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この大雨で杉津が大変なことになっているらしい

敦賀近辺には、私がよくいく海が3か所ある。
ひとつは、お隣の美浜町の白いビーチが美しい「水晶浜~竹波海水浴場」、そして2つ目が磯に生き物がたくさんいる「手の浦海水浴場」、最後が魚釣りもシュノーケリングも最高に楽しい「杉津(すいず)海水浴場」だ。

中でも、「杉津海水浴場」は、規模もこじんまりしていてばっちり好みだし、ウミウシもたくさんいるし、海の管理人のおじさんたちも、愉快で話し好きで、やさしい。
会えば、いつも小一時間おしゃべりを楽しんで帰ってくる。
とても気のいい人達で、「寡黙でマッチョで背中で語る男」という私の中の海の男イメージを、思い切りひっくり返してくれた。

地図で示すと、杉津は敦賀から国道8号線を北上し、越前に着く手前にある。敦賀湾をはさんで、手の浦海水浴場のちょうど対岸あたりだ。
ちなみに、北陸道の杉津パーキングエリアは、敦賀湾の絶景が望める最高のビューポイントで、昔、大正天皇が北陸本線に乗ってこの地を行幸された折りに、わざわざ汽車を停めてまで景色を堪能したという逸話が残されている。
いつもは、それくらい穏やかで美しいところなのだ。

今、手元にある杉津の写真を、ありったけのせてみる。

最後の1枚は、梅雨時に、産卵にやってきたアメフラシだ。
海水の透明度が高いので、陸上からでもはっきりと姿が撮影できた。
しつこいけど、本当に穏やかで、美しいところなのだ。

けれど、状況は一変した。
この2日間、北陸は「線状降水帯」の通過で、とんでもない災害に見舞われていたのである。

今庄は、杉津と山を挟んだ裏表の関係にある。
だからというわけでもないでもないのかもしれないが、表の杉津の被害も相当なものだったようだ。

先ほど、海のおじさんと電話で話したところ、砂浜が消えた、と言っていた。
何でも、海に流れ込んでいる川(下図参照)の上流で、砂防ダムが決壊したか、土石流が起きたかしたらしい。せき止められていた大量の土砂を含んだ凶暴な水が、いっぺんに砂浜に押し寄せ、やわらなか砂を全部削って沖へ持って行ってしまったとのことだった。

「俺の小屋の下がさ、前はなだらかな砂浜だったろ? それがさ、一歩外はもう、崖なんだわ。崖の下で泥の海がのたくっとる。漁師連中は、今年はもう、漁はダメだなってあきらめとったわ。泥をかぶって、海藻がやられて、サザエもアワビも全滅よ。あんたも、今年はもう、ウミウシは見られんと思うぞ」

おじさんは、いつもの元気が全くない声で、そう言って電話を切った。

おじさんは、海で貸しボート屋を営んでいる。
昔は杉津海水浴場も家族連れで大賑わいだったらしく、杉津の集落内には海水浴客目当ての旅館が立ち並んでいたらしい。
その中の1軒が、おじさんの旅館だった。
でも、こんなにいいところなのに、そして、海は全くさびれていないのに、なぜか、客足はどんどん遠のき、今、杉津に旅館は一軒もない。
コアな釣り人達には、穴場だと知れ渡っているので、魚釣りの人たちはそこそこ来る。
おじさんは、その人たちに向けて、手漕ぎボートを貸し出しているのだ。

ところが、この猛烈な豪雨で、大事なボートも全部海に流されてしまった。
回収できたものもあったけれど、沖のテトラポッドにぶつかって割れてしまって使い物にならないものもたくさんあるらしい。
なにより、プロの漁師が「今年はもうだめだ」と言う海に、釣り人が来るのだろうか。

自然のすることなのだから、人間にはどうしようもないことは、わかっている。
そして、おじさんたちには、海の男の矜持があるから、簡単に誰かに「助けて」なんて言わないだろうこともわかる。
それでも、何か私にできることはないのだろうか、と考えてしまう。

明日はとりあえず、杉津の海を見に行ってこようと思う。
ちょと訳あって、数日、人に会えないのだが、誰にも会わなければ問題ないだろう。
惨状を伝えることだけでもしたい、と思う。

**連続投稿187日目**


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