BOOK REVIEW vol.020 あやうく一生懸命生きるところだった
今回のブックレビューは、 ハ・ワンさんの『あやうく一生懸命生きるところだった』です!
同じ人生なら“一生懸命”より“楽しく”。
お疲れ気味な人に読んでほしい人生エッセイ
『あやうく一生懸命生きるところだった』…書店で目に留まり、タイトルに惹かれて購入した一冊。韓国人のイラストレーター、ハ・ワンさんの人生エッセイ。内容は、会社員とイラストレーターのダブルワークに奔走していたある日、一生懸命生きていても冴えない人生に嫌気が差して40歳を目前に会社を退職。仕事のオファーが少ないフリーのイラストレーターとなった著者の人生観が綴られている。
学歴社会、結婚・出産問題、お金、老後問題・・・韓国と日本、国は違うけれど悩みはそれほど大きく変わらず、著者の悩みに共感する部分も多くあった。社会に出ると、いつも正体不明のレースに巻き込まれ、周りと自分を比較しては落ち込む…の繰り返し。一生懸命生きることは決して悪いことではないけれど、明確な目的がないまま、ただがむしゃらに頑張り続けることはとても難しい。
エッセイを読みながら「一体、何のためにこんなに頑張っているんだっけ?」という疑問を感じていた過去を思い出した。そして著者と同じように、仕事を辞めてほぼ何もせずに過ごした空白の一年間のことも。
いつも何かに追われるように走り続けていた社会から自分を切り離すことで、頭と心が静寂に包まれ、身体も充分に休めることができた。“何もしない日々”に罪悪感が生まれなかったわけではないけれど、あの一年間は必要な時間であり、今の私に至るまでの大切な“経過”だと言える。
「仕事を辞めること」が全ての問いに対しての最適解ではないし、著者もそれを勧めているわけではないけれど、「こっちじゃない気がする」という違和感があるのなら、勇気を出して立ち止まることも時には必要なのかもしれない。
そしてエッセイ本文にも書かれているように、人生は、“一生懸命”より“楽しく”の方が断然良い。私も気を抜くとつい真面目になりがちなので(苦笑)何かに迷った時は、自分の中の“楽しそう!”という直感で選ぶようにしている。
ハ・ワンさんの文章にも、ご自身が描かれた表紙や挿絵のイラストにもユーモアが散りばめられていて、時折クスッと笑える感じが、心がほぐれるようでとても良かった。ちなみに、描かれている男性がなぜいつもパンツ一丁なのか気になっていたのだけれど、その答え(?)も本文中で判明するので個人的にすっきりした。
心が疲れている人、いったん立ち止まって人生を俯瞰したい人、生き方を少し変えてみたい人に手に取ってもらいたい一冊。自分をすり減らす生活はもう終わり。自分らしく生きられるヒントにどうか出会えますように。