餓鬼塚
今日は一日中、雨が降っていた。
土砂降りではなかったので、その気になれば探検にも行けたのかもしれないが、家でおとなしく仕事をすることにした。
しかし、春というのはどうにもいけない。
じっとしていると、うずうずする。
外を歩きたい。
緑の中に身を置きたい。
花を愛でたり、山菜を摘んだりしたくなる。
花粉症ならなおさら、雨の日の方が外出は都合がいい。
ううう、行きたい。
締め切りカレンダーを見ながら、外出欲求を鎮めるために、GoogleMapに「晴れたら行きたいところリスト」を作っていると、なんだか怖そうなところを見つけてしまった。
餓鬼塚。
うわ。
これはあれかな。
昔、飢饉の際に人肉を食らって餓鬼道に落ちた人たちを弔うためのもの……とか、そういう類のいわくつきの何かだろうか。
行ったこともないのに、想像が膨らみ、妄想の中で地の底から伸びてくる手に足を掴まれて、ぞくぞくと寒くなってしまった。
それにしても、古い歴史がむき出しのタイムカプセルのように、こうして残っているところがすごい。
さすが霊場だ。
私の郷里は台地で川から水が引けず、明治になって用水路が作られるまで、ススキだらけの荒れ地だったところなので、江戸時代にはあまり人が住んでいなかったらしい。
人が住み始めて、たかだが100年程度の歴史しかなので、あまり見どころがないのである。
「貝塚→古墳→戦国時代の城跡」という、非常にとびとびの史跡しかなく、ロマンが足りない。
かと言って、近所に餓鬼塚がほしかったかというと、そんなことはないのだが、なにかしら歴史好きになれそうな、アクセントが欲しかったな、とは思う。
マンガにまみれた子ども時代を、古文書を読んで過ごしていたらちょっとはましな大人になれたかもしれない、というアカデミックなものへのただのコンプレックスがそう思わせているだけだろう。
実際に餓鬼塚に行ってみたところで、きっと「へえ」と思って終わりなのだろうし、ね。
**連続投稿784日目**
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