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日本の製造業の現在地 ~日米欧の比較から考える~

【はじめに】
こんにちは。もりたまです。
私は製造業に勤めており、所謂製造DXやデータサイエンスの仕事をしています。
今回は「日本の製造業の現在地 ~日米欧の比較から考える~」というテーマで私が日頃思っている主観的な内容と、公開されているデータに基づき見えてきた日米欧の製造業の相違点について、いつもより視座を高めて考えたことを記事にしてみたいと思います。
あまり実践的な内容ではありませんが、このように定期的に俯瞰的に私たちが身を置いている製造業を捉え直すことが重要で、そこからこれからの日本の製造業が目指すべき方向性が見えてくると信じています。この記事に辿り着いたあなたの何かの役に立てれば幸いです。

【日本企業のデータ活用状況 (大企業と中小企業の比較) 】
日本の製造業におけるデータ活用は、大企業と中小企業で大きな差が見られます。

1.      データ活用の範囲
大企業では約9割の企業が何らかの形でデータを活用していますが、中小企業では半数程度にとどまっています。また、大企業はGPSデータやセンサーデータなどのIoT関連データの活用が進んでいますが、中小企業ではこれらの活用がまだ進んでいません。

出典:総務省|令和2年版 情報通信白書|日本企業におけるデータ活用の現状

2.      データ分析手法
「データの閲覧」と「集計」は企業規模に関わらず約7割の企業で行われていますが、「統計的な分析」や「機械学習・AIを活用した予測」では大企業と中小企業で大きな差があります。

出典:総務省|令和2年版 情報通信白書|日本企業におけるデータ活用の現状

4.データ分析体制
中小企業では「各事業部門のデータ分析が専門ではない人」によって分析が行われることが多く、専門人材の不足が課題となっています。

出典:総務省|令和2年版 情報通信白書|日本企業におけるデータ活用の現状

【製造業におけるデジタル技術活用:日米欧での比較】
日本の製造業は、米国や欧州に比べてデジタル技術の活用において遅れをとっているのが現状ではないでしょうか。
まず日本国内の視点ですが、経済産業省の「2023年版ものづくり白書」によると、日本の製造業におけるデジタル技術の活用状況は年々向上しており、2021年には67.2%の企業がものづくりの工程や活動においてデジタル技術を活用しているとのアンケート結果があります。
次に海外との比較ですが、ドイツの「インダストリー4.0」やアメリカの「スマート製造」のような概念が広く浸透しており、IoT、ビッグデータ、AIなどを統合した高度な自動化とデータ分析が進んでいるかと思います。
具体的には、以下のような差異があるかと思います。
1.      デジタル人材の不足:日本では、ITスキルを有する人材の不足が大きな課題
2.      既存プロセスへの依存:日本の製造業では、長年培われた「匠の技」への強い信頼と既存の製造プロセスへの依存が、新技術導入の障壁となっている。
3.      組織文化の違い:日本企業では、組織内での情報共有や意思決定のプロセスが比較的古典的であり、新しい技術の導入が滞りがちではないでしょうか。
4.      投資規模の差:欧米企業と比較して、日本企業のデジタル技術への投資規模が小さい傾向にあるかと思います。
これらの要因により、日本の製造業は欧米に比べてデジタル技術の活用度で遅れをとっていますが、近年その差を縮めるべく、様々な取り組みが進められています。

【データ分析の高度化】
日本国内での実際の取り組みとして、以下があるかと思いました。皆さんもどこかで聞いたことはあるのではないでしょうか?一方で私自身の職場では「まだ始まったばかり」というのが率直な感想で、これからの発展に期待したいと思います。

1.      予測的メンテナンス
機械学習モデルを用いて設備の故障を予測し、適切なタイミングでメンテナンスを行うことで、ダウンタイムを最小限に抑えます。これには、振動データや温度データなどの多変量解析の手法が用いられています。

2.      品質予測モデル
製造パラメータと品質データの相関を分析し、最終製品の品質を予測するモデルを構築します。これにより、不良品の発生を未然に防ぎ、歩留まりを向上させることができます。これまでは職人の経験に頼っていたましたが、データに基づく意思決定ができるようになってきたかと思います。

3.      デジタルツイン
製造プロセスの仮想モデルを作成し、リアルタイムデータと連動させることで、様々なシナリオのシミュレーションが可能になります。これにより、生産計画の最適化や新製品の製造プロセス設計、設備の維持管理を効率化できます。

【とりあえずまとめのようなもの】
日本の製造業におけるデータ活用とDXは、大企業を中心に進展しつつありますが、中小企業との格差や国際的な遅れが課題となっています。今後は、人材育成や投資促進、中小企業支援などを通じて、製造業全体のDXを加速させることが重要ですし、そのためにはこのような課題感を持っている私たちが、自分より上位の者に正しく価値を伝えることが重要かと思います。自社の現状を把握し、適切なDX戦略を立てること、デジタル技術の導入だけでなく、ビジネスモデルの転換も視野に入れ、競争力強化を図ることを経営層だけでなく、製造業に従事する者の大多数が考えていくことが重要であると思います。

【おわりに】
いかがだったでしょうか?
記事を書きながら、日本人の強みって何だろう?? と思いを馳せてみました。
日本と他国を比較して日本国民の優れている点を考えたときに、私は「掛け算でのクリエイティブさ」を想起しました。例えばラーメンは中国から伝わり、日本独自の出汁文化と融合して、今では本場であるはずの中国からわざわざ日本にラーメンを食べにくる人がいるぐらい、日本の食文化として根付いており、海外から注目されています。
少し論理が飛躍気味かもしれませんが、日本の製造業でも同じことが言えるのではないでしょうか? 海外では製造業でのデータ活用、DXは盛んに行われていますが、日本の製造業に勤める私たちは日本の製造業の遅れを悲観するのではなく、「まだこれからだ。」と信じて、様々な製造業での事例を貪欲にリサーチし続けて、「こんなことできないかな?」と少年少女のように、ワクワクし続けることが重要だと思います。そしてそのような人たちが集まり、お互いの専門性を掛け合わせて対話を重ねながら「こうすればできるかな?」を考え続ければ、日本の製造業でイノベーションが起こると私は信じています。
少し長くなりましたが、このような熱い気持ちが湧きたってきたので、改めてこのように普段なんとなく思っていることをこのように言語化してみました。この記事が誰かに気づきや共感をもたらし、何かの役に立てればこの上なく幸いですが、それ以上に言語化を通して自分自身のためにもなっていることが実感できました。日頃はnoteというプラットフォームで記事を読む専門になっていましたが、頭の中身を言語化してみて本当に良かったです。(投稿後も反響をいただけてすごく嬉しかったですし、刺激をいただけました。)
本文では、製造業のデータ分析/DXといった少しニッチな領域の記事を書いてしまいましたが、もし読者の方に何か伝わるものがあれば、遠慮なくコメントいただければと思います。よろしくお願いいたします。

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