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スイス漫遊記14~さよならをルツェルンに告げて~
「離れるのが怖いかい?と聞いたら、N極のやつなんて言ったと思う。あんたがN極にならなければいいのよ、だとよ」
スイス旅、最後はルツェルンへ
オーストラリアで知り合ったフランス人女性から、「ストラスブールに来ることがあったら連絡してね」とメッセージを貰った。今スイスにいるので、どこかスイスで行ったことのある場所があるか尋ねると、「ルツェルンが素敵な景色だったわ」と言うので、ルツェルンに行くことを決めた。
旅の行く先など単純である。最初から何も決めていないのだから尚更である。計画性を持って旅をすると、確かに効率は良いかもしれない。だが、旅に効率を求め始めたら、それは旅ではなくて単なる観光とか作業ということになる。そのときの気持ちに従って、「じゃあ、行くか」。これである。
チューリッヒから約40分ほどで到着
スイスの電車賃は相変わらず高いのだが、往復1万は仕方ないと思いながら乗っている。悔しいのは、高額のチケットを購入しているにも関わらず車掌が確認に来ないことである。7回乗って3回くらいしか確認に来なかった。確認されなければ無賃乗車ができるという甘い誘惑が潜んでいるのだが、見つかって罰金100フラン取られるくらいならば、支払った方が得である。日本人として、海外で恥となるような行為はなるべく避けたい。それでも、「車掌が確認に来なければ、払わなくて済むんだよな・・・」と一度でも思ってしまうと、毎回車掌が確認しに来てくれないかなと思うのである。
さて、肝心のルツェルンである。いつも朝は曇り模様でなかなか一日を通して快晴というのは少ない。大体14時くらいからは天気が良いがあっという間に変わるので、一日の中でベストな時間というものは想像しているよりも限られている。しかしながら、ルツェルンの街並みは曇りでも十分に楽しめる。幸いにして午後からは晴れたため、美しい景色を写真に収めることができた。
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カペル橋(Kapellbrücke)は、スイスのルツェルン(Lucerne)にある有名な木造の屋根付き橋です。14世紀に建てられ、スイス国内で最も古い木造橋の一つで、ヨーロッパでも最も古い木造の屋根付き橋の一つとされています。ルツェルン湖(Vierwaldstättersee)のロイス川(Reuss川)にかかるこの橋は、町のランドマークとして観光客に人気です。
構造と歴史
カペル橋は、1365年に町の防衛の一環として建設されました。橋の中には、17世紀に描かれた絵画が多数飾られており、その多くはスイスの歴史やルツェルンの発展に関連した場面を描いています。これらの絵画は、橋の屋根の下に三角形のパネルとして展示され、橋を歩きながら観覧できます。
カペル橋の中央には、**ヴァッサートゥルム(Wasserturm)**と呼ばれる八角形の塔があり、これは橋よりもさらに古く、1300年頃に建てられました。この塔はかつて監獄や拷問室として使用されていた歴史があります。
1993年の火災
1993年8月18日、カペル橋は大規模な火災によって大部分が焼失しました。この火災では、多くの歴史的な絵画も失われましたが、幸いなことに橋の一部と塔は無事でした。火災後、スイス政府の支援を受けて速やかに修復され、今では以前の姿を取り戻しています。
現代のカペル橋
現在のカペル橋は、観光名所としてだけでなく、地元の人々にとっても大切な場所です。橋を歩くと、ロイス川の美しい風景やルツェルンの歴史的な建物が見渡せ、四季折々の風情を楽しむことができます。
歴史的な建物というだけで、何となくいい場所だと思ってしまうのが素人だが、実際にカペル橋を歩き景色を眺めていると、実にヨーロッパっぽさを感じる良い眺めなのである。橋を彩る花々も可愛らしく、橋から見える建物の雰囲気も川の流れと相まって実に美しいのである。かと思えば、八角形の塔ヴァッサートゥルムは監獄や拷問室として使われていたというのだから、景色の美しさとは対照的に残酷な歴史を残している。橋の上では様々な言語が飛び交い、あらゆる国から人々が訪れて楽しんでいることが分かる。残酷な歴史は、時間とともに人々によって塗り替えられていくものなのかもしれない。穏やかに流れるロイス川が時の流れと同じように、嫌な歴史を良い歴史へと変えていくのだろうか。
ホテルと塔からの眺め
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ぼんやりと歩いていると、見晴らしの良さそうな建物があり、そこまで行ってみようと思って行ってみた。ケーブルカーでするすると登ると、美しい建物があり、なんと読むのか分からないのだが、とりあえずグッチと呼ぶことにする建物から、ルツェルンの景色を眺めることができた。
**Aussichtspunkt Gütsch(アウスジヒツプンク・ギュッチ)**は、スイスのルツェルンにある展望スポットで、街の美しいパノラマビューを楽しめる人気の場所です。このスポットは、ルツェルン市内から徒歩やケーブルカーでアクセス可能で、特にその眺望が観光客や地元の人々に愛されています。
場所とアクセス
Gütschは、ルツェルン市街地から少し高台に位置しており、旧市街やルツェルン湖(Vierwaldstättersee)、さらに周囲の山々まで一望することができます。山の頂上にある展望台からは、アルプスの壮大な景色や、美しい湖の水面に映る街並みが広がり、特に夕方の景色や夕焼けが印象的です。
アクセス方法としては、徒歩やハイキングコースを利用することも可能ですが、Gütschへの行き方で特に人気なのは、Gütsch-Bahnというケーブルカーです。このケーブルカーは短いながらも急勾配を登り、快適に展望スポットに到着できます。
ギュッチ城
展望スポットのすぐそばには、**ギュッチ城(Château Gütsch)**があります。19世紀に建てられたこの美しい城は、ルツェルンの象徴的な建築物の一つです。現在、城はホテルとして運営されており、観光客が宿泊しながらこの絶景を楽しむことができます。また、城内にはレストランもあり、食事を楽しみながら景色を満喫できるのも魅力です。
観光スポットとしての魅力
アウスジヒツプンク・ギュッチは、ルツェルンの自然と都市の両方を楽しむことができる絶好の場所です。天気が良い日には、遠くまで広がるスイスアルプスの壮大な景色を楽しむことができ、街の喧騒から離れてリラックスするのに最適です。
トイレに行きたくなり、すぐにケーブルカーを降りてトイレを探した。公共トイレもあったのだが汚くて使う気になれず、仕方なくCoop-Cityのある建物内のトイレを使った。有料でトイレを使うというのが何となく抵抗感がある。日本の無料トイレが如何に清潔に保たれているかを改めて思い出す。ヨーロッパともなれば、金を払うものが清潔なトイレを使うことができるのである。ヨーロッパに来て改めて、金を払うことによって退けられるものの価値を思い出す。日本では当たり前のことも、海外では当たり前ではないのだ。だからこそ、金を持っている人は金を支払うことにきちんと価値を感じている。無料で読めることこそ当たり前だと思ってはならないのである。誰かが労力をかけて維持したり、創作をしたりしているのだから、もしも読者にヨーロッパの気骨があるのならば、是非とも私のライン滝の記事を買って読んでいただきたいと思う。
さて、1フランの排便を済ませた私は気分も良くなり、再び散歩を開始した。ぶらぶらと歩いていると次第に天気も良くなってきて、観光客も朝よりもかなり増えた。みんな天気が良くなる時間を知っているのだと思う。
そうして、ぶらぶらと歩いていると一つのモニュメントを発見した。
世界で最も哀れで感動的な石の塊
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スイスのルツェルンにある「ライオン記念碑(Löwendenkmal)」は、壮大で感動的なモニュメントで、1792年のフランス革命時にフランス王ルイ16世を守って命を落としたスイス人衛兵の勇敢さと悲劇を追悼するために作られました。
この彫刻は、岩の崖に横たわる瀕死のライオンの姿を描いています。彫刻家ルーカス・アホーンがデザインし、1821年に完成しました。ライオンは槍に貫かれており、苦痛と悲しみを象徴する表情をしています。このライオンは、忠誠心と犠牲の象徴として知られており、スイスの歴史における重要な出来事を反映しています。
また、マーク・トウェインがこの記念碑を「世界で最も哀れで感動的な石の塊」と評したことでも有名です。
最初に見たときの驚きは凄まじいものがあった。何やら崖っぽいものが見えたなと思うと、その崖の中央付近にくりぬかれたように穴があり、ライオンの石像が何とも悲しげな表情で横たわっているのである。これが果たして人間が作り出したものなのかと思うほどに精工で、今まさに死に絶えているかのような迫力がある。マーク・トウェインが「世界で最も哀れで感動的な石の塊」と評したのも頷ける、素晴らしいモニュメントである。
ルツェルンという街は、カペル橋もそうだが平和と残酷さが絶妙なバランスで調和している。まるで光と影を見ているかのように、眼前には美しく平和な光景と、それとは対照的に残酷な歴史を秘めた存在が共存しているのである。
例えば、美しく広がるたんぽぽ畑で切り取られた人の頭部を見るかのような瞬間に出くわすのである。その対比に心がぎゅっと締め付けられながらも、人々はそれを素晴らしい芸術と評する。幾千年の時を経ても、変わらずにその場にあり続ける哀れな石像を眺めながら、時を超える表現力の力にただただ圧倒された。
列車に乗ってチューリッヒへ
教会に入って景色を眺め、疲れてきたので電車に乗ってチューリッヒへと戻った。脳裏に残るルツェルンの景色はどれも美しいものであったが、同時に暗い過去も残していることに気づく。いつも笑顔の人の裏には途方もない闇が潜んでいるかのように。単純に美しいだけではないのがルツェルンの景色の魅力と言っても良いだろう。
こうして、私のスイス旅は終わりを告げた。翌日はドイツのミュンヘンに向けて出発である。
思い返せば、本当に充実していた。首都のベルンにこそ行かなかったが、それは次の旅の楽しみとしよう。
それにしても、美しいという言葉では表現しきれないほどに素晴らしい景色に出会った。自然と都市の融合が実に見事だった。振り返ってスイスで忘れられない場所はなんと言ってもSionであろう。あれほどに胸が高鳴った風景や街並みは他にない。Sionこそが私にとっての古き良きスイスの風景となった。
そしてフランス。パリにこそ行かなかったが、星の王子様で有名なリヨン、そしてシャモニーの雪景色は生涯忘れることはないだろう。
最高の二週間を過ごしたスイスを離れるのは寂しい。それでも、私は前に進みたい。再びスイスに来るときがあれば、次はもっと山登りやハイキングなどを楽しむ装備で来たいと思った。
フランスに関してはパリに行きたい。誰もが口にし、様々な芸術家が生きたパリにはいずれ行く。今回の一ヶ月の旅では行先に入れなかったが、楽しみたいと思っている場所だ。
そして、次なるドイツではどのようなことが待っているのか。楽しみでならないヨーロッパ旅はまだまだ続く。諸国漫遊は最高の二週間を終えたのだった。