に一度、帰宅後に一・二度、入浴後に一度、といった頻度です。
正直な話「そんなこと自分で出来るわけない!」と震え上がりました。
それでも医師らからは「君なら出来る、大丈夫」と何の根拠もないのに励まされ、なくなくガーゼを詰める日々が始まりました。
手術後については【治療〜完治編】へ続きます。