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【宮沢賢治と私】② ~「ねぇ先生、お話しをして!」

 昭和20年3月10日、東京中野に住んでいた私たち一家は、東京本所あたりがアメリカのB29による爆撃で真っ赤に燃え上がるのを、庭に掘られた防空壕の中でガタガタ震えながら見ていました。血を流したようなあの空を今も忘れることができません。

 私たち家族は、母の実家がある松本市芳川平田へ疎開することになり、母屋と庭をへだてた10畳間ほどの蚕(カイコ)室を借りて、戦後の生活をはじめました。外の屋根がすこしのびた所が台所でした。食べ盛りの弟2人と私の、3人の子どもを抱えた両親は大変だったろうと思います。

 小学校1年生として、芳川小学校に入学して間もない頃、家庭訪問がありました。担任の若く美しい大久保園子先生を、母と弟でお迎えしたときのことでした。先生と母がしばらく会話をしたのち、私は先生に向かって「ねぇ先生、お話しをして!」と言いました。すると先生はニコッとされて、かばんから一冊の本を取り出して朗読をして下さいました。それが宮沢賢治の童話『雪わたり』だったのです。そのとき読んで下さった先生の声が今でも私の中に残っています。「キックキックトントン、キックキックトントン、キックキックキックキックトントントン」
 賢治さんとの運命的な出会いは、この時だったのです。

朗読会やお話し会などで、得意のレパートリーのひとつになりました

(絵本美術館 森のおうち 館長 酒井倫子)

「宮沢賢治絵本原画展」
2022年1月28日(金)~2022年4月12日(火)
【展示作品】
『ポラーノの広場』宮沢賢治/作 みやこしあきこ/絵 (ミキハウス)
『注文の多い料理店』宮沢賢治/作 高野玲子/画 (TBSブリタニカ)
『土神ときつね』宮沢賢治/作 高野玲子/絵 (くもん出版)

※同時展示「あべ弘士の動物カレンダー展」

絵本美術館&コテージ 森のおうち
開館時間●9:30~17:00(12月~2月16:30閉館、
最終入館は閉館30分前まで、最終日15:30閉館)
休館日●木曜(祝日振り替え、変更日あり・当館HPカレンダー参照)
入館料●大人800円 小・中学生500円 3歳以上250円 3歳未満無料
〒399-8301 長野県安曇野市穂高有明2215-9
TEL 0263-83-5670 FAX 0263-83-5885 


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絵本美術館&コテージ 森のおうち
最後までお読みいただきありがとうございます。 当館“絵本美術館 森のおうち”は、「児童文化の世界を通じて多くの人々と心豊かに集いあい、交流しあい、未来に私たちの夢をつないでゆきたい」という願いで開館をしております。 これからも、どうぞよろしくおねがいいたします。

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