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詩は死と読み換えることができる。
死は生の消えゆく途上の匂いである。
生は性でもある。
そして性は死の準備である。

私は幼い頃、肥料の臭い立ち込める畑の中で、
蝶を捕まえたことがある。
蝶の羽根を指でつまんだのだ。
蝶を逃すと、指から甘い匂いがしてくる。
それこそは蝶の羽根の性なる匂いだったのだ。

死と隣り合わせの生は甘美なものだ。
そこに死という不可視の暗い穴がある。
そのことを認識しながら生きるとは甘美なものだ。
死は永遠に通ずるからである。

永遠なるものは蝶のように彼方の世界に羽ばたくことである。
永遠なるものは美しい。
蜂の巣の中で転げ回る蜜蜂の蜜のように美しい。
私は永遠なるものに触れているのだ。
それは最も甘美なものだ。
その時私は、この世を忘却し、あの世を思い出しているのだ。

永遠に思い出せないあの世を思い出しているのだ。
その時私は、決して急ぐことなしに、
しかし確実に、死へと歩を進めているのだ。
死へと歩を進めているのだ。

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