
胎児水腫、でも赤ちゃんはお腹の中で一緒に生きている~パパの記録
妊娠16週、産婦人科にて
超音波(エコー)検査で、赤ちゃんに皮下浮腫や胸水等があり、胎児水腫の疑いと言われた。
胎児水腫とは
超音波検査で胎児に皮下浮腫,心嚢液,胸水,腹水の2つ以上を認めたものを胎児水腫という。
妊娠12週頃には、NT肥厚(全体的にむくんでいるかも)と言われていた。
NT (nuchal translucency)
妊娠初期の赤ちゃんの首の後ろにみられる液体のたまり
通常の胎児に比べて厚くなっているときは、染色体異常や心奇形などの可能性があるとされている。
そして、遺伝子(染色体)異常の可能性もあるので、血液をとるだけのNIPT(新出生前遺伝学的検査)も勧められた。
NIPT
妊娠10~16週に採血を行い、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーについての可能性(陽性、陰性、判定保留)を調べるスクリーニング検査です。
しかし、もし検査をして、遺伝子異常があった場合、今ある生を、あきらめることになる。
また、この検査でわかるのは、あくまで可能性。さらに確定診断をするためには、羊水検査が必要になるとのこと。そして、この羊水検査もかなりの確度ではあるが、あくまで可能性だ。
夫婦で話し合った。
この子が受胎する前から話し合っていた。
「どんな子であろうと、今、生きているこの子をおろすことなんてできない。赤ちゃんを産みたい。」
という結論だった。
でも、まだ浮腫みは、自然となくなることもあるからと、祈っていた。
しかし、ママとエコーを一緒に見ながら、
現実感のしない、心が締め付けられる思いにかられる。
医者からは、羊水検査を勧められる。
でもそれって、、、。
いいこともあった。
エコーでは、しっかりと赤ちゃんの心臓が動いている姿が見えた!
「生きてる。」
心の中でそうつぶやいた。
確かに、この子は生きようと懸命に生きていた。
そして、涙をこらえながら、医師に伝えた。
「僕たちは、この子を産みたいので、(羊水)検査はせず、このまま、経過をみさせてください。」
そう、どうにか自然のまま、このまま、生まれてくることはできないのか。
心はまだ動揺しているが、
頭は冷静に、今できることをしよう。
とにかく情報を集めよう。
不安は情報不足からもくる。
そして、未来のために記録を残しておこう。
研究データ(論文※より引用)
<論文>
胎児水腫症例の短期生存・長期神経学的予後に関連する周産期因子の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspnm/57/suppl.2/57_S20/_pdf/-char/ja
胎児水腫の発生頻度は?
約4000分の1(日本)
(1)免疫性胎児水腫(10%)
母体と胎児の血液型が適合しない場合に、胎児が貧血状態を起こし発症。Rh(D)不適合妊娠が代表。
臍帯穿刺で胎児の貧血を確認したうえで、胎児輸血
(2)非免疫性胎児水腫(90%)
主な原因は先天性心疾患や先天性ウイルス感染症、染色体異常など。
リンパ管異常で胎児胸水が多量の場合、胎児胸腔・羊水腔シャント術が有用
この先どうなる可能性が高いのか?調査データ
全109例
脳性麻痺(CP)や重度発達遅滞(DQ<70),神経学的な障害のない生存の割合を調査
1 染色体異常なし82例(75%)
胎児期特発性群66例(80%)
胎児貧血群7例
双胎関連群9例
分娩後に染色体異常が20例(30%)
(1)水腫持続 46例(70%)
① 短期予後(生後28日時点の生存)
22例が短期予後良好(50%)
在胎週数29週以下18例は全例不良
在胎週数30週以上26例中22例(85%)は良好
在胎週数33週以上12例は全例(100%)良好
出生体重1100g未満17例は全例(100%)不良
出生体重1100g以上27例中22例(80%)は良好
② 長期予後(1歳6カ月~6歳時点)
13例中4例が長期予後良良好(30%)
在胎週数31週以降13例中9例(70%)は良好
在胎週数34週以降は、6例中4例(70%)は良好
出生体重1800g未満22例は全例不良
出生体重1800g以上13例中9例(70%)は良好
長期予後不良(死亡2例,重度発達遅滞2例)
(2)水腫解消例 20例(30%)
①短期予後
18例が短期予後良好(90%)
9例中6例が長期予後良良好(70%)
9例中3例が長期予後不良(死亡1例,重度発達遅滞2例)
2 染色体異常あり群27例(25%)
27例中20例(74%)が胎児死亡
27例中7例(26%)が生産
7例中4例(60%)が短期予後不良
2例中2例(100%)が長期予後不良
<論文>非免疫性胎児水腫30例の検討(1984)
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10680258&contentNo=1
<論文>5例の検討(秋田大学産婦人科)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspnmsympo/1/0/1_127/_pdf/-char/ja
まとめ
すべて確率、可能性だけど、
胎児水腫の赤ちゃんの生存(長期予後)には、
染色体異常がない
在胎週数31週以降(体重1800g以上)である
ことが、ポイントになることがわかった。
つまり、少しでも長く、赤ちゃんがママのお腹の中にいれるが重要であること。
未熟な状態で早産となってしまうと、生存の可能性が下がっているようだ。
そして、在胎週数を伸ばすためには、
胎児胸腔・羊水腔シャント術が有効なようだ。
シャント術(手術)
胎児の体腔内に貯留した水分を、その腔と羊水腔をシャントすることで羊水腔へ逃すことを目的とした胎児治療です。
胸腔-羊水腔シャント術は、心臓と肺への圧迫を除き胎児水腫の改善と肺低形成の予防を目的としています。

https://www.nagoya-1st.jrc.or.jp/webcms/wp-content/uploads/2022/09/ade558e7f486727e3a21a1a105354f12.pdf
しかし、再発を繰り返す可能性も。
可能性、可能性、すべて、可能性…。
まだ、自然寛解の可能性もある。
このまま手術をしないで、自然に任せた場合はどうなるのか。
ママのリスク、母体合併症は?
羊水過多症が73%
低たんぱく血症が64%
貧血が34%
妊娠中毒症が20%
自然に任せた場合の平均分娩週数は?
自然陣発例では、32.7±4.3週(27~37週)
早産(帝王切開、吸引分娩が多い)
胎児の死亡原因は?
死亡原因では呼吸障窖が31%
剖検では腹水が100%,胸水が55%があった。
重量が少なく低形成の肺が多い
低たんぱく血症が、全身の浮腫を引き起こす原因となる可能性とも?
帝王切開となった場合、母体に傷も残る。
医療としては、リスクを考えて管理のしやすい治療行為が選択されるだろう。
でも、リスクは、身体の傷だけではない。
心の傷もある。
家族の心も考えなければいけないのではないか。
考えることが多すぎて、
だんだん、思考が停止してきた。
だんだん、生きる力(エネルギー)がなくなってきた。
やばい。
可能性はわかってきたので、
先人たちの経験と知恵を聞くことにした。
(つらい中、貴重な記事を本当にありがとうございます。自分も誰かの役に立てればと記録することにしました。)
知恵と力をもらった記事
そして、これから
また、20週頃に胎児スクリーニング精密検査で、
再受診することになっている。
少しでも長く生きてほしい。
でも、何度も手術をするのは避けたい。
調べても、調べても、すべては可能性。
心がだんだん冷たくなっていく。
赤ちゃんの生命力を信じる
「そうだ、今は、生きている。赤ちゃんは生きているじゃないか。お腹の中にいて見えないけど、生きている!」
そう思えた瞬間、
心がぽっと温かくなった。
目を閉じて、ママのお腹に耳をあてて、
優しい心で感じれば、
もうすでに、赤ちゃんと一緒に生きていた。
ほろほろと涙がでてきた。
でも悲しい涙ではない。
1日でも長く、長生きするだけが人生ではない。
赤ちゃんと対話しながら、
赤ちゃんがどうしてほしいか。
聞いていこう。
パパとママ、息子とお腹の中の赤ちゃん。
もうすでに4人家族だった。
不確実な未来(可能性)ばかりを考えすぎて、
今ある幸せを忘れかけてた。
今を生きよう!
ありがとう!今ある生、先祖や家族に感謝して!
パパは、君の生命力を信じるよ!!