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神様の次の手
2011年以降、原子力関係の学部学科を志望する学生が急激に減っている、と言われている。
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そりゃそうだよな、と思う。
福島第1原発のあの悲惨な事故の後で、敢えて原子力産業を背負って立とうと思う人は少ないだろう。
親だって、わざわざ子どもに大変そうな道を歩かせたくはない。
糾弾される東京電力の役員たち。
何度も何度も平身低頭する中、怒号が浴びせられる映像が流れ、記憶に焼きついている。
それだけではない。
「今まで散々いい思いをしてきたくせに」
という、よくわからない誹謗中傷も巻き起こり、日本で一番辛い立場に追いやられてしまったのが、あの人たちだったのではないかと思う。
原発は、ひとたび大きな事故があれば、街単位の犠牲者を出すことが、私たちの頭に刻まれた。
とはいえ、石油も石炭も採れない日本で、ダムも環境を破壊するから好ましくない、風力や太陽光は安定性が期待できない、となれば、やはり原発しかないのか、と素人である私は思ってしまう。
ただ、核のゴミをどうするのか、廃炉の技術面は?など、問題は山積みだ。
さて、日本海側の原発銀座の今をお伝えしたい。
敦賀の原発は、今、2基とも稼働を停止しているが、お隣の美浜町にある美浜原発は、3号機のみ2022年8月から本格的に再稼働を始めている。
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この美浜原発は、日本有数の美しいビーチ「水晶浜」の真ん前に立っており、ビーチで泳ぐ人たちの目にも入る。
2012年の夏、私は敦賀にいなかったので、水晶浜の人出がどうだったのか、知らない。
けれど2度の夏をこちらで経験し、なんとなく感じるのは、原発アレルギーの東西格差だ。
日本海に面したこの辺りは、ちょっと走れば、すぐに原発にあたる。
なのに、東から来る友達に、「綺麗な海はどこですか」と聞かれて、水晶浜をお勧めすると、「ちょっとそこは……」という返事が返ってくることが多い。
見えてないだけで、あなたが選んだ海と、すぐ隣の冷却水が注ぎ込む海は、繋がっているのに。
なにも私たちは、放射性物質がぷかぷか浮かぶ海で遊んでいるわけではないのだが。
それでも、あの時の「東京ももうおしまいだ」と囁かれた恐怖が、染み付いているのだろう。
危険だ、近づきたくない、という気持ちは、とてもよく分かる。
その点、西の人たちはあの時の恐怖が、さほどリアルではなかったのだろう。
夏に水晶浜に並ぶ車のナンバーを見ていると、大阪、名古屋あたりの大都市近郊から来る人たちが多い。
わざわざ、原発の真ん前の海に、家族をともなって遊びに来るのである。
太平洋側から、わざわざ。
東が「反原発」なら、西は「嫌原発」なのだろう。
「反対するほどではないけれど、好きじゃないよ。代わりのエネルギーが見つかるなら、ないほうがいいよね」
といったレベルの「嫌」かと想像する。
アレルギー持ちではあるが、症状が軽いので、さほど気にしてないみたいなものだろう。
みんな、原発は嫌いだけれど、だからと言ってどうすれば良いのかわからない。
それが2023年のリアルなんだろう。
そんな中、1人の女の子の記事が3月10日に掲載された。
震災当時の記憶もない彼女が、西でも東でもない、山梨から福島に移り住み、廃炉にかかわりたいと、勉強しているのだそうだ。
動機を読んでも、今一つ理解できないが、何かしら突き動かされるものがあった、ということなんだろう。
閉塞した状況にあっても、神様は次の一手を必ず指してくるのだなあ、と思った。
絶対に、彼女だけに希望を託すようなことがあってはならないと思うが、私たちの未来は捨てたものでもないのかもしれない。
**連続投稿404日目**
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