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ゲストハウスに住んでみてよかったこと(完)

こんにちは。モロヘイヤです。
ゲストハウスを卒業してからかなり日が経ってしまったけれど、ゲストハウス生活の総括を記録しておこうと思う。

私は今年の5月末で会社員を(一旦)辞め、「キャリアブレイク」期間に入った6月から約2ヶ月間、東京のゲストハウスで働きながら住み込ませてもらった。
(「一旦」としたのは、「会社員を辞めた」と書くと、「これからの人生で一度も会社員をやらないと決めた」というニュアンスにも取れると思ったから。)

経緯の詳しいことは以下のnoteにて。

さて、卒業してから2ヶ月が経過した今振り返ってもなお「自分の人生にとてもいい影響を及ぼしてくれたなあ」としみじみ思う。

2ヶ月も前の出来事を今更書く自分に落胆する一方、つい最近読み終えた西加奈子さんの「サラバ!」に「書く」ことへの励ましをもらった気がした。抱きしめたくなる大切で尊い文章たちが並ぶ作品の最後の部分の一部を引用しておく。

「書きたい。
僕は自分の化け物を書きたかった。それはおそらく、自らの回想録になるだろうと思っていた。だが、それは日記であってはならなかった。誰かに読まれるものでなくてはならなかった。
ひとりよがりではだめだ。僕は自分の思い出を、出来るだけあまさず拾わなければならなかった。」

『サラバ!(下)』(西加奈子)

それでは、ゲストハウスに住んでみてよかったことを思いつくばかり記してみる。

「世界にはいろんな人がいる」を短期間でぎゅっと感じられたこと

何よりもまず、いろんな人の人生の物語に触れられたことがとっても幸せで貴重な経験だった。
ゲストの95%は外国人という環境で、毎日世界中から集まった人たちからいろんな話をきかせてもらった。

記者をしていた時も、大学時代に学生一人一人にフォーカスする小さなメディア団体でインタビューしていた時もそうだったけれど、私は人の物語に耳を傾けているときにワクワクしている感覚がある。そしてそれを伝える=発信する時に、一人の物語が誰かを勇気づけたり、新しいことを知るきっかけになるような、社会のために何か少しでもいい影響を及ぼせていたらいいなと、アドラー心理学でいう「貢献感」を感じられたりする。




「世界には本当にいろんな人がいて、人の数の分だけいろんな人生がある」ってことを、短期間にぎゅっと刺激的に感じられたことは豊かな学びだった。私にとって、「いろんな人がいる」と感じられることは想像力を養うためにとても大切なことだと思っていて、大袈裟に言えば自分の人生のテーマのようなものでもある。
時には一緒にご飯を食べ、時にはお酒を片手に人生の話に花を咲かせていた中で、生き方とか考え方に「普通」なんて存在しないということを痛感した。

いろんな人が集まってくる場所にずっと定住していたことで、1つの国とか1つの地域を旅している時よりもよっぽど「世界」というものを感じられた気がする。自分で動き回るのもいいけど、定点観測も悪くないと思ったのは新しい発見だった。

同じ釜の飯を一緒に食べることで心の健康が維持できると実感したこと

2ヶ月滞在していたゲストハウスでは、住み込みのスタッフと正規スタッフ含め、休憩時間にはいつも必ず一緒にご飯を食べていた。ご飯は正規のスタッフが用意してくれていたのだけれど、毎日バラエティーに富んだメニューで、食事が本当に楽しみだった。
食べながら話し、そうすることで距離も縮まり、すぐにゲストハウスでの生活に馴染むことができた。食べるという行為は生活の中で欠かせないからこそ、その時間の満足度は自分の心の健康にとても大きな影響を及ぼすと思う。
おいしいものを食べておいしいと感じることはもちろん、そのおいしさを共有できる人が目の前にいることがどれだけ些細で尊いしあわせなのかということを実感する日々だった。家族と生活していた学生時代はそれが当たり前だったし、会社に勤めていたときのひとり暮らし時代では人とご飯を食べることの価値をこんなにも強く感じたことはなかったと思う。

掃除や片付けをルーティン化する気持ちよさが身に染みついたこと

これまでのnoteでも記していたように、ゲストハウスに住み込む「条件」としての労働の中に清掃があったわけだけれど、自分もその場所に住んでいたから、労働という感覚はあまりなかった。むしろ自分が住んでいる場所を掃除する習慣を自然と身につけさせてもらった形となった。

ほぼ毎日、トイレやシャワールームなどの水回りを掃除して、「毎日掃除すればきれいに保てて、次の日の掃除が苦ではなくなるし、何より自分が気持ちよく過ごせる」という自分にとっては大きい学びを得た。

スタッフたちと一緒にご飯を食べた後も、毎回すぐにお皿を洗って布巾で拭き、食器を元の場所に戻すということを繰り返していた。そのお陰で、神戸での1人暮らし時代には放置しがちだった食後の食器洗いを食べ終わってすぐにできるようになった。日常の小さいイライラを減らすことができた。

住んでみてよかったことを書いてみたけれど、最後に一つだけ感じた「課題」について。
ゲストハウスに住む中で、「もし自分が将来ゲストハウスをやることになったら?」という視点で考えた時に浮かんだ課題が、常連さんとの向き合い方。
詳細に書くと誰かを傷つけることになりそうなのと、自分の中でもまだ答えが出ていないからから控えるけれど、「誰のためのゲストハウスなのか」というのはもしゲストハウスをやることになったら考えたいなと思った。
今はただ感じたことを自分の胸の中にそっとしまっておこうと思う。

最後に

たまにふと、ゲストハウスには今日どんな人が訪れているのだろうと想像する。そうやって想像したくなる「居場所」が増えたことに改めて感謝したい。間違いなく自分の人生の宝物的な1章だった。さて次はどこのゲストハウスに行こうか。

2024/11/02 モロヘイヤ





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