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ジョーカー 悪の熱狂の暴走

2019年製作、監督トッド・フィリップス
バットマンに登場するジョーカーの話ではあるが、完全に独立した映画。
ジョーカーの原点を描いているが、本作より前のバットマン映像作品に登場している、どのジョーカーの過去でもない。

全編にわたり、ほぼ主人公アーサー役ホアキン・フェニックスの一人芝居。
いや、ほかにも出演者はいるのだけど、ホアキンのアーサーの視点に映画が支配されている。
その結果、観客がアーサーの視点で感情移入するので、悪のカタルシスに支配されてしまう。自分が悪ではないという事に自信が持てなくなってしまう。

アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、派遣ピエロとしてわずかな金を稼いでいる


人間には善と悪が同居している。
悪の部分は通常理性で抑え込まれているから、そう簡単に犯罪は起こらない。
ただこれは映画だ。
いくらでも犯罪を起こしていい。そして、心が叫ぶ。がんばれアーサー!

アーサーは好き好んで悪になったのではない。
弱者を救うことのできない社会のシステムが生んだ悪だ。
悪の感情を理性で抑え込む弱者のまえに、アーサーが現れ、強者主導の社会システムに刃を突き付ける。ヒーローの登場。

自分の意思に関係なく突然笑いだしてしまう病気を患っている


民衆はヒーローに熱狂する。
ただ、この映画はそうした社会のひずみの解決策を何も提示しない。ただ事実を表出するのみ。
その凄味、その恐ろしさがジョーカーそのものだ。

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