昔話 ライター修行 その58
恐怖の電話取材 その3
仕事で電話をかける側の森下もとほほなヤツだけど、受ける側もとほほな対応がけっこう多い。
その代表格といえば、もちろんお役所。ライター仕事をしたことがなくても、お役所に1度でも電話をかけたことがある人なら「激しく同意!」してくれるはずだ。
調べごとでお役所に電話をかけるときは、いつもにも増して電話取材が憂鬱になる。とにかく、電話を回されまくるのだ。
たとえば官公庁に電話して、ある資料を手に入れようとする。まずは代表受け付けで、オペレーターのお姉(おば……のときも)さんに要旨を話す、
んだけど、この対応が超いい加減。
こちらの所属先(●×出版社の△□編集部の記者をしております森下と申します)についてご挨拶したあと、
「○○についての資料が欲しいのですが」
と、いいたいんだけど
「○○に……」
あたりでいきなり、
「お待ちください!」
って電話を回してくれちゃったりする。
それでドンピシャの部署に回ればいいのだが、
「こちらは資料関係は扱っておりません」
なあんてことがたびたびだ。話を聞け、話を!
でも話を聞きすぎる人もこれまた問題アリだ。いかにも電話番アルバイトって感じの人が出て、
「○○についての資料が欲しいのですが、おわかりになる方(もしくはご担当者の方)おいでですか?」
と聞くと、
「どのような媒体にご使用でしょうか? 記事の内容は?」
などと聞いてくる。
彼女に話せば、話が通じるのかと思い、発売日からページ数、企画の内容まで事細かに説明。これで7分は経過したころ、
「少々お待ちください」
と、いったあと電話は男性に回される。
もちろん、ここまで話した詳細は、彼にはなぁ~~~~~んにも伝わってないのだ(涙)。
それでも資料はどうしても欲しい。森下は、電話に出た彼に、また1から雑誌の名前、企画内容、発売日、そして資料の請求を行うのだ。ところが! 聞くだけ聞いた男性は、決まってこう言う。
「ん~、それはうちの部署の担当じゃありませんね。今、電話を回しますから」
………。この「たらい回し」が、最低3回、多いと7,8回繰り返されたあと、やっと目指す資料をお持ちの部署にたどり着くのだが、無事にたどりつくのが難しい。
たらい回しが得意なくせに、電話をうまく回すのが、ど下手な人が多すぎる。途中で電話が切れてしまうことなど日常茶飯事。全く違う部署に回ってしまい、
「はあ? どっからここに電話してきたの? うちは全然関係ないよ!」
と、叱られることもよくある。
こんなときは双六でいえば、一歩後退。前のコマに戻りたいのだけれど、お役所の人ってなぜか部署名や名前を言いたがらないのだ。
電話が切れたり、見当違いの部署に回された経験が何度もある森下はさすがに学習して、電話が繋がったとたんに
「そちらの部署名はどちらでしょうか? お名前を伺えますか?」
と聞くようにしているのだけれど、責任をとりたくないのか
「いや、名前はいいですから。第2課といってもらえばわかります(これがちいともわからない。第2課って、どこの第2課だよ! 受け付けのお姉ちゃんにいっても「わかりません」っていわれるぞ)」
と答えやしない。
おまけに、幸運なことに目指す部署に電話が繋がっても
「ただいま昼食に出ております」
「席を外しております」
「会議中です」
と、いわれる。
どうしてもどうしても資料を手に入れたい森下は、
「後ほどお電話し直しますので、直通の内線番号とご担当者様のお名前を教えていただけますか?」
必死で聞いてみるのだけれど、
「代表の受け付けにお電話いただければ、大丈夫です」
と、ここでも部署名や名前を教えてはもらえないのだ。
やっとの思いでたどりついたというのに、ここで玉砕すると次に同じ手順を踏んだところで、目指す部署にたどりつけないこともしょっちゅうだ。
「いえ、受け付けから7回ほどいろんな部署を経由して、お電話をつないでいただいたもので、部署名だけでも教えていただかないと、ご連絡できないんです!」
必死の森下に、相手はしぶしぶ部署名を教えるものの、担当者の名前はやっぱし教えてくれない。
仕方なくこのあたりで引き下がり、1時間ほどあとで電話してみると
「担当者は、本日出張にでかけて不在ですが」
と来る。をい、昼飯食いに出たまま、出張に出たってのかよっ!
最近よく、規制緩和という言葉を耳にするけど、こんなお役所体質が改善されない限りは、ムリだろう。田中真紀子外相が「わがまま」だと、批判が出ているが、森下はちっともそう思わない。
あの対応でやられたんじゃ「キレ」るのもよおくわかるもん。国民のサーバントとしての意識がまるでないあの対応、少し何とかならないものだろうか。せめて、対応があのまま直らないのであれば、公開できる資料関係は、すべてWebから閲覧できるようにして欲しいものだと、切に願う森下である。
官公庁への文句を垂れたけれど、一般企業の中にも「はぁ?」と思うような対応が少なからずある。私たちマスコミ関係が、企業に何らかの取材をする場合、それに対応するのは「広報」という専門部門があるのだけれど、これがピンからキリまでレベルが違う。
もちろん、対応が素早く電話取材はもちろんメールでの問い合わせにも迅速に答えてくれるすばらしー企業もあるのだけれど、
「本当に自分の企業をアピールする気があるわけ?」
と疑ってしまうような広報にならない広報担当者もどっさりいる。
企業側としては、人事的に見て、広報活動に向いている社員を広報部に回すのだと推察するのだが、よっぽどの人材不足なのか、謎すぎる広報担当者しかいないという企業も……。