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昔話 ライター修行 その60
恐怖の電話取材 その5
その昔、ある生活誌の "読者の素朴なギモンに答えます" というコーナーを担当していたことがあった。
読者層の中心が主婦なだけに、家事関係の質問が多かったのだけれど、そのとき得た知識は、原稿を書くとすべて脳から知識が消える森下には珍しく、けっこう覚えていることが多い。
たとえば、レトルトカレーについて。読者から「一度、お湯で温めてしまったカレーは、そのまま冷めて時間がたつと腐ってしまう? 再加熱しても食べられない?」という疑問。
大手レトルトカレーメーカーの広報担当者は、この質問にひどく驚いた。
「え、消費期限内なら封さえ切らなければ普通においしく食べられますよ? ええと、レトルトカレーって、基本缶詰と同じだってこと、消費者の皆様はご存じない感じですかね?」
えー、たしかにアルミ素材で密封包装されているけど、レトルトカレーって缶詰と同じ感覚で扱っていいの? 読者の代わりに質問している森下も驚いた。ひょっとしたら、多くの人も驚くんじゃないだろうか。
畳の大きさが地方によって違うこともこの企画で知ったし、お布団を天日干ししただけじゃダメ(ダニの死骸を掃除機などで吸い取ることが必要。布団を
叩くのは、中綿の繊維をいためるのでNGなど)ってことも教えてもらった。
さすが主婦雑誌だけあって、お料理関係の素朴な疑問も非常に多かった。
疑問の問い合わせ先としてよく利用していたのが調理専門学校。
同じお料理の専門学校でも対応が雲泥の差の有名料理学校がふたつあった。
ひとつは、なにを聞いてもやる気のなさそうなおばさんが
「ちょっとわかりかねますね~」
と電話を切られてしまう学校。
もうひとつは、どんなにややこしい質問でも(料理名の由来だの、サランラップの裏技的使い方だの)
「では資料室で調べてみまして、明日にでもご連絡します」
「それについては西洋料理担当の教師がお答えできるかと思います。ただいま授業中ですので、後ほどご連絡いたしましょうか?」
とにかく誠意を込めて対応してくれるのだ。ご厚意に甘えて、分厚い資料を送っていただいたこともある。森下がお料理を習うことはほとんどないだろうけれど、もし知り合いが料理学校に行きたいと聞いたら、同じくらい有名な料理学校でも、絶対後者の学校を勧めたくなる森下だった。
広報という部署はマスコミに対応するわけだから、一般的ではないけれど、一般向けの「お客様相談センター」というのも同じように、会社ごとに千差万別だ(森下は、一般消費者のふりをしてお客様相談センターを利用することがとっても多いから、断言できる)。
お客やマスコミに対する姿勢が、電話一本で露呈する「広報」や「お客様相談センター」担当者の人選は、企業イメージを向上・維持するうえで非常に重要ではないかと、珍しく考察してみたりして。