全裸指なし手袋文学賞で投稿した作品【※Ingress関連】
「指なし手袋」は、冬のIngress活動に必須ですね。スマホいじるし寒いし。
今から6年前、わたしたちIngressプレイヤーの中で「Ingress」と「全裸」と「指なし手袋」をお題として、Ingress界隈で何かしらの文学を生み出そうというムーブメントが起こりました。
熱いですね。なんと熱いゲームでしょうか。
全裸はどこから来たのでしょうか。
わたしも投稿させていただいておりました。なお当時は11でした。
あっ、年齢ではないです。ゲーム内のレベルです。
残念ながら最優秀ではありませんでしたが、個人的に好きな作品になりましたので、少しだけ編集してここに残しておきたいと思います。
読んでくれた皆様の心が、少しでもIngressに動いてくれましたら幸いです。
2015年3月 もりしろ作
今夜も神社のレゾがアプグレされているのを確認すると、僕はそこに向かった。
参道を歩いていく。
大きな鳥居の下、音の消えた澄んだ空気の中に佇む彼女は、
小さな精霊のようで。
指なし手袋から出た赤い指をあたためる息が、
僕のタバコの煙より白く柔らかく上っていく。
こんばんは、と言うより先に、彼女は僕に気づいて、小さく笑って頭を下げた。
スマホを見ながら、
今夜はここ、いつもよりも緑ですね、と僕が言うと、彼女も僕の手元のスマホを覗きこんできた。
「ほんとだ。」
最初は戸惑ったこの距離にも、なんだか慣れてきている自分が、照れくさかったり、ちょっとだけ誇らしかったり。
あの、今日すごく寒いんで、よかったら。
と、バッグから小さなカイロを取り出して渡した。
「わ、うれしい!ありがとうございます!」
彼女は指なし手袋を外すと、カイロをその中に入れた。
そのとき、彼女の左手の薬指に、銀色の細い指輪を見つけた。
あ、そうなんだ。
僕はそのまま笑顔でいたつもりだけど、どうだったかわからない。
「今日は、どこから回ります?」
彼女はいつもと変わらない。
もう指輪も見えない。
今日ちょっと用事があるので鳥居だけで帰ります。と言うと、
振り返らずに境内を出た。
いつものように、あの角まで彼女を送ることもなく。
全裸で。