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明日は山の上

この数日、ずっと曇ったり雨が降ったりして肌寒く、敦賀には早めの冬が来たようだった。
秋がすっぽり抜けている。
日本海側で過ごす最後の秋なのに、紅葉とか、快晴の空とか、それっぽい景色を見てないなあと思っていたら、夫も同じことを考えていたようで、
「引っ越す前に、エンゼルラインを登ろう」
ということになった。

エンゼルラインは、敦賀市から西へ約50kmのところにある、久須夜ヶ岳という山に登るために作られたドライブウエイだ。
久須夜ヶ岳は、あの『オバマを勝手に応援する会』が存在していた、小浜市の北端にある標高618mの山である。
Googleの評価に「なにも無いけど、景色は良い!」と書かれるだけのことはあって、本当に何もない。
トイレも自販機もなかったと思う。
(2023.10.11 訂正。トイレはありましたが、壊れて修理中。仮設トイレが置いてありました)
一昨年だったか、夫がこのドライブウエイをレンタサイクルで登っている途中で、イノシシの頭蓋骨を見つけて拾ってきた。
あと、よく猿に会う。
つまり、自然が濃い。

山頂からは、360度視界が開けた素晴らしい展望が楽しめるのだが、冬の間は雪でエンゼルライン自体が閉鎖されてしまう。
そりゃそうだろう。
夏だって人が来ないところなのに、お金をかけて除雪してもしかたない。
そこそこメジャースポットなわりに、秘境感が漂っているのはこういうところも関係しているのかもしれない。
観光客はたいてい、三方五湖が見下ろせるレインボーラインの方に行ってしまうので、エンゼルラインは対向車に遭うこともない。
展望所付近には、だだっ広い駐車場が用意されているが、平日は、片手の指で足りるほどの車しか停まっていない。
つまり、最高のロケーションなのである。

私の夫は、高いところが大好きで、岐阜に住んでいた頃は、しょっちゅう金華山に登り、岐阜城の天守閣から街を見下ろしては、
「わははは! 見ろ! 人がアリのようだ」
と叫んではいなかったが、心の中で思っていたらしい。
ヤバい人だ。
敦賀でも、家にいないなあと思うと、近くの山に登っている。
車かバイクの免許があれば、遠出してもっと高い山にも行きたかったのだろう。
明日は、敦賀での最後の夫孝行だ。
引っ越しのことと、仕事のことは忘れて、のんびりしてこようと思う。

**連続投稿617日目**

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はんだあゆみ
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