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要約『銀河鉄道の夜』-ユニゾンの曲を紐解くために-

UNISON SQUARE GARDEN の楽曲『何かが変わりそう』を読み解くにあたって、宮沢賢治の名著『銀河鉄道の夜』を私の主観ではありますが、楽曲において重要な部分を要約させていただきました。

本要約をお読みいただくだけでも、楽曲に対する認識が変わってくると思う(?)ので、ぜひ楽曲の歌詞を見ながらお楽しみください!
特に、楽曲において重要だと思う物語の描写については太文字で記載していますので、そこを中心に読んでいただくだけでも楽しめるかもしれません。また、要約するにあたって、元の作品描写を歌詞に合わせて改変することは極力していません。

※今回「ハルキ文庫 銀河鉄道の夜」と「マンガで読破 銀河鉄道の夜」を読んだ上で記事を執筆しております。


銀河鉄道の夜-要約-

主人公のジョバンニは、家が貧しく、母は病弱で、父は遠洋漁業の漁師のためか家を空けることが多いような家庭でした。そのため自身も働きに出て、生活費を稼いでいるのですが、父が家を空ける期間が長かったためか「父親は罪を犯して投獄されている」と根の葉もない噂を流され、そのことを学校ではいじられ、仕事場でも大人達からからかわれる始末でした。そんな不幸な人生を歩んでいる、10歳前後の男の子が本作の主人公になります。

その彼が唯一心を許せる昔からの友人がカムパネルラという同い年の少年です。彼の家はジョバンニと対照的に父が学者で裕福な家庭で育ち、カムパネルラ自身も賢かったため、周りの同級生からも一目置かれる存在でした。

小さい頃は仲良く一緒に遊び過ごしていましたが、最近はジョバンニが仕事に行っていることもあり、どこかで、お互いを意識はしているものの、関係は疎遠になってしまっていました。

そして、物語はケンタウル祭という、「銀河のお祭り」が行われる日に起きます。

ジョバンニが一人さびしく街を歩いていると、同級生のいじめっ子達とカムパネルラが一緒にお祭りに行く姿が見えました。いつもだったら出会わないように避けて歩きますが、「今夜だけは彼らとすら話がしたい」と思い、近づき話しかけようとしました。しかし、彼らはいつも通りジョバンニを犯罪者の息子のように扱い、からかいます。

ジョバンニは居ても立っても居られなくなり、その場を後にします。その時、カムパネルラは居心地悪そうに引きつった笑顔で同級生に合わせているものの、心の何処かでジョバンニのことを気にかけているのでした。

ジョバンニはそれから無我夢中で街が見渡せる丘まで走り、そこで体を倒しました。街全体を見渡すと、今夜の祭りに人々が浮かれる様子が見えました。さらに、街の外れから"汽車の音"が聞こえ、その列車の中でも人々が今夜のお祭りを楽しく過ごす姿が想像出来てしまうのでした。

ジョバンニはなんとも言えない孤独から、空に眼をやり、夜空の星々に思いを馳せるのでした。


そして、場面は銀河を走る列車の中へと移ります。


ジョバンニは気がつくと列車に乗っており、窓から銀河を見ていました。ふと窓ガラスに映る車内を見ると、そこには見覚えのある少年の姿が目に入ります。ジョバンニがこの異様な状況を尋ねようとすると、カムパネルラはこの状況がさも当然のように、他の友人達は遅れて乗れなかったこと、これから列車は「白鳥の停車場」を目指していることを話しだしました。そう言われて、ジョバンニも、忘れていただけで2人でこの列車に乗ったのだと考える様になります。

ここから、ジョバンニとカムパネルラの銀河を巡る旅が始まるのでした。

一つは、百万年も前の地層や植物が存在する変わった停車場のお話が、
一つは、鳥が降る場所で、鳥をお菓子することが出来る変わった鳥を捕る人のお話が、
銀河を走る鉄道と二人を中心に繰り広げられます。

そうして、少し変わった銀河を巡る旅をしている中で、車掌が巡回してきて、目的地を記しているであろう切符を見せるように言います。
カムパネルラは、ごく普通に持ち合わせている切符を車掌に見せますが、ジョバンニは自身が切符持っている認識がないため焦りだします。切符を探すために、上着のポケットに手を伸ばすと、身に覚えのない折り畳まれた紙がそこにはありました。それを車掌に渡すとそれは「どこまでも行ける特別な切符」であることを告げられるのでした。

「鷲の停車場」に着くと20歳弱の青年と同い年くらいの少女とその弟の三人が乗ってきます。
青年の話を聞くと彼らは船に乗っていたところ、氷山にぶつかり船が沈み気づくとここに来ていたと話しました。
青年はなぜその船に乗ったのかや、氷山に当たってから船内で起きた狂騒、他人を押し除けて連れの姉弟きょうだいを助けることが必ずしも彼女らの”幸せ”ではないこと、そして沈みゆく船の中で神に祈りを捧げる讃美歌が歌われたことなど当時の様子や心境を話してくれました。

その話を聞いた際に、ジョバンニはいたたまれなくなり、その青年達の”幸せ”のためにどの様なことをしたらいいのだろうと考え出します。
青年と話していた老人も「何が本当の幸せかはわからないものです。人生とは辛いことばかりですが、それらも幸福に近づくための1つなのですから」と話し、青年もそれに同意するように返事をしたのでした。

青年と一緒に乗ってきた少女は同年代であるジョバンニやカムパネルラに話しかけます。ジョバンニはいつもの具合でなかなか話に参加することが出来ず、カムパネルラと少女が楽しそうに会話しているのを隣で聞くことしか出来ませんでした。故に、「あ〜僕は、どうしてこんなにも孤独で寂しいんだろう」と現実世界でも銀河鉄道でも何も変わらない自分を憂いていました。

列車は青年達が"天上"と呼ぶ目的地であるサウザンクロスに向かっている最中、ジョバンニは赤く透き通った美しい火を見つけ、あれは何かと問いました。すると少女は、「あれはさそりの火よ。昔話の一つで、自分が生きるために多くの命を奪ってきたサソリがイタチに食べられそうになり逃げていたところ、井戸に落ちて命が尽きようとした際に、「私は自分が生きるためにいくつもの命を奪ってきたのに、最後は誰のためにもならない形で命を落とすのか。私がイタチに食べられていればあのイタチは幾日かは生きられたはずなのに。神様、今からでも間に合うようでしたら、私の命を”皆の幸せ”のためにお使いください」と願って出来たのが、あのサソリの火よ。」と話しました。その話を聞いた後に、ジョバンニはサソリの火を中心に星々がサソリの形に並んでいることをカムパネルラや少女と分かち合いました。

その後、サウザンクロスの停車場で青年たちと別れ、ジョバンニとカムパネルラはまた二人きりになりました。青年達との旅はジョバンニの人間関係の下手さを痛感する一方で、幸福とは何かや一緒に何かを分かちあう楽しさを実感できる旅でもありました。故に、ジョバンニは「どこまでも一緒に行こう。”みんなの幸いのために”できることなら何でもしよう」とカムパネルラと話します。

2人で天の川を見ていると突如黒い雲(作中では「石炭袋」と表現されている)が眼の前に現れます。いつものジョバンニであれば得たいの知れないそれを恐れますが、カムパネルラに対して「君といれば怖くない。ずっと一緒に旅して、人々の幸せのためにできることをしよう。」と、また言うのでした。しかし、カムパネルラは「あそこの野原はすごくきれいだね。まるで天上のようだ。僕のお母さんもあそこにいる。」と語り出します。

”その野原”をジョバンニは見ることが出来ず、なんとも言えない寂しさがこみ上げてきますが、またしつこく「ずっと一緒にいよう。」とカムパネルラに問いかけると、そこにカムパネルラの姿はもうないのでした。その瞬間、ジョバンニは列車の窓から体を出して、力いっぱい叫び泣きました。

そして、眼の前がゆっくり真っ暗になっていくのでした。


ジョバンニが眼を開くと、そこは街が見下ろせる丘の上で、疲れて眠っていたようでした。目からは”何故か”涙が流れており、胸の奥は”不思議と”熱くなっていました。

街はすっかり沢山の灯りで溢れて、熟したように街を包んでいました。

家で待つ母のことが気になり、急いで街の方歩いて行くと何やら川の近くが騒がしいことに気が付きます。嫌な予感がして、ジョバンニが近くの人に話かけると「子供が川に落ちた」とのことでした。
さらに広い川の方へ行くと同級生が居り話を聞くと「カムパネルラが川に落ちた同級生を助けに川に入り、彼を助けた後にカムパネルラ自身が川に飲まれたんだ。」と話しました。

多くの人がカムパネルラを探し、彼のお父さんも探しに来ていましたが、いよいよ見つけることが出来ませんでした。

ジョバンニは、ふと川の水面に映る銀河を見て
「カムパネルラはもうこの銀河のどこかに旅立ってしまった」
と人知れず思うのでした。



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