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桃鉄プレゼン却下に思う、町おこしの難しさ


却下された小学生のプレゼン

小学生が「枚方を桃鉄に追加してください」とプレゼンし、大人がガチでダメ出ししたという記事があった。話題としては少し古いのだけれど、「良記事だったなぁ」で済ませられない何かがずっと自分の中に残っている。

講評の中で、
・なぜ近いまちが入っていて、枚方が入っていないかを調べていない。
・みんなと同じ視点では採用されない。
という指摘があった。

これは、町おこしに悩む、ほとんどの地方都市・田舎・過疎地域・限界集落にブッ刺さるのではないだろうか。

多くの田舎が、
・自然が豊かであること。
・歴史があること。
を二本柱にしている。(山地なら登山や温泉、川や海の近くなら釣りやマリンスポーツが三本目の柱になる)

だが、自然が豊かでない田舎など存在するか? 歴史だって、都市にもあるし、何なら都市のほうが色々起きている。よそと比べてうちの町に遊びに来て or 移住してきてもらう理由に全然なっていない。

憶測だけれど、そういうポスターなどを作る担当者に若い人はいて、「たぶんこれじゃダメだろうな」と思いながら作っているのではないだろうか。

そう考える根拠は二つ。一つは、他に材料がないから。もう一つは、うんと言わせなければならないのは、ポスターを見る人でなく高齢の上司だからだ。よって、きっとこれではダメなのだけれど、まぁしょうがないかということになる。

もちろん、差別化を意識したポスターや、子育て支援の手厚さで呼び込みに成功している自治体は見かける。そういうのは素晴らしいと思う。


他者視点で「他にはなく」かつ「魅力的な」要素とは?

八王子市民として、『シュリーマンと八王子』という本を読んでみた。オビ(の裏)には「シュリーマンで町おこし」と買いてあり、僕はパッと見で「それは無理がある」と思い、内容を読んだ上で「やっぱり無理だよな」と思った。

本の中ではプロジェクトの「成果」を強調していたが、饅頭を焼き、小さな展示を行い、地方紙に載った。それだけだ。地方市はそりゃ取り上げるだろう。しかし、それは「町おこしとしての成功」と言えるだろうか? 仮に「一時的にでも大勢の観光客か少なくない移住者が来ること」を、成功と定義しよう。「あのシュリーマンが来たこともある歴史ある町だから八王子に行ってみよう or 住んでみよう!」とは、100億%ならない。そもそもシュリーマンを知っている人が日本にどれだけいるだろう。

「SNSで発信した」との記述もあったが、申し訳がこれはSNSをご存知ない人の書き方と言わざるを得ない。発信だけなら誰でも数秒で出来るのだ。目まぐるしく情勢が変わるSNSの海において、きちんとインプレッション数を取れる発信を行うのはとても難しい。「よくわからないけれど若い連中がやっていることをやれば若い連中にウケるんだろう」という浅い考えでは、絶対に若い連中に響かない。「アニメで町おこし」の失敗例は死屍累々である。

ところで、「シュリーマンが来たことがある」は、他にはない要素ではある。それが魅力的とは限らないわけだが、では八王子独自の魅力とは何なのか? 桃鉄に視点を戻してみよう。八王子は物件駅として採用されており、そのラインナップは以下の通り。

・パンカツ屋
・豆腐料亭
・接着剤工場
・消防自動車工場
・ミシン工場

東京都の他の駅はイメージ通りの物件ばかりが並んでいるのに対し、八王子の物件、市民としては正直ピンと来ない。織物の町だからミシン工場はわかるけれど、差別化やルールを考えずに、八王子のイメージで物件を並べると、

・高尾山
・キャンプ場
・大学
・ラーメン屋
・ホストクラブ

こんなところではないだろうか。まぁそもそも、高尾山はオーバーツーリズム気味であり、八王子を「おこさなければならない町」だと僕はあまり思っていない。ピンチの地方はよそにいくらでもある。

厳しいのは、高尾山のような強カードを持たない町だ。

個人的には、どこにでもある自然や歴史を中途半端にアピールするぐらいなら、その予算を全部子育て支援に回したほうがいいと考える。超少子化時代で、「子どもいらなくない?」という風潮が強い現在でも、子どもが欲しい人は必ずいる。すっかり有名になってしまった「田舎特有のしがらみ」さえなければ、空気のいい場所で子育てをしたい夫婦は少なからずいるはずだ。


YouTubeで町おこしは出来るのか?

これも少し古いけれど、2023年初めには「移住失敗」が話題になっていた。

この一件は地域おこし協力隊という制度の問題も大きく関わっていそうだけれど、ここでは掘り下げず、「移住者のYouTubeでの発信は町おこしになるのか」を考えてみたい。

ゲームの実況動画は、tear 1の有名タイトルなら売上に貢献しているようだけれど、動画を見て満足して自分は買わない視聴者も一定数いるだろう。ストーリー中心の作品ならその公算はより高くなる。

動画は文章や静止画に比べて、擬似体験の色合いが濃い。そして地方への移住は、リスクが大きく、人生に何度も気軽に行えるものではない。

どんなに魅力的な動画でも、実際に住んでみたくなる視聴者より、擬似体験で満足してしまう視聴者のほうが総数では多いのではないか……と僕は思う。

だからといって、移住者の動画配信を禁止して謎に包めば人が来るかと言えば、それも違うだろう。現代人は冒険を好まない。移住者=先輩の動画を見られる村とそうでない村なら、十中八九前者が選ばれる。

人を呼ぶのは、とても難しい。

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