できるリーダーがしている仲間のド派手な失敗と建設的に向き合う方法
一生かかっても返せない金額だ・・・。
10年以上前、自分のミスで会社にとんでもない損失を背負わせてしまったとき、僕の頭は真っ白になりました。
きっかけは消費者庁の発表です。
ソーシャルゲームの「コンプリートガチャ」が景品表示法に抵触する可能性があると消費者庁が判断したとの報道があり、先行きへの不安から株価が17%も一気に下がったのでした。
つまり、かんたんに言うと、1億円を投資していた株主が1日で2000万円を失うような事態で、そんな影響を何千人にも与えてしまったのです。
「いったいどうしてくれるんだ!」と叫ぶ
株主の怒りが頭に直接聞こえてくるようでした。
僕はあまりのことに恐怖に包まれ、会社に戻る気力が湧かず、山手線を何周しても立ち上がれずにいました。
走馬灯のように人生の総集編が頭を流れる。
この先、俺の人生はどうなるのだろう・・・?
今日は僕の痛い過去を晒しての“失敗に対する建設的な姿勢”と“仕組み化の重要性”についてをお送りいたします。
<様子見が、裏目に出た>
その後の展開について話す前に1つ補足を。
どうして報道の影響で株価が下がったのを自分のせいだと思ったのかについてです。
先ほどの消費者庁の報道のあと、業界に激震が走りました。
なぜなら、当時ソーシャルゲーム業界の売り上げはガチャで成り立っているといってもよい状況だったからです。もしこれが法に抵触するとなれば、大変な事態。
これを受け、多くのソーシャルゲームメーカーはすぐに 事態をどう受け止め、何をするかについて、投資家に対して適時開示をしていました。
現行法上ではただちに違法性があるものとは考えていないと説明し、その一方で、「社会的責任を負っている企業」として各方面からの示唆を受けて真摯に検討すると発表したのです。
しかし、今思い出しても悔やまれますが、当時IR責任者だった僕は同じ対応をしませんでした。
不確かな情報だし、下手に言及しても騒ぎを大きくするだけかと思い、静観する方を選んだのです。
その対応が裏目に出て、会社の時価総額に大幅な影響をもたらしてしまいました。
入社してまだ半年も経っていない時期に、盛大のやらかしです。
もし自分がこんなミスをしたら、
あるいは自分の仲間がこんなミスをしたら、
みなさんならどうしますか?
<失敗よりも咎められたこと>
ようやく会社に戻った僕は、
さっそく社長にお叱りを受けました。
当然です。
しかし、次のような言葉を浴びせられたわけではありません。
「なんてことをしてくれたんだ!」
「お前のことは信用していたんだ。なのに、こんなバカなことをするとはな。あの時もお前は・・・、それからあの時も・・・。俺ならな・・」
ふつうは、こういう感じで怒りを何時間もぶつけられそうですよね。正直そうなると思って覚悟を決めていたところでした。
それくらいの盛大なミスをしています。
しかし、小渕社長の指摘ポイントはそこではありませんでした。大きな損失を出したことについて青筋を立てたわけではないのです。
彼が的を絞ったのは、失敗がはっきりした後で山手線に乗ってグルグルしていたことについてでした。
<失敗を取り返す>
思い出すのも恐ろしい場面ですが、当時険しい顔で社長が告げたことをキュッとまとめて再現すると。
「お前がIRの専門家じゃないのはわかっている。簡単な仕事をさせているつもりもない。こんなリスクくらい承知でお前に託しているんだ。
だから、失敗はいい。
大事なのは、即座にリカバーする手を考え、速攻で手をうつこと。次同じ失敗を他の誰がやっても起こさないように仕組みを作ること。
これこそがお前の仕事だろうが。
なのに、なに山手線を2周も3周もしてるんだ!!!!」
この言葉には、失敗に対する重要な考え方が表れています。
まず、無計画はよいことではありませんが、
どれだけ準備しても失敗が起こることは当然あります。
関わる要素が増えるほど予想外はしょっちゅう起こる。また、変化の早さを求められることほど、失敗も増えるものです。
大事なのは、失敗のあとの動き。
現実的に考えて、問題が起きたあとに対応する人の気力を粉砕するのは自らさらにリスクを増やす行為です。
失敗を生み出した人がすべきは、自分の人格を否定し死にたい気持ちになることではなく、失敗をカバーする働きをすることでしょう。
リーダーはそれを承知して、その目的に沿った形でメッセージを伝えられるよう、穴という穴から吹き出しそうな怒りをコントロールする必要があります。
<どのように繰り返しを防ぐか?>
結局、ガチャ騒動は一時的なもので、社長のお叱りのあとでクルーズもプレスリリースを出し、その後は株価も回復しました。
さて、問題はどう再発防止をするかです。
じっさい、10年前の事件後どう仕組みを作っていったか。
まず着手したのは、今回の事件の際の他社の動向、他のケースでの事例を集められるだけ集めることでした。
いきなり自分の頭で考えず、世にある先例から学ぶことが先決です。
そして、知見が固まってきたら、仕組み化です。
ここでいう仕組み化を分解すると、
大きくは次の2つに分けられます。
①マニュアル化
(誰が見ても誤解のないよう「このときはこうする」を言語化)
②運用に組み込み慣習化
(チェックリストにして必ず点検させる/会議体にする)
今回の件だと、「こういうリスクがあるときはこのタイミングでこういう情報を開示する」というのをチェックリスト化、定期的に見返し、アップデートする仕組みを作りました。
おかげで、幸いその後10年以上同じような事態は起きておりません。
以上!
僕の痛い過去を晒しての“失敗に対する建設的な姿勢”と“仕組み化の重要性について”でした。
<今回のワーク>
毎回恒例の、
テーマに合致した若手起業家向けのワークです。
これらは、内容を体験的に理解してもらうための実践的なものです。ぜひ、いくつかでもチャレンジしてみてください。
それでは、また次回お会いしましょう!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。