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暴走する脳

先日、ほぼ、年に一度の衝動がやってきた。
「部屋を片付けたい! 本を床置きしたくない! 段ボールに入った資料をちゃんと棚に収納したい!」
という心の叫び、魂の衝動だ。
それは、私の6畳間が、足の踏み場もないほど洗濯物であふれた日のことだった。

忙しくなってくると、私が最初に手を抜くのは家事だ。
とくに、「片づけ系」が嫌いなので、乾いた洗濯ものをたたんでしまうことが面倒になり、タンスの前に放置してしまう。
溜めなければ、さほど面倒でもないのはずなのに、心に余裕がなくなると「洗い物」と「洗濯物たたみ」は、親の仇かと思うほど憎くなる。
8回分くらいの洗濯物の山を、ほったらかしていたら、ある日雪崩を起こして、踏まずに歩けなくなった。
いよいよヤバい。何とかしなくては!

そこで、まず「本当にそんなに忙しいのか、気のせいではないのか?」を確認するため、締め切りを書き出して表にしてみた。
私は一本いくらのWEB原稿を、依頼があれば書く、というパートタイマーのようなライターだ。
書くのは早いので、集中すれば写真撮影も込みで、1日に2,3本は書ける。
表を作っている間にも数件の依頼が来たところを見ると、たぶん、これから夏休みを取る人たちが断った案件が、私に回ってきているのだろう。
稼ぎ時だ。

たしかに、普段の月よりやることは多いが、落ち着いて考えると、別に洗濯ものがたためないほどの、過密スケジュールでもない。
「だいたい一日これくらいやれば、なんとかなる」という目安が把握できたので、少し余裕を取り戻せた。
そこで、いそいそと洗濯ものを片付け始めた。

ご存じの方も多いと思うが、世の中には「お掃除の魔力」というものがある。
出かける前、ちょっと気になった「キッチンの水垢を落とす」つもりが、気づいたら「換気扇まで外して洗ってしまっていた」という、あれである。
嫌いなことほど、始めてしまうと止められない。
弾みがつくと、それまでの『やらなくてはならない』というプレッシャーに耐えかねた脳が、ストレスを解消しようとストッパーを外しにかかってくるのではないかと思う。

魔力に憑りつかれた私は、洗濯ものをたたむと、次に床に積んである本を、本棚に戻そうとした。
しかし、スペースがない。どう詰めても入らない。
そこで、スマホで「リコマース」を検索し、本を売るための段ボールを5箱オーダーした。
そして、引っ越し以来、手付かずだった押し入れの段ボールを引っ張り出し、この1年半、使ったかどうかを振り返って、捨てるもの、売れそうなものを分別した。
わんさか出てくるガラクタの山。
そして、どんどん隙間が生まれていく押し入れの下段。
今ならドラえもんが来ても、丸まってもらえれば寝られそうである。
不用品をゴミ袋に詰め、階下の倉庫に運ぶ。

暑さのあまり、それ以上の作業が嫌になって、その日はそこまでにしたが、翌々日、リコマースの段ボールが届いたら、またもやスイッチが入った。
魔力継続中である。
5箱分の本を段ボールに詰め込むと、本棚は3段ほど隙間ができた。
ようやく、床置きしてあった本を棚に入れられる。

これで何とか床にあったモノたちは消えたが、今度は、未分類のまま雑に詰め込まれた本の並びが気になり始めた。
せっかく入れた本を、全部本棚から出して、ジャンル別に分類をしかけて、時計を見ると、すでに半日をこんなことで潰している。
「はっ。いかん、いかん」と思い直して仕事に戻った。

で、結局、今、部屋の床は、本が乱雑に積まれた状態である。
洗濯ものの山は無くなったが、もっと硬くて重いものが高い山になってしまった。

暴走しやすい脳を持っていると、時々こういうことが起きる。
少しずつ、とか、計画的に、とか、そういうまめなことができない。
こまった性分だと思うが、それが私なので付き合っていくしかない。

**連続投稿193日目**

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