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『幻のレコード 検閲と発禁の「昭和」』補遺①

はじめに


noteをはじめました。アカウント自体は8年前に作っていたのですが、仕事の告知用としてほかのブログ (はてなブログ) を使っていることもあって休眠アカウントと化していました。知らないうちに8周年記念バッジというものを貰っていて、なんだか家出したままになっていた留守宅に帰ったような気分です。

僕はレコード史と日本の洋楽史をメインとして研究し、その研究成果を書籍にしている物書きです。
日本の洋楽史というといっぱしの立派な研究テーマのように思えますが、僕が扱うのは戦前の広範な洋楽分野で、その中でもレコードと緊密な関係でつながれた音楽、学問として成立しづらいレコードや戦前ジャズといったあたりを詮索するのが仕事となっています。とりわけレコードそのものに関しては前著の『SPレコード入門 基礎知識から史料活用まで』(スタイルノート, 2022年)で基礎固めをして、いくつかの研究機関で「レコード学」の提唱をしています。
これまでのいずれかのタイミングでnoteをはじめていてもおかしくはなかったのですが、本の著者のブログがぼこぼこ存在するというのは煩雑であまり良くないことのように思えて二の足を踏んでいました。それがいきなりnoteをはじめたのには理由があるわけで。『幻のレコード』を出したのを機に、ほかのブログ (はてなブログ) との差別化をいかにつけるか迷いながら見切り発車ではじめています。

2023年11月1日に発売した新著『幻のレコード 検閲と発禁の「昭和」』(講談社, 2,100円+税)は7年かけて書いた本です。さしあたってnoteはこの新著の補遺を発表する場として設けました。
新著を出したばかりなのにはやくも補遺を公開するのは、伝えたいすべてが書籍に盛り込みきれなかったからです。たとえばこの新著のために10種あまりの表やグラフを作成しました。ところが本文が長大になりすぎて、重要な3種の表をなんとか収載するにとどまりました。
本文も100ページほど足が出たので一章分まるまる削ったり細部に至るまで無駄な記述を削いだのですが、それでも許された予定ページ数ギリギリで、こうした書籍には欠かせない参考文献や索引も入れられませんでした。そうした書籍から溢れ出てしまった情報をここに公開しようというのがこのnoteの趣旨です。

とりあえず第一回目として本編に収載できなかった情報のひとつ、レコード検閲係(官)・小川近五郎に関する記事をまとめたリストをここに公開します (縦書きで作成したので漢数字表記となっています)。
同種のリストは小川の著書が復刻された『コレクション・モダン都市文化 第75巻』(ゆまに書房 2011年)に安智史氏の編纂されたものが収載されていますが、そこに手持ちの資料や調べによって情報を加えました。加えたといってもご覧のように小川自身が関わった記事の数量はごく少なく、まだ僕の知らない記事があるかもしれません。いや必ずあるでしょう。お気づきの点があればぜひご教示ください。

小川近五郎の著述・座談会
『流行歌と世相 ―事変下に於ける歌謡の使命―』日本警察新聞社 一九四一年一月一日
「蓄音機レコード取締に関する概観 (一)」『警察研究』第六巻 第九号 一九三五年
「蓄音機レコード取締に関する概観 (二)」『警察研究』第六巻 第十号 一九三五年
「流行歌の傾向と検閲の問題 (座談会)」『音楽世界』第八巻 第八号 一九三六年八月
「最近話題を生じた流行歌レコードと取締の問題」『警察研究』第七巻 第九号 一九三六年九月
「非常時局とレコードの取締」『音楽世界』第九巻 第十号 一九三七年十月
「流行歌昨今の傾向と取締態度」『出版警察資料 (36) 』一九三九年四・五・六月
「流行歌昨今の傾向と取締態度」『月刊楽譜』第二十八巻 八月号 一九三九年八月
「音楽協会に何を望むか(はがき回答)」『音楽世界』第十二巻 第五号 一九四〇年五月
「新体制下の藝術」『レコード音楽』第十四巻 第十号 一九四〇年十月
「レコード検閲の新体制 (一)」『ビクター』第一巻 第十二号 一九四〇年十二月
「レコード検閲の新体制 (二)」『ビクター 新年号』第二巻 第一号 一九四一年一月
「流行歌と世相」『會舘藝術』第十巻第七号 一九四一年七月
「軽音楽座談会」『月刊楽譜』第三十巻 七月号 一九四一年七月
「ジャズ音楽取締上の見解」『出版警察報』第百三十八号 一九四一年七月
「大東亜戦と音楽人の職域奉公(はがき回答)」『音楽公論』第二巻 第一号 一九四二年一月
「戦時下に於ける音楽レコードの諸問題」『レコード文化』第二巻 第二号 一九四二年二月
「レコード音楽の新構想」『音楽之友 』第二巻 第二号 一九四二年二月
「流行歌論 (座談会)」『音楽公論』第二巻 第十二号 一九四二年十二月

インタビュー記事
「流行唄と家庭」『都新聞』一九三六年七月三日
「市民の栓」『東京朝日新聞』一九三七年三月十四日
「受難のねェ小唄」『読売新聞』一九三七年五月十四日
「べそを掻く流行歌 【上】」 『国民新聞』一九三七年六月十三日
「べそを掻く流行歌 【下】」 『国民新聞』一九三七年六月十五日
「移動談話室」『東京朝日新聞』一九三七年八月二十九日
「検閲鏡にうつるレコード 上」『東京朝日新聞』一九三八年七月三十日
「検閲鏡にうつるレコード 下」『東京朝日新聞』一九三八年七月三十一日
「時局下の検閲眼 【2】レコードの巻」『読売新聞』一九三八年八月二十四日
「時局下の検閲眼 【2】レコードの巻(つゞき)」『読売新聞』一九三八年八月二十五日


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