ブレードランナー2049 人間という存在の危うさ
前作とは全く違う世界観
前作のブレードランナーはリドリースコット監督がSFとハードボイルドの融合を試みて大成功した映画だ。
ハリソンフォードはまさにハードボイルドの主人公として典型的なかっこよくて強いが少しドジで人情深い役を演じきってみせた。
その点で今作のブレードランナーは意図するところが全く違う映画といえる。そうした違和感が「これはブレードランナーではない」といった論評を生んでいるのだろう。
この映画はブレードランナーの設定や世界観を踏襲はしているが、ドゥニ・ビルヌーブのオリジナル映画といえるのではないか。
「メッセージ」がいい映画だったので、今作も同じトーンで「ブレードランナー」を彼が作ったら面白い映画になるのでは、と期待したが期待通りの出来。
めっぽう美しい映像で、人間の内面を丁寧に描く作風は「メッセージ」同様だ。
主人公は前作同様ロサンゼルス警察のブレードランナー
今回の主人公K(ライアン・ゴズリング)は前作同様ロサンゼルス警察のブレードランナーであるが、彼は次世代型レプリカントであり、人間ではない。
内向的で自らの存在の意味を自問自答し心の闇を持つ悩める主人公であり、前作のデッカートとは180度違う主人公といっていいのではないか。
ライアン・ゴズリングはララランドとは全く異なる、難しい役どころを名演で応えている。
この映画では人間の形をした様々な”生き物”が登場する。
それは、旧型のレプリカント、新型のレプリカント、本物の人間、AIのジョイ、ラスベガスのホログラムのスター達など。
そこにあるのは人間という形の希薄さだ。
人間はこれからの未来をどう作っていくのか、この地球をどうするのか。
正しい方向性に導いて行けるのか?
荒廃した未来の地球
この映画で描かれる未来の地球は荒廃していて、やっとヒト(人間とは言わない)が生きられる未来であり、人間は未来創造に失敗している。
この映画ではレプリカントの交配が一つのテーマとして描かれるのだが、これは人間へのアンチテーゼといえよう。
「メッセージ」もそうだが、人間の新しい姿(正しい進化?)への希望といった事がこの監督の追い続けるテーマなのではないか。