愛だの恋だのだけではなくて
お笑いコンビ「さらば青春の光」の森田さんは、我を出す時と引っ込める時のバランスが絶妙で、こんな風に生きられたらいいなあと思う達人の一人である。
その森田さんが、ある年の年末に付き合って間もない彼女と別れた。
私はそのエピソードがものすごく好きで、時折思い出しては「こうでなくちゃ」と胸に刻みつけている。
事実だけを書くと「森田さんが、交際二か月の彼女に対して、どうにも盛り上がる気持ちが持てず別れた」という、みもふたもない話なのだけれど、そこで森田さんが彼女と天秤にかけたのが、お笑い芸人仲間だったというところが、私の気に入っているポイントである。
交際二か月と言ったら、一番盛り上がる時期だろう。
しかも、タイミング的に、クリスマス・年越し・初詣と、2人で過ごす口実となるイベントも多い。
だがしかし。
そこで森田さんは思ってしまったのだった。
「このまま、この人と付き合ってたら、年末年始、ずっと一緒にいなくてはならないのだろうな」
と。
それを想像しても、心が踊らない。
ドキドキもわくわくもしない。
芸人仲間とワイワイやってる方が、楽しそうで心惹かれる。
そこで、森田さんは、彼女に正直に別れを告げて、より自分が楽しいと思う方を選んだのであった。
私がこのエピソードのどこを気に入っているかというと、
「付き合うとか付き合わないとかは、2人のことだから」
という閉じた考え方をしていないところだ。
「お互い好きだから付き合う」
「嫌いになったから別れる」
「もっと好きな人ができたから、別れたい」
恋愛って、こんな感じの1次元の中にあるものだと私は思っていた。
別れに際して考えなくてはいけないのは、自分と相手の「ラブ目盛り」の増減だけ、他に何を見ろというのか、と思っていたのだ。
でも、森田さんは「恋愛よりもっと面白そうなこと」という、別の目盛りを恋愛と交差する異なる直線上に持っていた。
そして自分に正直に、0から遠い座標にある、もっと面白いものを選んだのであった。
おそらく、私がバカほど恋愛脳だから、「好き」「嫌い」の感情に、人一倍フォーカスしてしまうのだと思うが、人の営みというのはそんな単純な二択ではないらしい。
それを見せてくれた森田さんが、私にはとんでもなく新鮮だったのである。
おそらく、夫婦間にも「ラブ目盛り」以外に、見るべきポイントはたくさんあるのだろう。
結婚して何十年も経っているのに、常に2人のお花畑で盛り上がっていたら、それはそれで日常がしんどいし。
自分の中に、縦横斜めに交差する複数の目盛りを持ち、1番心踊る選択をできるようになりたい。
私は、「好きなこと」目盛りのどれも中途半端に放り出しているから、ドーパミンの出やすい「ラブ目盛り」に戻ってきがちなんだろう。
あらゆる「好き」の目盛りをできる限り遠くまで刻み、常に「最好」を選び、自分を幸せにしてやりたい。
**連続投稿748日目**
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