水晶を探して② ヒントをもらう
昨年の今ごろ「敦賀半島は、全部花崗岩の山だから、探せば絶対どこかで水晶が採れるはずだ」という記事を書いた。
これ以降も、時々、ひとりで山に入っては、それらしい露頭を求めて歩きまわり水晶を探していたのだが、地元のおじいちゃんたちに
「クマが出るから一人で入ってはいかん」
と注意されることが多く、足が遠のいていた。
探しても探しても、見つからないし。
山より、海が好きだというのもあるし。
熊、怖いし。
しかし、今日は、面倒な仕事をやり切った感で大変気分がよく、天気も快晴、バイク日和で、海に入るにはまだ寒い。
こういう日は、気が大きくなっているので、熊も怖いと思わない。
なんなら、友達になれそうな気すらしている。
久しぶりに春の山を満喫しながら、水晶探しをしてみようと出かけたのであった。
結果から言うと、やっぱり、水晶はあることが分かった。
子どものころ山でよく水晶を拾っていたという、おじいちゃんに会えたのだ。
ただ、私が探し回っていた山では、採れないという。
それより北側の、道路からでも崖崩れ跡がよく見えるあたりが、水晶の落ちている場所なのだそうだ。
例えば、下の写真の矢印で示した白っぽいところがそうだ。
以下、おじいちゃんとの会話。
「わしらの子どもの頃は、あの辺のことをはげ山って呼んどった。岩ばっかりの山だから、斜面がもたんで、大雨の後なんか、よう崩れよるんだわ」
――へえ、はげ山ですか。
「あの辺は、昔、炭焼きをしとったんで、木も切ってあって、見通しが良くての。登るのも楽だったもんで、友達とよう遊びにいっとった。崖が崩れたあとは、水晶が転がっとることが多かったで」
――えええ! なんてうらやましい!
「そんないいもんかいな。むかしは、遊ぶっていうても、今みたいにテレビやらゲームやらなかったもんで、海に行くか山に行くかしかなかっただけやで。たまに、水晶を見つけると拾って集めとったわ」
――その水晶って、集めて宝石商に売ったりしてたんですか?
「そんなことはせんよ。ずいぶんあとから、採掘業者が来て、掘り返してたけど、すぐにおらんくなっとったしねえ。ようけ採れんかったのか、あんまりええのが、採れんかったのか。わしらはただ、きれいだきれいだ、言うて、集めとっただけやね。小遣い稼ぎ言うたら、水晶やのうて、ガンピを剥いて売っとったね」
――ガンピ?
「知らんか? 和紙の原料で、楮(こうぞ)とかに混ぜて使うと、いい紙が作れるっちゅうてねえ」
――へえ! そんなにたくさん生えてたんですか?
「たくさんはないけども、畑に植えて増やせんもんだから、山から採ってくるしかなくて、これくらい(新生児くらいに手を広げる)、皮を剥いで持っていくと、20円で買ってくれよった」
――それって、今で言うと、いくらくらいですか?
「どうじゃろ。アイスキャンデーが5円で買えたのは覚えとる」
――アイスキャンデー4本分! 子どもだったら、けっこうなお金持ちですよね。
「まあなあ」
――で、水晶なんですけど、まだあると思います?
「どうじゃろうかなあ、もう50年も前の話だでなあ。何しろ、炭焼きをせんくなってから、道ものうなっとるし、もう、人の背より高い藪が茂って、熊が出るちゅうんで、地元のもんもよう行かんよ」
――また熊かぁ。
「イノシシも、シカも、よう出るしねえ。シカは怖くないけど、最近のイノシシは、人を見ると襲ってくるってテレビで言うとったで」
――イノシシもかぁ。うーん。
「まあ、普通のイノシシなら、でかい音出して歩いとれば、気づいて逃げてくれるとは思うけどもねえ」
――ですよねえ。でも、道がないんでしょう?
「途中までは残っとるねえ。あとは、まあ、自分で道を作りながら登るしかないかなあ」
そこで私は、途中まで行ける田んぼの中の舗装路を、地図でおじいちゃんに教えてもらい、それだけでは超方向音痴な私では、たどり着けないと思ったので、今度近くまで一緒に行きましょうと、名刺を渡してきた。
おじいちゃんが、面白がってくれれば、きっと道案内してくれると思うけれど、さて、どうなるか。
仮に水晶が採れなくても、こういう昔の話を聞かせてもらえるだけでも、めちゃくちゃおもしろいので、電話がかかってこないかなと、期待して待つことにする。
とりあえず「この半島のどこかで水晶が採れるはずだ」という、私の仮説が正しかったことが証明されて、うれしくて、にやにやが止まらない。
小さな水晶でもいい。
見つけたいなあ。
**連続投稿419日目**
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