パリの就活事情
パリで働きたい、求人情報を知りたい。
そうおもったとき、まずパリにいる多くの留学生が検索するのが、下記の3つ。
日本語が通じる職場の求人を探すことができます。
・OVNI
https://ovninavi.com/categories/emploi/
・Jimomo
https://paris.jimomo.jp/bbs/list.html?ca=301
・MixB
https://fra.mixb.net/job?page=40&view=list
今はどの業種でもInstagramをやっているお店が多いとおもいますが、
求人がある場合は大抵、Instagram上でも情報が出ているので、お目当てのお店がある場合はこまめにチェックしておくことも忘れずに。
しかし、フランスには、求人情報を出していなくても
「直接CV(履歴書)を持って行って直談判したら雇ってもらえた」
「三つ星レストランに食べに行き、ダメもとでシェフにCVを渡したら、半年後に突然連絡が来て働けることになった」
といったケースもちらほら。(その理由は後述します)
そして、わたしの場合はまた、上記のどちらとも違うパターンでした。
2015年、Rosebudでの研修期間が終わりに近づいてきた2月のはじめのこと。
どこか他のフローリストで研修をしようか・・・でも他に行きたいフローリストも見つからないし・・・と迷っていたとき、
大好きでよく通っていたインテリアショップBORGO DELLE TOVAGLIEの店員さんからSMSが入りました。
「3月からうちで働く気はない?」
まさかのスカウトメールでした。
花留学としてパリに来たのに、フローリストではなくインテリアショップで働くということに、
不思議と、全く抵抗も違和感もありませんでした。
もともと小売店としての「お花屋さん」ではなく、花のある空間や暮らし、ライフスタイルに興味があったこと、
そしてRosebudでたっぷり吸収した感性や哲学を薄めることなく、
感性の合う空間に身を置いていたいとおもい、
その日のうちにすぐ、働きたいです!とお返事しました。
時期的にも、ちょうどRosebudの研修が2月いっぱいまでだったので、まさに渡りに船のお話でした。
BORGOでオープンから働いていたスタッフの方が辞めることになり
ちょうど、日本の雑誌などで取り上げられるようになり、日本人のお客さんが増えてきたタイミングだったので、
日本語とフランス語ができる人材を探していたとのことでした。
BORGOには渡仏してすぐの頃から通っていたので、
知り合いもほとんどいない、頼りなさげなわたしを当初から気にかけてくれて、
よく話しかけてくれていた店員のお兄さんが、そういえばと思い出して連絡をくれたのです。
そうと決まればすぐにお店にCVを持ってきて欲しいとのことで、
CVを作成し、お店に渡しに行き、
その後連絡するとのことでしたが・・・
待てど暮らせど、連絡はなく。
※ちなみにCVの書き方は、こちらのwebsiteなどが参考になるとおもいます。
https://study.gitsl.com/ecrirecv/#CV
日本のように一般的な履歴書テンプレートがあるわけではないので、A4用紙に必要事項が記入されていればOK。
もしかして、検討した結果不採用だったのかも・・・と落ち込みかけていたとき、
先日スカウトメールをくれたお兄さんから「連絡きた?」とメールがありました。
まだこないと答えたら、優しくて面倒見のいい彼は
「フランスでは、一度CVを出して連絡がこなくても二度、三度とアタックするのが普通」
「悪気がなくても忘れていたり、後回しになっていることもある」ので、
「電話するか直接お店にもう一度来て話したら?」と教えてくれました。
日本の就活しか経験したことのないわたしには半信半疑の話でしたが、
勇気を出して、直接お店に行ってみたところ、案の定。
「CVは見ていないんだけど、今時間ある?」
ちょうどその場にいたオーナーと面接することになり、
あっという間に採用になりました。
パリに来て数ヶ月、その「ゆるさ」には慣れてきたとおもっていたわたしでしたが、
そのときの衝撃は、今でも記憶に残っています。
CV見ていないって・・・とか、結局CVいらなかったのでは・・・など、
突っ込みどころは盛り沢山ですが、
これは就職に限らず、フランスでは日常的によくあること。
ワーホリから帰国してからはずっとフリーランスなので、わたしが「就職」した経験はこのときだけなのですが、
フランス人(や、ラテン系)と仕事のやり取りをしているときも、同じようなことはよく起こります。
(もちろん、レスポンスが早くてきっちりした性格のフランス人もたくさん、多分、います!)
ゆるゆると”フランスペース”で待っていてもいいけれど、
手に入れたいチャンスがあるのなら、
しつこいかも、押しが強すぎるかも、とおもうぐらいに
自分から積極的に行動できるかどうかが大切になります。
ちなみに、日本とフランスの就職概念で大きく違うのが、
日本では、1箇所に長く勤めることがよしとされて、
短期間で複数の転職経験は「履歴書を汚す」などと言われたりしますが
フランスには全くそういった概念がないということ。
失業保険が驚くほど充実している背景もあってか、
短期間で職を変える人が日本よりも断然多いのです。
つまり、粘り強くトライしているうちに、ポジションがぽっかり空く可能性も
充分ありうるということです。
そのタイミングで思い出してもらえれば、もしくはそのタイミングがちょうど合えば、
前述した「CVを渡して数ヶ月後に突然連絡が来る」といったことも。
わたしは元来、小心者(の内弁慶)で、周りの助けやご縁に恵まれてただただラッキーだっただけ、ということは間違いありませんが、
いざチャンスが降ってきたとき、
まずはそれがチャンスだとおもうかどうか、
そして手を伸ばすことができるかどうかというのは、大切なことだとおもいます。
人生は、日々の小さな一つ一つの選択の積み重ね。
良くも悪くも、思い描いた通りにいくとは限りません。
将来の目標やそこにたどり着くまでの道筋を明確に描けることは確かに素晴らしいことですが、
それよりも、わたしは
自分が本当に大切にしているものや価値観に、日頃から常に向き合っていること、
思いがけない道の分かれ目、地図にない道が現れたとき、
進む一歩一歩を、自分の物差しで考えて選択することができることの方が
大切なのではないかとおもうのです。
そうすれば、
振り返ってみれば最初に思い描いた道とは全然違っても、
後悔しないとおもうし、最後に素敵な人生だったと言える気がします。
シンプルに、身軽でいることは、何も考えていないこととは違う。
わたしがフランスに来て学んだことのひとつです。
そんなご縁で留学時代に働いたBORGOでは、
豊かな色彩感覚や空間の使いかた、インテリア、暮らしの美学、
今の仕事に繋がるたくさんのことを学びました。
今度はスタージュ生という立場ではなく、一販売員として働いていたので、
接客したり、電話応対をしたり、容赦ない環境でフランス語が一気に伸びたのも、ここのおかげ。(サバイバルフランス語ですが)
毎月きちんとお給料をいただいて、「自分がこの街に根を下ろしている、生活している」という実感を得られたのも。
そしてRosebudと同様、
いつ訪れても家族のように温かく迎え入れてくれる、パリのだいすきなホームです。
パリで生きられるお金さえ稼げればいい、という考えもあるかとはおもいますが、
もしワーホリなどで期間が限られているなら尚のこと、
チャンスを自ら掴みに行って、
働く時間も実り多き経験となればいいなとおもいます。
守屋百合香
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パリ・東京 花仕事と二都暮らし
パリと東京の二拠点で、フリーランスのフラワースタイリストとして花仕事をしています。 このマガジンでは、元秘書で競技ダンサーだった私が花の…
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